思いつきSSログ保管庫
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雑記掲載SS保管庫 2017年第1期
3月14日 千の刃濤、桃花染の皇姫 千桃余談物語「御伽の皇宮のほわいとでー」 3月6日 夜明け前より瑠璃色な MoonlightCradle SSS「昔話」 3月5日 千の刃濤、桃花染の皇姫 千桃楽屋裏物語”お茶会” 2月28日 千の刃濤、桃花染の皇姫 SSS”私が私として” 2月21日 FORTUNE ARTERIAL SSS”朝のひととき” 2月14日 千の刃濤、桃花染の皇姫 千桃余談物語「御伽の皇宮のばれんたいん」 2月3日 sincerely yours sss「豆まき」 1月1日 千の刃濤、桃花染の皇姫 SSS”夜の宴”
3月14日 ・千の刃濤、桃花染の皇姫 千桃余談物語「御伽の皇国のほわいとでー」 「んー」  朝の謁見の時から朱璃の様子がおかしかった。 「どうした?」 「うん、えっとね……後で皇祖様が紫霊殿まで来て欲しいって夢の中で言われた気がするのよ」 「夢の中でか?」 「えぇ、それにどうしてか私と宗仁と二人で来い、と言われたんだけど……」 「そんなはずはございません!」 「古杜音!?」  いつの間にか入り込んできたのか、古杜音の姿がそこにあった。 「今朝、私もお告げを受けました。紫霊殿には絶対お二人だけでは行ってはならないと」 「お告げ? 大御神のか?」 「いえ、初代斎巫女様でした」 「……それってただの夢枕っていうんじゃないのかしら」 「とんでもございません朱璃様、あのご様子はかなり必死でした!」 「……判断がつかないな、朱璃。緋彌之命はどうなさってる?」 「寝てる見たい、こっちの呼びかけには全然応じないのよ」 「紫霊殿に行くしかない、か」 「全員で行くの?」 「俺だけが行くのが一番良いのかもしれないが、緋彌之命と斎巫女のお告げを無視するわけにも  いかないだろうな」  結局3人で行く事にした。 「……あれ?」 「朱璃?」 「んー、似たようなことが最近あったような……」 「そうだったか?」  そんな話をしながら、紫霊殿の前に到着した。 「特に異常があるような感じは無いわよね」 「はい、私もそう感じません」 「では、俺が様子を見てこよう」  扉に手をかけるが…… 「開かないな」 「それじゃぁ私が開けてみるわ」 「いえいえ、朱璃様。ここは私が……」  そう言って手を付ける二人、その瞬間。 「何だ!?」 「え?」 「わわっ!」  広がっていく光に俺たちは飲み込まれた……  ・  ・  ・ 「斎巫女よ、何故お前までここに居る?」 「先月は私だって斎巫女一同を代表して居たのです、今日だって居る権利はあります」 「確かに斎巫女が居れば術の起動は楽になるが、維持が大変なんだぞ?」 「だからといって緋彌之命様だけはずるいです」 「ずるいも何も、わたしは皇なのだからな」 「それを言うなら私は初代斎巫女です、それに今は斎巫女一同の代表でもあります」 「それを任命したにはわたしだ、だから今をもって解任する」 「ちょっ!?」 「……」  気のせいだろうか、似たようなやりとりを最近見た気がする。 「おお、気がついたか? ならさっさと起きろ」 「あ、あぁ……」 「ミツルギ様、大丈夫ですか?」 「多分大丈夫だ」 「当たり前だろう、わたしのミツルギがこれくらいで壊れるようには出来ていないのだからな」  そう言って緋彌之命は微笑んだ。 「それよりもだな、やはり3人分の維持にはかなりの呪力を要する、今回もあまり時間は無さそうだ」 「残念です」 「斎巫女が居なければ少しは余裕があったのだがな」 「ですから、それはずるいんです!」 「それよりもいったい何がどうなったんだ?」 「あぁ、そうだったな。ミツルギよ、ばれんたいんというのは覚えておるか?」 「なんでもチョコがたくさん食べれる日だと、古杜音が喜んでいた日だな」  その答えに緋彌之命は千波矢の方を見る。 「わ、私のせいじゃないですよ?」 「……まぁ、それは置いておくとしよう。それではなミツルギよ、ほわいとでーというのは知ってるか?」 「あぁ、バレンタインのお返しを三倍で返すという習慣だと、古杜音が言ってたな」  その答えにまたもや緋彌之命は笑いながら千波矢の方を見る。 