ハンニバル
hannibal (2001)
Directed by Ridley Scott
「羊たちの沈黙」の続編。その後のレクター博士の優雅な逃亡を描く。
食人鬼レクター博士は、前作に引き続きアンソニー・ホプキンス。
しかし、ヒロインのクラリス役はジョディ・フォスターが降りてしまった為、
ジュリアン・ムーアが出演。なにやら人工的な女優でお色気不足である。
キャスティング面でも、美女と野獣の愛?という結末には、辿り着けなかった気がするなぁ。
ラストの晩餐に関して、「レクター博士は美食家で料理の腕も一流」という事を
説明するには必要な場面っスが、最近この場面の様な残酷描写に強い拒否反応があり、
見るに耐えませんでした。
トマス・ハリスの原作(ハンニバル上・下/新潮文庫)は、この映画より圧倒的に面白いっス。
これまで、「レッド・ドラゴン」、「羊たちの沈黙」で語られなかったレクター博士の人物描写に
重きが置かれております。ハンニバル・レクターは、1938年、リトアニアで誕生。
裕福な領主の父、イタリア貴族の母、妹は、1944年、ドイツ軍により殺害。以後、孤児となる。
レクターの妹は、脱走兵の一団に食料にされた。(下・P70)
レクターの懇願は時間の逆転で、無惨に食い殺された妹の復活を切に願っております。
その妹とクラリスが重なる、と十二分な説明が原作ではあります。
またクラリスが、食肉加工業者で大富豪のメイスン・ヴァージャーに拉致されたレクター博士を
単身救出に向かうのは、『レクター博士が何かしらおぞましい手段で拷問されたあげく殺されると
思うと、耐えられない。遥かな昔、羊たちや馬たちが殺されるのが耐えられなかったように』
(ハンニバル・下P310より引用)
と、明確な動機が記されています。「三つ子の魂百まで」と言いますが、教育や経験を経ても、
人間、性根は変えようがないんですな。その事がよく描かれております。
映画では、この2点の説明がない為、ただ々冗漫でしかなかったっスね。
もう一つ、トマス・ハリスの作品を一通り読んだ感想なんですが、
これだけ綿密で精緻な物語なのに、今がいったい何年の何月なのかわからない!
「レッド・ドラゴン」は、連続殺人犯のフランシス・ダラハイドの生年月日から1979年で
あろうと推測されます。(レクター博士と同い年?)
ちなみに「レッド・ドラゴン」の出版は1981年。
2001/4/1
Kの独善的評価 ★★(映像美しかない作品。もっと作りようがあったろうに。トホホ…)