出張バードウォッチング

1泊2日の予定で北海道への出張が決まった。仕事は女満別を拠点にするが、バードウォッチングに有利なようにホテルは網走にとる事にした。

 

●3/27● 天気予報を見て晴天の前日に現地入り。その日はレンタカーを借りて真直ぐに、網走港へ向かった。

おきまりのオオセグロカモメはいたが、港内には鳥の姿が少ない。と、思ったとたん目の前にウが浮かび上がった。嘴が細い。ヒメウだ。写真を撮っていると、その後ろにシノリガモが、右にホオジロガモが見えてきた。「あー、北海道に来たんだ」と実感しながら、恐ろしい「出張バードウォッチング」が始まったのである。

バードウォッチング用の下調べをしてこなかったので、地図を見て鳥のいそうな濤沸湖へ向かう。3月の終わりで最高気温も5度と大阪の2月くらいの寒さだ。冬鳥は、まだ残っているのだろうか?

濤沸湖の入り口に着くと餌付けされたオオハクチョウがいた。足下を見るとホオジロガモが右に左にうろうろしている。警戒心が強かったのでは? やはり餌には勝てないのか。カワアイサも近くにいたが、こちらは人の気配を感じて逃げていった。お気に入りの手すりにとまっているワシカモメのアップを撮ったりしているうちに、暗くなっていった。

ワシカモメ
NIKON EDII 30×wide + NIKON COOLPIX990

 

●3/28● 今日は9時から12時まで仕事して、午後の便で大阪に帰る予定だったが、天気予報は大ハズレの朝から雪。ということで仕事は中止。今日は丸一日バードウォッチングできる事になった。

昨日の続きで濤沸湖の東から行ってみるとことにする。凍結した湖面の中で少しだけ氷のはっていない場所がある。そこにはカワアイサが70羽。見事な光景だ。あいかわらず警戒心が強く、すぐに一番遠い所まで離れていき写真は撮れない。

ここから内陸部へ少し入っていくと大きな翼がたくさん帆翔している。トビかな?いやいや大きい。オジロワシだ。小高い丘があって、その上を右に左に飛びながら追っかけっこしたりしている。この丘がねぐらになっているのだろう。その下まで行ってみたが、こちらを気にせずえんえんと帆翔をくりかえしている。カメラの画面いっぱいだったが、雪雲の下できれいに撮れているだろうか?

近くの畑を見回すと、僕の大好きなオオワシが10羽ほど降りている。しかし、畑には似合わないなあ。

午後からは、全面凍結しているサロマ湖へ向かった。道中の小さな林でマヒワ・ベニヒワの群れを楽しんだ。

サロマ湖に着いたはいいが、鳥がさっぱりいない。鳥も好き好んで、餌の少ない、風の強い場所を選ばないのは当然か。港の方に行ってみる。こちらも塩分が薄いらしく全面凍結だ。ここでは氷の上のシロカモメを撮影したが、白バックに白い羽なのでメリハリが着かない。これはこれで季節感が出てるかな。

明日の天気予報は雪。ってことは、明日も一日中バードウォッチングになりそうだ。

シロカモメ
NIKON EDII 30×wide + NIKON COOLPIX990

 

●3/29● 知床という響きにつられ、南へ向かうが出発が遅かったので斜里まで行ってストップ。港や原生花園をのぞくが、これといったものはいない。斜里から西へ海沿いの未舗装路を走る。ハシブトガラ、シマエナガ、ウソなどがあらわれるが、愛想良くしてくれない。

吹雪が強くなったきたので、帰れなくなると困るので引き返す事にする。

明日は「曇りときどき晴れ」のマークが出ているので、仕事を終わらせて大阪に帰ることができるだろう。

 

●3/30● ホテルサンパークは網走川ぞいにあり、僕の泊まった3階はちょうどオオセグロカモメの通る高さで目の前を通り過ぎる。この日も彼の声を聞いて目覚め、カーテンを開けた。「あれっ、雪が降っている」TVのスイッチを入れ、天気予報を見る。「曇りときどき雪」に変わっている。今日も仕事は中止。

とりあえず空港に行って、気圧配置と週間予報を調べた。大きな低気圧が居座って、明日まで雪が続きそうだ。いつになったら仕事を終えて帰る事ができるのだろう。

今日は女満別空港周辺をうろついてみる。農道を走っていると大きな群れが動いた。マヒワだ。ベニヒワもいる。他数カ所で同じような群れを見つけた。一羽一羽の警戒心はまったく無い。平気で車のすぐそばまでやって来て、採餌している。彼らは孤独になるのが相当いやなようだ。あれよあれよと群れについていくので、目の前からすぐにいなくなってしまう。

マヒワ・ベニヒワの群れを観察していると、とてもおもしろい。2、3に別れて飛び立っても自分が少数派にいることに気がつくと、多数派のほうにすぐに合流するのだ。その時に最後尾につけばいいのに、群れの中心や追いこして先頭に向かうのである。そうすると今度は多数派の最後尾にいたものが、自分が取り残されてるように思い、必死で先頭を目指すのだ。それが延々と続くので、同じ場所でゆっくりと採餌してくれないのである。

 


オオセグロカモメ
Canon EOS-1N + 300mm2.8

 