「……古杜音は後でお仕置きです」 「それでだな、今日はそのほわいとでーなる日だから、お返しをもらおうと思いお前を呼んだのだ」 「そうだったのか、だが今持ってきていないぞ? それ以前に俺は緋彌之命と千波矢からばれんたいんなる  物をもらった記憶が無いのだが?」 「そういえばあのときの記憶は覚えてられないようにしておいたのだったな」 「ちょっ!? 緋彌之命様、それでは意味が無いでは無いですか!」 「安心しろ斎巫女。ミツルギよ。今日用意してある物は覚えておるか?」 「それはほわいとでーのお返しの事か?」 「そうだ、それを思い出すと良い、それだけで再現できる」 「便利だな……」  そう思いつつ、俺は用意してある返礼を思い出す。  すると、目の前に小さな小箱とかなり大きな箱が現れた。 「これが多分……緋彌之命への分だと思う」  用意したのは俺のはずだが、記憶が曖昧だった。 「そしてこれが、斎巫女殿へだ」 「……なんだ、この箱の大きさの差は?」  緋彌之命が不機嫌そうに言いながら、小箱をあける。 「ほぅ……」  中には可愛いお菓子が入っているはずだ。 「なかなかにセンスは良いな、ミツルギ、ありがとう」 「あ、あぁ」 「それでは私はこの大きな箱を開けてみます♪」  千波矢が嬉しそうに大きな箱を開けるとそこには…… 「お饅頭だらけです……」  箱一杯に饅頭が詰められていた。 「そういえば、斎巫女殿が腹一杯饅頭を食べてみたいと言ってたからそれを用意したんだが」 「……古杜音はやはりお仕置きが必要ですね」  そうは言うが、千早の顔はいっぱいの饅頭に喜びを隠せないでいた。  二人が菓子を食べてる間、俺はお茶を飲んでいた。 「さて、美味い菓子も食べたことだし、本題に入るとしよう。斎巫女、もう下がって良いぞ?」 「え、えええぇぇっ!? これからが大事じゃ無いですかっ!」 「うるさい、もうあまり時間が残されていないのだ」 「私達だって協力してるんですよ?」 「二人ともおちつけ、それで本題とはなんだ?」 「それはだな……最後にミツルギ自身からのほわいとでーをもらおうと思ったのだが」  顔を赤くした緋彌之命の声がだんだん遠くなっていく。 「やはりもう持たぬか……今度こそわたし一人で術を用意するからな、楽しみに待っておれ」 「ずるいです、私じゃ術の維持はお手伝い出来ても起動ができないです」 「だから諦めよと言ったであろう?」 「なら次回は私こそ……」  二人の仲の良い言い合いを耳にしながら、意識が沈んでいった。  ・  ・  ・ 「……あれ?」 「あらら?」  二人の声がした。 「私、どうしたんだっけ?」 「私は?」 「確か、皇祖様に言われてここに来たんだけど……皇祖様? 返事が無い?」 「ならば私も初代様に呼ばれた気がしたから来たのですが……いったい何だったのでしょうね?」 「そうね……でもなんだか身体がだるいわね」 「確かに、まるで大きな儀式をした直後のようです」 「でもなんだか納得がいかないようなこの感情は何かしらね?」 「朱璃様もですか? 私もあります」 「ほんと、いったい何だったのかしら……宗仁は何かあった?」 「いや、俺もここに来た直後から何も覚えてない」 「そっか……さてっと、そろそろ仕事があるから行かなくちゃね、古杜音はどうするの?」 「はい、勅神殿の方へと参ります」 「そっか、時間とれたらあとで一緒にご飯食べましょうね」 「はい、是非お伺いします、というか絶対に食べに参ります!」 「それと、宗仁、今日は何の日かわかってるわよね?」 「いくら朴念仁でもあれだけ念を押されれば忘れないぞ」  今日は先月にいろんな人達からもらったチョコのお礼を渡す日。 「もちろん、朱璃にもちゃんと用意してあるぞ」 「……楽しみにしてるね」  頬を赤くした朱璃は逃げるように去って行った。 「それでは宗仁様、私もこれで」 「あぁ、古杜音もまた後で会おう」 「はい、では!」  古杜音もお務めに行った。 「さて、俺も着替えておくか」  午前中にある会議での朱璃の補佐の為に自室へ戻ることにした。  そのとき、ふろ紫霊殿の方を振り返った。  そこには誰も居ないはず、だけど。 「また参ることもありましょう」  そう自然に口から言葉がでたであった。
