映画に関する戯言…

ブドウ糖と愛が必要です

by 私は鳥じゃない


Q-現在、映画のどんな所に関心を持ちます?

A-私の場合、環境も含めて映画全体に関心があります。

 大切なのは作品のみという考えは嫌いです。

Q-具体的に。

A-環境の自閉は不愉快です。閉じられた世界では、

 時間の動きが見えません。これは映画の持つ本能に反しています。

Q-それはどういうことですか?

A-私は映画は、時間を制御する表現であると考えています。

 脳内作用(※1)を、モンタージュの技術と手段を発見した人間が、

 それとは気づかず再現した表現が映画です。

 脳が組み立てる時間=映画表現であり、

 映画は「人間の時間」を制御する能力を焼き付けられています。

 人間が時間の動きに麻痺した状態や、まるっきり鈍感な場合、

 映画表現は死にます。

 環境が自閉することは映画を殺す第一歩です。

Q-現在、そんな環境がありますか?

A-いや〜日本の映画環境全般は、当てはまるんじゃないですか?

 膨大な量の映画に関する情報によって骨抜きになっている観客と、

 頑固な封建制で時代ズレした作品を作る製作会社ね。

Q-ところで先生は最近映画に出演したとか?

A-井筒和幸監督「東方見聞録」(※2)に死体役で出てるはず。

Q-なんだ死体かぁ。

A-馬鹿もん!君は、死体の辛さ(※3)を知らんのか!(次号に続く)

この文章は月刊イフ(free paper)1992年3月号通巻20号に掲載されたものです。


用語解説

※1 参考文献 「唯脳論」養老孟司・著/青土社刊 

   現代は脳の時代と説くラジカルな思想である。

※2 緒形直人主演の足軽戦国アドベンチャー(たぶん室町時代)である。

  1991年、備中・高梁の松山城でロケをした。

※3 雨中、3時間も同じ姿勢でいるのは、

  辛い(死体なので動いてはいけない)のである。

  しかも、完成した作品には約1秒しか写っていないのである。


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