監督:庵野秀明
「新世紀 エヴァンゲリオン(以下エヴァと記す)」はハイパーおたく集団GAINAX(ガイナックス)が、
テレビ東京系で1995年10月3日-1996年3月27日に放った全26話からなるテレビアニメ作品である。
Kが思うに、エヴァが当たったのは、受け手側(エンドユーザー、観客)の欲しい
ものが適切な形で供給されたからじゃな。方法論としてね。
知的好奇心を刺激するマニアックなロボットアニメは、
国産ではほぼ壊滅状態だった状況に風穴を開けたのだから、評価に値します。
アニメ=幼児向けの図式が1989年の宮崎勉の連続幼女誘拐殺人事件より以降、
社会の暗黙の了解となってたからなぁ〜。そりゃ、飢えるわな。
92年、デビッド・リンチの「ツインピークス」がブレイクした時も、
マスコミで言われたことだけど、国産の同ジャンルの面白い作品がないから、
一度火がついたら極端に異常燃焼する、この社会的傾向。
次の発火点はセガバンダイだ!(※1)だと思ったら
白紙撤回してやがんの、ガビンチョンぶ〜っ!
んで、97年3月15日
「エヴァンゲリオン・劇場版 シト新生 DEATH AND REBIRTH」
が公開された。
地元の映画館に足を運ぶと、大入り!満員御礼状態じゃった。(3回目で100〜150人ぐらい)
通常の邦画の客の入りとは雲泥の差。
少年・少女、青年共がキャラクター商品を買い漁ってたのが印象的。
こりゃ、いい商売だなぁ〜と思いました。
押井守の「攻殻機動隊」(95)は内向的で陰鬱で、押井作品恒例の自己議論型でしたが、
「エヴァンゲリオン」は精神崩壊、破滅的、バイオメカノイド、殺戮、
と血生臭かったっス。
ものすごく攻撃的、サディスティックな感じ。
観客はどんどんマゾヒスティックにならざるを得ない?
一体どこでこのエヴァを楽しむのかね君たちは?と隣席の少年にちょっと尋ねてみたくなった。
『きっと、アスカが夏に死んでしまったら、アニメ史上初の後追い自殺者がでると思います 97/4/7』
なんて発言をGAINAXの劇場公開直後のエヴァGuest book(劇場版へのメッセージ)で読んだりすると、
オドロオドロした死の観念、その強烈さを意識せざるをえない。
(「THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」97年7月19日公開)
「時計じかけのオレンジ」(71)のような映像の拷問が展開されるのじゃ〜Oh NO!
見ていて嘔吐するかと思ったのよ。
これぞ、まさしく、
閉塞環境で正しく争えない、肉体おいてけぼりの観念暴走!
劇場でこの作品を見せる行為、究極のサディズムを感じる。
巨大ロボットの戦闘シーンはBGMもあいまって、
血沸き肉踊るアグレッシブな仕上がり。
エヴァの動きを見てたらウルトラマンを見ているような錯覚に陥った。
ロボットといっても生物のエヴァシリーズ、庵野監督のウルトラマンへのオマージュ(※2)か?
んで、作品の完結性は高い。
大風呂敷(壮大なテーマ)を広げても、ショボく終わる作品は少なくない中、
虚構と現実の境界へと一歩踏み込んだ表現に結実してる。
意識改革としてのスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」(68)、
実験的手法としての寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」(71)に並ぶと思う。
人類補完計画=人間は人間である以上、心の中に欠落した部分がある。 その空白を埋めるために人は生きてゆくのだ。 だから、全ての人間の心をひとつにしてしまい、 互いに補完し合い、永遠の安らぎを得るようにしよう…とする計画。 |
人類史上初じゃないかな?
全人類をドロドロのスープに溶かしこんで永遠の幸福を得るってのを映像表現した奴は!
実写の劇場の観客の映像も挿入される辺り、
君達も補完してあげよう!と庵野監督は言ってるのかも(笑)
しかし、碇シンジ(不完全な主人公)にも困ったモンだ。
他人という地獄と向き合うために、アスカを再生させるとは…
修羅のような女より菩薩のような女を再生させるべきである。
やっぱり碇シンジは永遠に安息できない?
97/3-97/7
Kの独善的評価 ★★★★+(この作品、映像による拷問かもね)
用語解説
※1 セガバンダイ…97年1月23日、ゲーム機メーカーの株式会社セガ・エンタープライゼスと 玩具メーカーのバンダイ株式会社は10月1日に合併を行なうことで合意した、と発表した。 新社名は株式会社セガバンダイで、出資比率はセガ1に対してバンダイ0.76となる。 「セガバンダイ」は連結売上高6,000億円以上、資本金600億円以上となるはずだった。 一転して97年5月27日、セガはバンダイからの申し入れを受け、 緊急役員会で合併合意解消を決めたと正式に発表した。 合併解消の理由としてセガは「バンダイ側が全社的合意に至らなかったため」と述べた。 ※2 オマージュ…[hommage 仏 ] 尊敬、敬意、服従。 サルまね、パクりの場合も時にはある。 |