3月6日 ・夜明け前より瑠璃色な MoonlightCradle SSS「昔話」 「さやかちゃん、達哉を頼んでも良いかしら?」 「良いですよ〜」  夕方、お風呂に入ってた私に、琴子さんが声をかけてきた。  多分達哉くんが遊んで帰ってきたのだろう。 「やだよ、一人で入れるから!」 「そんなのわかってるわよ、でもね、さやかちゃんがお風呂から出るまで汚れたまま家の中で動かれると  大変なのよ、だから一緒に入っちゃいなさい!」  脱衣所の外で琴子さんと達哉くんのやりとりが聞こえる。 「ほら、さやかちゃんよろしくね!」 「……」  扉が開いて裸の達哉くんが入って来た、というか押し込まれてきた。  タオルで前を一生懸命隠してる姿が可愛い。 「達哉くん、お姉ちゃんが髪を洗ってあげようか?」 「それくらい一人でできるもん!」 「それじゃぁ背中を洗ってあげようか?」 「大丈夫だから!」 「ふふっ、恥ずかしがらなくてもいいのよ?」 「べ、別に恥ずかしくなんて無い!」 「そう? じゃぁタオルはとっても大丈夫よね?」 「……お姉ちゃんは恥ずかしくないの?」 「私?」  男性に裸を見られるのは恥ずかしいに決まってる、けど目の前に居るのは私の家族の男の子。 「ふふっ」  私は立ち上がった。 「お姉ちゃん!?」  慌てて達哉くんが背中を向けた。 「よし、それじゃぁ背中を流してあげるね」 「え?」 「はい、そこに座ってね、ついでに髪も洗ってあげるからね」  ・  ・  ・ 「あの頃の達哉くんは可愛かったわ」 「俺も覚えてないような昔話は恥ずかしいからやめてくれないか?」 「だーめ、恥ずかしがってる達哉くんが可愛いのがいけないのよ?」 「男が可愛いって言われても嬉しくないんだけど……」  そう言って顔を背ける達哉くんは、やっぱり可愛かった。  一緒にお風呂に入って、ふと思い出した、私が達哉くんの家族に、お姉ちゃんになって  すぐの頃の懐かしい思い出。  あのときの小さな男の子は、大きくなって今は私を支えてくれる。 「ふふっ、やっぱり可愛い」 「姉さん……」  達哉くんが少し顔をうつむかせた。 「大丈夫よ、可愛いだけじゃなくて、達哉くんはたくましくなってるから」 「そう、かな?」 「えぇ、あの頃は可愛いだけだったけど、今は凶悪にもなってるもんね」 「……姉さんにはずっと敵わないかもしれない」 「そう? 私は達哉くんに敵わないわよ? 特に、最近の夜は、ね?」 「……」  顔を真っ赤にしてる達哉くんはやっぱり可愛かったけど、私のお尻の下の達哉くんは、もう  凶悪と言って良いほどに主張している。 「達哉くん、お姉ちゃんが背中を流してあげるね、その後は……ね?」
3月5日 ・千の刃濤、桃花染の皇姫 千桃楽屋裏物語”お茶会” 「もぐもぐ……宗仁様、聞いてますか?」 「あ、あぁ、もちろん聞いてる」  どうしてこうなった? と俺は心の中で思う。  事の始まりは古杜音にお茶に誘われただけ、そう、それだけのはずだった。  帝宮の中に用意されている古杜音の、斉巫女の為の部屋に来た俺は思わず声を上げた。 「この大量の饅頭はいったい?」 「私が用意しました、それじゃぁお茶にしましょう」 「食べきれるのか?」  そう思えるほど大量に積まれた饅頭を、古杜音は一つずつ確実に食べていく。 「やっぱりおかしいと思いませんか?」 「何がだ?」 「ソフトが発売されて最初の誕生日は私だったんですよ? それなのに盛大なお祝いが  あまり見かけられませんでした!」 「……古杜音?」  ソフト? 発売? これは帝国で使われてる何かの符号なのだろうか? 「確かに、私の誕生日は冬のお祭りの前の月で、くりえいたーさんは色々と忙しいのは  わかりますよ? もぐもぐ」  饅頭を幸せそうに食べる古杜音だけど、口から出る言葉は、ただの愚痴だった。 「それでも先日の朱璃様の誕生日のお祝いを見てると、ちょっともやもやするのです!」  愚痴を言いつつ饅頭を食べる古杜音。 「もぐもぐ……あぁ、やっぱり佐村屋のお饅頭は絶品です♪」 「古杜音、そろそろ食べるのを止めた方がいいのではないだろうか?」 「何故ですか?」 「そんなに食べたらお腹を壊すのではないのか?」 「大丈夫です、饅頭は別腹です」 「別腹……その別腹の分だけ太るぞ?」 「それも大丈夫です、私は太りにくい体質です」 「そ、そうなのか……」 「だからまだまだいけま、ひゃわんっ!!」  突然古杜音が可愛い悲鳴を上げた。 「太らない分、ここにお肉がついたんですね」 「い、五十鈴!?」 「食べて太らない体質だけじゃなく、胸に栄養がまわるなんて、女の敵、いえ、巫女の敵ですね?」 「ちょ、五十鈴? 揉まないで、ひゃんっ!」 「古杜音は良いですよ? 