director:David Lynch
「ローラ・パーマー最期の7日間」の失敗から早くも
5年の歳月が流れ、今再び(三度?)デビッド・リンチ
が極東の我国に輸入され、好事家たちの間で話題になってる。
Lynch is back! |
デビッド・リンチ曰く、
「暗闇と混乱は意識の表層下に潜在的に在り続けている |
我々はこの存在に恐れを抱き続け隠蔽しようとするかもしれない」 |
6月29日、岡山市の文化シネマにて「ロスト・ハイウエイ」を見る。
観客は十数人程度、年齢層は適度に散らばっている。冷房がよく効き
寒いぐらい。
さて最新作「ロスト・ハイウエイ」だが、
近年流行しているシーケンス組み替えモノに見てとれる。
もっともリンチらしく、エロエロ・バイオレンスは突出してるが。
おまけに、リンチの定番テクとも言える論理的破綻映像手法で、
とにかく、わけのわからぬまま観客はダークサイドを引きずり回される。
「しかし、人生には予期せぬ理不尽なアクシデントが |
待ち受けていることも確かである」 |
息が詰まる(イン・ドア的な)密閉感覚と圧倒的説明不足、ぶつ切りの
シーンの連続の冒頭、「何だこりゃ、もしかしてリンチの才能も枯れたか?」
と思わせたが、極めて異常な闇の住人「ミステリーマン」が登場する辺り
から解読不能の不可解なリンチワールドに突入じゃ。
サックス・プレヤーから自動車整備工にかわると、急激に人間関係や
社会的役割が日常として表面に出てくるのでいっきに世界観が生彩を
おびてくる。
「ロスト・ハイウエイ」最大の謎は次の3点に集約されるだろう。
1.誰がレエネを惨殺したか
2.その夜ピートに何があったのか
3.レエネとアリスは
a.双子
b.同一人物
c.フレッドとピートの関係と同じ
開放感は無いが、相変わらずの
「メタファーやシンボルというベールを貫く直感や衝動」
を映像・具現化することに成功している。
しかもシンプルな命題[LOVE]も相変わらず端々で出てくる。
ドラゴンツリー・フェスティバルを彷彿とさせる流血のポルノグラフィーと
「好きだ、愛している、お前が欲しい」と恋人に囁くこととのギャップ!
滑稽をこえてポップである。
ついでにビデオレンタルで「ツイン・ピークス」を7話まで見る。田舎町の一見善良に
思える人々の隠されたダークサイド。複雑な人間関係を
物語の進行に応じて順次適度に説明していくあたり、さすがだと思う。
映画版ツインピークス・「ローラ・パーマー最期の7日間」より
100倍面白いじゃん。
97/06/29
Kの独善的評価 ★★★ (リンチにしては変態度が低い)