●3/31● 今日は北海道入りしてから一番天気の悪い日になる予定である。季節外れの寒気団と低気圧の影響で、オホーツク地区は大荒れになるそうだ。最高気温も0度くらいだとか。本日は仕事になる可能性ゼロなので、早朝より南下を決め、野付、走古丹方面へ向かう。

国道244の峠は除雪車のおかげで通行は可能だが、世界が真っ白で恐い。レンタカーのヴィッツもどこまでがんばってくれることやら。こんなに長期滞在になることが分かっていたら、愛車ジムニーでやって来たのに。

慎重に運転し峠はなんとかやりすごし、標津の平地に出た瞬間から激しい雪煙で、前がまったく見えない。ライトをONにし、ゆっくり走る、止まるを繰り返す。対向車が来たら恐いなぁ。ところが5分も走らないうちに、陽がさして来た。路面も乾いている。「えっ、どういうこと?」後ろを振り返るとやはり、山沿いは厚い雲におおわれ雪煙がたっている。「帰りはおさまっていてくれよ」

標津から南は快適ドライブだ。気分はすっかり春。野付半島で海の方をスコープでのぞくとクロガモ、コオリガモ、ビロードキンクロが浮いている。やっぱりこの辺りには、いるんだね。野付の端っこや走古丹でホオジロ仲間を探したが、小鳥はさっぱり。ヒバリがさえずっている程度。こんな事ならシマフクロウの詳しい場所を聞いておけば良かった。こうなったら羅臼に行って大好きなオオワシを見よう!

北上するにつれ雪が降り始めた。羅臼の港は除雪されておらずヴィッツには辛い。落っこちるなよ。午後の港にはワシはおらず、近くの山を見回したが、あまりたくさんいない。もう渡っていったのかな? もう3/31だもんな。「グェェェ、グェェェ」変な鳴き声のカラスがいた。これはもしかしてワタリガラス? 喉がふさふさだし、間違いないかな? ところが家に帰ってフィルムを見ると、しっかりデコの盛り上がった、ハシブトガラスだった。残念。

網走への帰路の途中、標津の農耕地でタンチョウを見つけた。真っ白の雪原に立つ姿はとてもかっこいい。出水のツルとは格が違う気がした。(ごめんねナベ・マナちゃん!)

オオワシ
NIKON EDII 30×wide + NIKON COOLPIX990

タンチョウ
Canon EOS-1N + 300mm2.8 + 2X

 

●4/1● 今朝の天気予報で久しぶりに晴れマークが午後に出ていた。今日は仕事ができるかな? 毎日のバードウォッチング三昧もそろそろ飽きてきた感じ。

仕事の時間までのバードウォッチングだが、今日は遠くに行けないので、網走港へ向かう。流氷のかけらが港内に入ってきていて、昨日までと雰囲気が違う。流氷の周辺に黒い点々がたくさん浮いていた。スコープで見ても点が少し大きくなった程度くらいにしか見えないが、風が止み、空気が安定した時に「タレ目」が見えた。ケイマフリだ。その後ろには、アカエリカイツブリ、コオリガモがたくさん見えた。昨日までは流氷といっしょに沖合いにいたのか?それとも北上してきたのか? 時間を変えてくれば近くに寄ってきているかも知れない、と思いながら港を後にする。

今日こそは仕事ができると思いながら、正午になったがまったく晴れてこない。いったいこの「バードウォッチングの旅」いやいや「出張」はいつ終わることやら。「今日もダメですね」と言って女満別空港から少し離れた林の横に車をとめ、ハシブトガラの写真を撮っていた。突然、周囲が明るくなり陽がさしてきた。大急ぎで空港に戻り準備をし、スムーズに仕事を終わらせた。陽の当たっている網走の街は、さっきまでの雪雲の下のグレーの世界と違い、とても美しいオホーツクの風景に変わっていた。

少しだけ流れ着いた流氷
NIKON COOLPIX990

「さあ、仕事も終わった。あと少しバードウォッチングし、明日は関空行の便に乗るだけだ」 15:00、夕方まで時間が短いので、気になる網走港へ向かう。朝と雰囲気が変わらなかったが、風が止み、波がなくなっていた。

ケイマフリの数が増えている。50羽くらい。夏羽が2羽いる。あれっ?、ひとまわり大きいのがいる。ウミガラスだ。今度はひとまわり小さいのがいる。ウミスズメが一羽、右に左に忙しく動いている。仲間を探しているのか?「チュリリリ、チュリリリ」セキレイのような声で一生懸命鳴いている。冗談半分で鳴きまねをしてみた。するとどうだ、こちらにゆっくりと泳いでくるではないか。7、8mまで近付いてきて、こちらに向かい「チュリリリ、チュリリリ」と鳴いている。慌ててシャッターを切る。するとウミスズメは「な〜んだ、写真撮るだけ? 遊んでくれないんだ」って感じで背中を見せ、ゆっくりと離れていった。う〜ん、とってもかわいい。

ウミスズメ
NIKON EDII 30×wide + NIKON COOLPIX990

網走最終日の夜は星も見れた。真上に見える北斗七星を見て、「あー北国にいるんだなぁ」と再認識した。

そんなこんなで長い長い「出張バードウォッチング」は終わったのである。

 

最後まで読んでくれた方 ほんとうにありがとうございます
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