誕生日が盛大に祝われなくても、この前のミス皇国水着コンテストで  1位になって、グッズがでましたよね?」 「あの、五十鈴さん?」 「冬のイベントではラジオで司会進行をさせてもらったじゃないですか?」 「あれは大役を戴いたというか、押し付けられたというか……っていうかいつまで胸を揉んでるんですか!」 「おもったよりもみ心地が良くて驚いてる所です」 「もうやめてください!」 「まったく、古杜音が我が儘ですね」 「私が悪いんですか!?」 「と、いうわけでお茶の続きを致しましょう、宗仁様。  あまり出番の無かった私のお話も聞いてくださいますよね?」 「あ、あぁ……」  これからは巫女達のお茶会には注意しよう、と思い知らされる1日になった……
2月28日 ・千の刃濤、桃花染の皇姫 SSS”私が私として” 「宗仁?」 「……あぁ、終わった」 「そう、やっと終わったのね……」  私は部屋の椅子に座って、そのまま脱力した。 「終わったぁ!」 「お疲れ様、陛下」 「宗仁、私はもう貴方のことを宗仁って呼んでるのよ?」 「そうだったな、俺も疲れていたようだな、すまない。朱璃」 「わかればよろしい」 「つーかーれーたー!」  椅子に座ったまま愚痴をこぼす。 「だが、無下には出来ないだろう、みな朱璃を、桃花帝を祝いたかったのだからな」 「それはわかってる、けど疲れるものは疲れるの」  今日は私の誕生日、国を挙げての盛大な誕生日になってしまっていた。  皇国民への挨拶、ひっきりなしにくる重鎮や領主との謁見、友好国との会食。  みんながみんな、祝ってくれるからこそ無下には出来なかった。 「あーあ、美よしで更科の料理が食べたかったなぁ」  当初美よしで内輪だけの誕生会を、という話もあったけど、これは先送りになってしまった。  とてもじゃないけど、誕生日当日に美よしに行く時間が作れなかったからだ。  「それでは後日、陛下のお時間が取れたときに誕生会を開きましょうね」  と更科が言ってくれたので、それは楽しみだったけど…… 「いつ時間とれるかなぁ……」  美よしに食べに行くだけなら簡単に調整できるけど、皆が時間を合わせることは難しい。 「朱璃、今夜はもう執務も無い、部屋へ戻ろう」 「そうね、宗仁」 「なんだ?」 「抱っこ」 「子供か?」 「いいじゃない、たまには」 「まったく、甘えん坊だな」 「宗仁だけだもん」 「わかった、誰かに見られてもしらないぞ?」 「大丈夫よ、もうこんな遅い時間に私の私室近辺には人は居ないわ、それに宗仁なら気配とか  わかるでしょう?」 「俺にどうしろと言うんだ?」 「だから、抱っこ。疲れてもう歩けないんだもん」 「……承知した」 「きゃん♪」  宗仁は私を軽々と抱きかかえてくれる。 「これが本当のお姫様抱っこね」 「朱璃は皇帝なのだからもうお姫様ではないだろう?」 「いいのー、今は桃花帝じゃなくて朱璃だもん」  宗仁の鍛え抜かれた身体に私からも抱きつく。 「んー、なんだか落ち着く〜」 「そうか、では部屋まで行くぞ」 「うん、お願い」  執務室を出るまでに、こっそり人よけの呪術を発動させておいた。 「部屋に着いたぞ」  私の部屋はすでに侍女達により清掃もおえ、布団も敷かれていた。 「朱璃、下ろすぞ」 「いや」 「疲れてるのだから、ちゃんと布団で眠った方が良い」 「ん、それじゃぁ宗仁、私が寝るまで一緒にいてくれる?」 「……本当に今日は甘えん坊だな」 「良いじゃない、私の誕生日なんだもん」 「それもそうだな、朱璃」 「なに?」 「寝るまででいいのか?」 「……え?」 「そもそも、すぐに寝てしまうのか?」 「……」  それって、そういうことで、良いのかな? 「……宗仁」 「何だ?」 「今日は……朝まで一緒に、居てくれる?」 「朱璃が望むなら」 「まだ、寝なくても良いの?」 「本音を言うなら休んで欲しいが、朱璃が望むなら……いや、これは俺が望んでいる事だな、朱璃」 「……なぁに?」 「誕生日おめでとう、キミがキミとして産まれてきてくれて良かった」 「……ありがとう、宗仁」  私はそのまま、布団の上に下ろされて、そして宗仁の優しい口づけに震えた……
