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ジャズの醍醐味をピアノ・トリオに求める方も多いのですが、私は何故か俗にワン・ホーンと呼ぶ編成が好きです。
形の上ではピアノ・トリオに管がひとつ加わっただけで、実際のイメージは全く異なってきます。
ピアノ・トリオをバックに一人で思う存分吹きまくれるこの形こそが管楽器プレイヤーにとっては理想の演奏形態といってもいいのではないでしょうか。


Mark Turner / Mark Turner - Warner Bros.Records 国内盤 WPCR-1891 - 1998.4.25発売

@ Mr.Brown(Mark Turner) A Lost Ocean(Mercedes Rossy) B 317 East 32nd Street(Lennie Tristano)
C Kathelin Gray(Ornet Coleman) D Hey,It's Me You're Talkin' To(Victor Lews)
E Autumn In New York(Vemon Duke) F Magnolia Triangle(James Black) G 26-2(John Coltrane)

Recorded at RPM Sound Studio,New York City December 7,1995
Produced by Gerry Teekens
Recording Engineer - Max Bolleman

Mark Tuener - tenor sax / Edward Simon - piano / Christopher Thomas - bass / Brian Blade - drums
Joshua Redman - additional tenor sax,tracks 1,3 & 4

ジャケットを見ただけでそそるものを感じて買ってしまった一枚。
何の予備知識も無かったのですが、一発目の曲のアドリヴに入る最初の一音を聴いて大正解だというのを直感しました。
テーマのアンサンブル部分こそ、ウエイン・ショーター的なアプローチを見せてますが、アドリヴでは徐々に彼自身の
フィールドに引き込む技を持っていました。あとは曲を重ねるごとに当たった、というのが確信に。

曲によって客演してる先輩格のジョシュア・レッドマンも実にいい味を出していて、マークのオリジナルの@でも
ぐいぐい曲を引っ張っていくところなんかさすがに先輩の面目躍如である。

ライナーによればコルトレーンとショーター派とありますが、確かにそれは彼の吹く音の随所に感じられますが、
暖かくふくよかな音も持ち味で、ライナーによればウォーン・マーシュにもインスパイアされたらしい。
しかし基本的に彼は既に自己のスタイルを確率させていると思え、若くして単独のアルバムを出せたのも頷けます。
あと、サイドメンの Edward Simon も要注目で、くっきりとしたタッチのピアノはかなりリリカルで印象に残りました。

ジャズファンなら文句無し、それほど熱心なジャズファンでなくてもこれはいけると思います。
車でも、部屋でも、たまにこういうの一枚流せば場の雰囲気が一瞬で変わりますよ。
もちろん貴方自身の気分も。

b.b. 1998年5月26日


Return Of The Griffin / Johnny Griffin - Galaxy 国内盤 VICJ-60143 - 1998年3月25日発売

@ Autumn Leaves(Mercer-Prevert-Kosma) A When We Were One(Johnny Griffin)
B A Monk's Dream(Johnny Griffin) C The Way It Is(Johnny Griffin) D Fifty-Six(Johnny Griffin)
E I Should Care(Cahn-Weston-Stordahl)

Recorded at Fantasy Studio Oct.17,1978
Produced by Orrin Keepnews

Johnny Griffin - tenor sax / Ronnie Mathews - piano / Ray Drummond - bass / Keith Copeland - drums

人種差別の故か、あるいは人々の、とりわけ業界人のジャズへの理解が足りないせいか、あるいはその両方か、
とにかく'60年代から米国の代表的なジャズメンがヨーロッパに定住するケースが後を絶たなかった。ブルースマンでも聞く話であるが。
このグリフィンもご多分に漏れず1962年に仕事が減ったのを機に渡欧している。
パリに10年、その後オランダに居を構え家族と暮らすが、その彼が15年ぶりにアメリカにツアーで帰米した際に吹き込まれたのがこのアルバム。

油井正一氏の書かれたCDのライナーが面白いのでここで少々パクらせて頂きますが、当時のグリフィンのインタビューから、、、

「アメリカが変わったかどうか。まえと同じだと言う感じがする。すくなくとも人間は変わらない。
でも僕がやってるタイプの音楽が再びもてはやされている点では随分変わったと思う。
去年、デクスター・ゴードンが意気揚々とヨーロッパに戻って、"今やアメリカでは俺が人気スターなんだぜ"といった時には、大ボラを吹きやがる、と思った。
だが今度帰国してみて、その言葉が嘘でないことがわかった。夢が現実になったような気持ちがする。
アメリカの聴衆がこんなにも暖かく迎えてくれようとは夢にも思わなかった。
ジャズはアメリカの音楽なのだし、誰よりもアメリカ人がいちばん理解できる音楽である筈なんだ。」

以上、一語一句すべてライナーのまま借用させて頂きましたが、(恐縮です)
失意の元、去った母国がいつの間にか変貌していたことに嬉しさを感じた気持ちが解りますよね。
このインタビューは吹き込み当時のものですから時はさらに20年以上経過したわけですが、どうやら事態はさほど好転していないと思われます。、
しかし少数とはいえ若手も育ってきているし、そう嘆かわしい状況でもない様子なので、ジャズが生活の中の音楽として復活する日がいずれ来ないとも限らない。
そんな日を期待してこれからもこつこつ、イケるジャズを紹介していくとするか。

前置きが長くなったのですが、大多数の人が「ジャズ」という言葉を聞いてイメージする、まさにそんなサウンドの一枚であります。
のっけから「枯葉」で彼一流のゴキゴキのファンキー・サウンドで聴く者を K.O.してくれるわけですが、この野太いサックスこそが彼の持ち味。
有無を云わさずねじ込んでくるこの強烈さに、またお尻を洗って待ってるわ、と、、いや、断じてそっちの趣味はありませんが、癖になるサウンドなのであります。

グリフィンは自らも言ってますが、モードもフリーも、ましてや電気的な音はあきまへーん、というゴリゴリのハードバッパー。
その気持ちはこの作品にも一貫して表れてると感じます。かといってワンパターンな押しの一辺倒でもなく、うっとりと聴かせるところは心得てる方。
一般的な評価では下記の"Congregation"に軍配が上がるようでありますが、このHPのコンセプトが新しく(再発を含めて)リリースされた、比較的手に入れやすいものを
前提にしていますので今ならこれに尽きるというわけです。今すぐお店へ走ってGETして、まず後悔しない一枚でしょう。

--b.b. 1998年5月26日

Congregation
オリジナル・リリース1957年
国内盤 東芝EMI TOCJ-1580