2月21日 ・FORTUNE ARTERIAL SSS”朝のひととき” 「支倉先輩、私も同じのがいいです」 「俺のは珈琲で、ブラックだよ?」 「はい、それでお願いします」  いつもはココアを飲む白ちゃんが、今朝は珈琲を希望してきた。  特に問題は無いので、白ちゃんの分の珈琲を煎れて、手渡した。 「……うぅ」 「やっぱり苦いだろう?」 「苦いです、でも……美味しいです」  そう言う白ちゃんは涙目だった。 「デモどうして急に珈琲を飲む気になったの?」 「それは……」  白ちゃんが目をそらす。 「笑わないから」 「……はい」  喉を潤そうとカップに口を付ける、けど白ちゃんはすぐに涙目になった。 「誕生日を迎えて、一つ大人になったから?」 「はい、大人な支倉先輩と並んで恥ずかしくないようになりたかったんです」 「白ちゃんは俺と並んでも恥ずかしくないよ? 逆に俺の方が相応しくないかもしれない」 「そんなことはありません! 支倉先輩はとっても格好良いですから!」 「あ、あぁ、ありがとう」  突然の剣幕に俺は驚きながら礼を言う。 「それで、いつも朝珈琲を飲んでる支倉先輩に並びたかったんです」 「そうか……でも今日は入れるからね?」  白ちゃんの返事を待たずに、角砂糖とミルクをカップに入れた。 「……ありがとうございます」  甘くなった珈琲を飲む白ちゃん、今度は涙目にならなかった。 「白ちゃん、俺は今の白ちゃんが大好きだよ。だから無理して背伸びしないでいいんだよ?」 「でも……」 「そうだな、たとえばの話をするよ」 「……はい」 「俺が甘い物を全く食べれない、苦手だとするよ? そこで白ちゃんと付き合うようになって  甘味処にいったとして、白ちゃんと一緒に甘い金鍔を食べれないとする」  俺はそこでいったん言葉を切って珈琲で喉を潤す。 「俺がそこで無理をして顔色を悪くしながら金鍔を食べたら、白ちゃんはどう思う?」 「支倉先輩に無茶なんてさせませんから、金鍔を食べるのを止めます、そして甘くない心太を勧めます!」 「じゃぁ、逆ならどう思うかわかるよね?」 「あ……はい、そうですね」 「せっかくの朝に白ちゃんが涙目になって苦い珈琲を飲むのを俺は見ていられないよ。それよりもココアを  美味しそうに飲む白ちゃんの方が良いに決まってる」 「……はい、わかりました。次からは無理はしないようにしますね」 「そうしてくれると助かる」 「さて、そろそろシャワーを浴びないと時間がなくなっちゃうな」 「そうですね、支倉先輩先にどうぞ」 「今日は駄目」 「え?」 「さっき白ちゃんを涙目にさせちゃっただろう? せっかくの1日の、誕生日の始まりの日なんだから  そんな顔をしたことを忘れさせてもらう事にするよ」  そう言って俺は白ちゃんを抱き上げる。 「え、きゃっ、支倉先輩!?」  今までシーツを巻き付けていただけの白ちゃんの身体があらわになる。 「一緒に入ろう?」 「あ、あの、一緒に入るのは恥ずかしいんですけど……それよりも今の格好の方が恥ずかしいです」 「大丈夫、可愛いよ」 「はぅ」 「さ、白ちゃん。行こうか」 「……はい」  ・  ・  ・ 「そういえばそういうことがあったなぁ」 「私はあの後もこっそり何も入れない珈琲を飲む練習してたんですよ?」 「そうだったの?」 「はい。でもあのときから支倉先輩は朝、必ずホットココアにしてくれましたから、練習の意味は  なくなっちゃいましたけど」 「そりゃ、俺だって一緒に飲むんだから同じ方が良いに決まってるさ」 「ありがとうございます、支倉先輩」  そう言って両手で持ったマグカップを口に運ぶ白ちゃん、もちろんそれを飲んで涙目になることは  無くなっている。 「そろそろ時間かな?」 「そう、ですね……支倉先輩?」 「ん?」 「1日の始まりは、私を笑顔にしてくれるんですよね?」 「あ、あぁ……」 「……お風呂場へ運んでくれませんか?」 「……よろこんで、俺のお姫様」
2月14日 ・千の刃濤、桃花染の皇姫 千桃余談物語「御伽の皇国のばれんたいん」 「あれ?」  執務の間の休憩中、突然朱璃が声を上げた。 「どうした?」 「あ、うん。その皇祖様が紫霊殿に来て欲しいって伝えてきたの」 「紫霊殿、だと?」  あそこは皇宮の中では特別な場所、そこに来て欲しいと言うことは何か非常事態が  起きたのだろうか? 「朱璃」 「えぇ、念のため古杜音も呼んでから行きましょう」  3人で紫霊殿の前に来た。 「特に何か異常があったようには思えないけど……古杜音はどう思う?」  朱璃の言葉に古杜音は目を閉じて集中した。 「はい、呪力の流れを含め特に何も問題はありません」 「皇祖様はどうして私達を呼ばれたのかしら」 「入って見ればわかる」  俺は入り口の扉に手をかける。 「む?」 「宗仁様?」 「あかない」 「どれどれ?」  俺の声に朱璃も扉に手を付けた、その瞬間。 「え?」 「何!?」 「わわっ!」  広がっていく光に俺たちは飲み込まれた……  ・  ・  ・ 「ふむ、まさか当代の斎巫女まで付いてくるとはな」 「そのおかげで私もご一緒出来ますから良いじゃないですか」 「せっかくのミツルギとの時間なのだぞ、邪魔するな」 「そんな、緋彌之命様、ずるいです!」 「ずるいも何もわたしは皇だぞ?」 「それを言うなら私は初代斎巫女です」 「それを任命したのはわたしだ、だから今を持って解任する」 「ちょっ!?」 「……」  夢を見てるのか?  なんで緋彌之命と千波矢が言い争ってるんだ? 「なんだ、起きていたのか? ならさっさと起きろ」 「あ、あぁ……」  俺は立ち上がった。 「ミツルギ様、大丈夫ですか?」 「特に異常は無い」  だが、どうしてそんなことを聞くのだろう? 「ふむ、紫霊殿の力と、当代の斉巫女の呪力が上乗せされてるとはいえ、こちらも二人だからな。  あまり時間はとれそうに無いな」 「緋彌之命?」 「なぁ、ミツルギよ。今日はばれんたいんという日だそうだな」 「バレンタイン……そんな話を古杜音達がしていた気がするな。なんでもチョコが食べれる日だとか」 「私の子孫ながら、食い意地がはってますね……」 「お前は違うと言えるのか?」 「も、もちろんです!」 「それよりも今の状況が理解できないのだが」 「あぁ、すまないな。そのばれんたいんという日は世話になった異性にちょこれぇとを渡して労う日なのだ」 「そう、だったのか?」  そういえば昔、理由はよく解らなかったが奏海からチョコをもらった記憶がある。 「だからな、ミツルギ。お前には世話になってるからな、その……」  緋彌之命の顔が赤くなる。 「大丈夫か、緋彌之命。風邪じゃないのか?」 「……そうだった、ミツルギはそう言うやつだったな」 「緋彌之命様、お時間が……」 「それは斉巫女のせいだろう? 全く初代も当代も……まぁ、仕置きは後にしよう」 「え、えぇぇぇっ!?」 「うるさい、黙れ」 「……」  俺はこの二人の漫才を見るためにここに居るのだろうか? 「こほん、そ、そういうわけだから世話になったミツルギに、コレをだな……」  顔を赤くした緋彌之命は小袋を取り出した。 「くれるのか?」 「え? あ、あぁ、欲しいと言うのなら考えてもいいか、と……」 「ありがたく承る」 「そ、そうか……」 「それでは次は私の番ですね、斉巫女一同の代表でもある私がミツルギ様にお渡しします」 「そうか、礼を言う。ありがとう」 「……」 「千波矢?」 「ひゃぃっ!? い、いえ、何でもありません、決して見とれてたわけじゃありませんから!」 「何を自爆しているのだ、斉巫女」 「爆発なんてしてません!」 「そんなことはいい、ミツルギよ。食べてはみてくれないか?」 「せっかく緋彌之命から戴いたのだ、勿体ない」 「そ、そうか? だがな、ここでしか食べれないものなのだから」 「そうなのか? なら戴くとしよう」  小袋の中に入ってたチョコを一口食べてみる。 「……どうだ?」 「苦い」  正直に感想を述べた。 「失敗してしまったのか……」 「だが、甘くもある。苦くて甘くて……美味だな」 「本当か?」 「俺は嘘はつかない」 「そ、そうか、良かったなミツルギ」 「あぁ」 「では、今度は私達を食べてください」 「おい、斉巫女。どさくさに紛れて抱いて宣言するな!」 「え? そそそ、そんなことこんな明るい内から頼むわけないじゃないですか!?」 「日が暮れたら言うのか……」  そんなやりとりを聞きながら、千波矢の渡してくれたチョコを食べる」 「……この苦さは、抹茶だな」 「流石ミツルギ様です!」 「ふむ、こちらも美味だな」 「はぁ、良かったですぅ」  千波矢の煎れてくれたお茶を飲んで一息ついた。 「む……もう時間か、もう少し長く居られると思ったのだがな」 「残念です、でもまた次の機会がありますよ」 「そのときはもっと時間がとれるようにわたし一人で術を起動させよう」 「緋彌之命様だけなんてずるいですっ!」 「だまれ、わたしは皇なのだから良いのだ」 「二人とも落ち着け」  二人の間に入ろうと立ち上がったが、何故か二人の間に歩いて行くことが出来ない。 「仕方が無い、ミツルギ。一月後のほわいとでーの日を期待しておるぞ」 「一月後を楽しみにお待ちしております、ミツルギ様」 「緋彌之命! 千波矢!」  ・  ・  ・ 「……あれ?」 「あらら?」  二人の声がした。 「私、どうしたんだっけ?」 「私もです」 「確か、皇祖様に呼ばれてここに来て……あれれ?」 「どうしたんですか、朱璃様」 「皇祖様が呼びかけに応じてくれないの……これは間違いなく寝てるわね」 「え? それじゃぁ呼ばれてきたのに会えないんですか?」 「そういうことみたいね、いったい何がしたかったのかしらね……ふぁ」 「朱璃様、大きな欠伸ですね、ふぁぁ」 「そう言う古杜音こそ、ちゃんと寝てる?」 「それを言うなら朱璃様もですよ?」  そんな二人のやりとりが何故か懐かしく思える。  きっとミツルギの記憶、いや、そのときの感情なのだろうな。 「ねぇ、宗仁。この後の予定は特に無かったのよね?」 「あぁ、今日はこの後は自由時間だ」 「そっか、ねぇ、古杜音。たまには一緒に昼寝でもしない?」 「え、ご一緒させてもらってもいいんですか!?」 「あ、そっか。斉巫女の仕事が……」 「ありません! あったとしても朱璃様とのお昼寝が優先です!!」 「……ま、いっか。たまには息抜きしないとお互い大変だもんね」  んーと伸びをする朱璃。 「宗仁、今から私は古杜音を昼寝するから、何かあったら起こしに来てね」 「了解」 「それと、夜を楽しみにしててね」 「朱璃様、それはおとなのさむしんぐなお誘いですか?」 「何の話? 宗仁にお世話になってるお礼をするだけよ、それよりも早く部屋に行きましょう」 「そうですね、今はお昼寝しましょう、なんだか呪力を使いすぎたようなだるさもありますし」 「古杜音も?」 「朱璃様もですか? 何か大きな呪術を使いました?」 「呪術なんて使った記憶ないけど……ま、いっか」 「それでは宗仁様、失礼します。また後ほど……」  二人そろって去って行くのを見送った。 「苦いのに甘い、か……」  それとも逆だっただろうか? 甘いのに苦い。  なんだかそんな夢を見た感じがする。 「俺も少し休んだ方が良いみたいだな」  昼間から堂々と夢を見ただなんて、俺も気づかないうちに疲れが溜まっていたのだろう。  そう思いながら、自室へと戻ることにした。
2月3日 ・sincerely yours sss「豆まき」 「と、いうわけで恵方巻きを用意しました♪」  夜ご飯に呼ばれてリビングに下りてきたわたしは、机の上にいっぱいある手巻き寿司に出迎えられた。 「そっか、今日は節分だったっけ……というか、こんなに食べれるの?」  恵方巻きは太巻きのお寿司なので普通の手巻きより一本当たりの量が多い。 「だいじょうぶよ、だって半分以上はダミーの立体映像ですもの」 「……なんでそんな無駄なことを」 「えー、だって一人一本だけだと食卓が寂しいじゃない?」 「はぁ、もうお母さんのやることだからそういうもんだって思うしか無いよね」 「やん、褒められちゃった♪」 「褒めてないからね?」  そんなやりとりをお父さんは笑ってみてた。 「今年の恵方は、北北西よりやや北の方向だから……こっちね。準備は良い? それじゃぁ」 「「「いただきます」」」  ・  ・  ・ 「んー、無言で食べるだけだと絵面的にもお話的にも面白くないわね」 「お母さん、ご飯食べるのにおもしろさを追求しなくていいんだからね?」 「リリアちゃん」 「……なに?」 「エンターテイメントは大事なのよ?」 「……」  お母さんのやることだから、と割り切ることにしよう。 「それに、食べながらしゃべっちゃいけない訳じゃない? せっかく、おっきぃ……とか  咥えきれない……とか、こぼれちゃう、とか台詞あっても言えないじゃない」 「言わなくていいのっ!」  お母さんに付き合って居ると疲れるから、恵方巻き以外に用意されていた食事をすることにした。 「食事も終わったし、豆まきを始めましょう♪」  お母さんは豆が入った升を手に持って来た。 「……あれ? 鬼は?」 「リリアちゃん、鬼娘の衣装着てくれるの?」 「いや」 「そう言うと思って、今年は頼みませんでした」 「え、でも、朝霧家の伝統とかお母さん言ってたんじゃない?」 「えぇ、だから……アクセス」  空間ホロウインドウを展開したお母さんはすぐにそれを操作する。 「こんなのどうかしら?」 「……え?」    わたしの目の前に、わたしが現れた。  それも、あの鬼娘の衣装姿で! 「ちょっと、お母さん!?」 「あのときの姿の立体映像よ♪」  確かに映像なので動きが全く無い、けど…… 「ちょっと、これ結構恥ずかしいよ」 「そう? それじゃぁその鬼を祓っちゃいましょうか? 鬼は外!」  お母さんが豆を投げると、映像のわたしに豆が当たるる。 「え? 当たる?」 「当たり前じゃない、立体映像ですもの」  わたしは慌てて映像のわたしに触れてみる、確かに触れることが出来る。  もちろん、人の温かみは無い、ただ触れられるだけの物だけど。 「鬼は外♪」  そう言って豆を投げるお母さん。  わたしの立体映像に喜んで豆を投げる姿になんだか腹が立ってきた。 「……アクセス」  わたしもホロウインドウを呼び出し、立体映像のシステムに割り込む。 「コマンド!」 「鬼はそ……あら?」   「というか、なんでこんなデータが残ってるんだろう……」  今までわたしの映像があるところに、お母さんのサンタ姿の立体映像を投影させた。 「あら、あらら?」 「さぁ、豆まきを続けよ? お母さん」 「そうね、なら福は内♪」 「……え?」 「まだまだ甘いわね、リリアちゃん♪」 「しまった……」  豆まきには福は内もあったんだっけ。 「福は内♪」  お母さんの楽しそうな声がリビング中に響き渡った…… 「豆まきの後は豆を食べないとね、私はじゅうな…」 「そのネタ、まだ続いてたんだね……」
1月12日 ・千の刃濤、桃花染の皇姫 SSS”夜の宴” 「ねぇ、宗仁。今夜……しない?」 「そうだな」 「え、ええぇぇぇぇぇっ!?」  帝宮の廊下を一緒に歩いていた古杜音が突然大声を上げた。 「古杜音、うるさいわよ?」 「どうかしたのか?古杜音」 「いえいえいえいえいえ、どうかしてるのはお二方の方ですよ、なんで昼間っからそんな話を  まるで近所の散歩に行くかのようにさらっと話してるんですか!?」  顔を真っ赤にして慌ててる古杜音だが、慌てる意味が解らない。 「……」  その様子を見てた朱璃は、何かを思い着いた顔をした。  あの顔は、きっとろくな事では無いだろうな。 「ねぇ、宗仁、せっかくだから古杜音も誘いましょうか?」 「そうだな、古杜音が良ければ良いのではないか?」 「えぇぇぇぇっ!?」 「古杜音、斎巫女なんだからあまり騒がしくしないの」 「だってですよ、朱璃様!? なんでお二人の睦みに私が誘われるんですか!?」 「二人より三人の方が美味いからだろうな」 「そそそ、そんなことっ!?」  古杜音の目がぐるぐるまわっていて、なんだか頭から煙が出てるような気がしてきた。 「ふふっ、そろそろ答えを言った方が良いかもね、古杜音」 「ははは、はいっ!?」 「今夜、宴をするから私の部屋に来ない?」 「こ、今夜ですかっ!? た、確か予定はあいていたと思いますが!」 「ならちょうど良いわ、たまには宗仁以外の話し相手も欲しいし。あ、いっそのこと稲生や奏海も  誘おうかしら?」 「そ、そんなにっ!? 宗仁様はそんなにすごいんですかっ!?」 「そういうわけではないがな……一番すごいのは睦美さんだろう」 「あわわ……更科様が……人は見かけによらないのですね……」 「とことで、古杜音。貴女は何を考えてるのかしら?」 「はいっ!?」 「今夜、私の部屋での宴で、何をすると思ってるのかしらね?」 「なにって、その、さむしんぐてきな?」 「朱璃、夜酒を嗜む他に何かするのか?」 「へ?」  俺の言葉に古杜音が固まった。 「古杜音?」 「あ……はい?」 「ふふっ、古杜音は何を想像してたのかしらね?」 「ななな、なにも想像なんてしてないですよ!?」 「そう? それじゃぁ改めて聞くけど、夜の茶会に来ない?」 「酒を飲むのも茶会というのか?」 「言葉のあやよ」  今までの言葉のあやは、すべて古杜音をからかう物だったのだろうな。 「はい、そういう話ならご相伴いたします……ところで朱璃様」 「なに?」 「お酒の後は……その、さむしんぐてきな何かは?」 「古杜音が居るのにそんなことするわけないでしょう?」 「では私が居なければあるのですね?」 「え? あ、しまった……」 「ふふっ、私が居てもかまいませんよ、あ・か・り・さ・ま?」 「こーとーねー!!」  じゃれあう二人を見て、友とは良い物だなと思う。 「今夜の月は綺麗だろうな」  朱璃と古杜音は語り合いながら飲むのだろう。  なら俺は、月を肴に、ミツルギと融の事を思いながら飲むとしよう。

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