思いつきSSログ保管庫
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雑記掲載SS保管庫 2006年上半期 6月17日 夜明け前より瑠璃色な 巫女麻衣 6月16日 D.C.II 雪村杏 6月15日 夜明け前より瑠璃色な 巫女麻衣 5月2日 夜明け前より瑠璃色な フィーナ 4月27日 夜明け前より瑠璃色な 温泉編第?章 4月6日 夜明け前より瑠璃色な 温泉編序章+α 4月4日 夜明け前より瑠璃色な 菜月 4月1日 プリンセスホリデー クリフ&エレノア 3月22日 夜明け前より瑠璃色な フィアッカ&リース 3月14日 夜明け前より瑠璃色な フィーナ 3月8日 夜明け前より瑠璃色な さやか姉さん誕生日 3月7日 夜明け前より瑠璃色な フィーナ巫女舞 3月3日 夜明け前より瑠璃色な人気投票 2月5日 はぴねす! 1月18日 夜明け前より瑠璃色な
6月17日  「麻衣、練習の方は上手く行ってる?」  「うん。難しいけどそんなに長くない舞いだし間に合うかな?」  吹奏楽部が何故か学園祭で雅楽をすることになり、そして麻衣はメインで  舞台の上で舞う事になった。  フルートの練習以外に学園祭に向けての練習で最近の麻衣は忙しい。  一緒にいられる時間が減ってしまったのは寂しいが、学園祭までの我慢だ。  「そうだ、ちょっと見てみる?」  「何を?」  「私の舞い」  「見ちゃってもいいのか?」  こういう舞いは、神事なのだから当日まで秘しておくのが普通だと思うのだが  「神事っていったって、学園祭の舞台でだよ? それに練習でも見てもらった   方が良いから」  「フルートの練習と一緒だな」  「そうそう、じゃぁ準備するから待っててね」  そう言うと麻衣は2階の自室へ行った。  準備っていったい何の準備だ?  俺はリビングのソファとテーブルをずらして、スペースを作って待っていた。  「あの、お兄ちゃん。笑わない?」  リビングの入り口から顔だけだした麻衣。  「何で笑うんだ?」  「いいから、笑わない?」  「あ、あぁ」  何か切羽詰まったような感じがしたがそこまでいうなら笑うわけには行かない。  おずおずとリビングに入ってきた麻衣は、白と赤のコントラストに身を  包んでいた。巫女というやつだ。  「ど、どうしたんだ?」  「遠山先輩が用意してくれた衣装なの。楽器演奏する女の子はみんな着るの」  「それだと麻衣はこの衣装は着ないのか?」  「んとね、もっと良い巫女服用意するって先輩が言ってた」  翠っていったい・・・  「練習用にって貸してくれてるの・・・お兄ちゃん」  「なに?」  「おかしく・・・ないよね?」  「俺は笑ってないだろう? だいじょうぶ。似合ってる」  「ありがとう! それじゃぁ、お兄ちゃんの為だけに舞うね。」  そう言って扇子を持って舞い始めた。  動きはすこしぎこちなく感じるけど踊りではなくちゃんと舞いになっている。  「あっ!」  突然麻衣がバランスを崩して前のめりにその場で倒れた。  「だいじょうぶか!」  俺は駆け寄って麻衣を抱き起こす。  「いたたたた、鼻打った」  麻衣の鼻が赤くなってる。  「袴の裾を踏んじゃったみたい、まだ練習が必要かな」  笑って麻衣はごまかしていたが俺はそれに気が回らないほど気が動転していた。   裾を踏んでしまったため、赤い袴はずりおち麻衣の白いショーツがちらりと  見え隠れしている。白い上着ははだけて麻衣の胸の谷間をあらわにしていた。  「お兄ちゃん? ・・・きゃっ」  俺の視線に気付いた麻衣が慌てて両腕で胸を隠した。  「・・・見た?」  「・・・あぁ」  「お兄ちゃんのえっち」  「ふ、不可抗力だろう?」  「・・・」  「・・・」  「あの、お兄ちゃん・・・その」  「麻衣、部屋に行こうか」  「・・・うん」  俺はそっと麻衣を抱きかかえ、俺の部屋へ運んでいった。
6月16日  「今日は変わったことに挑戦してみようと思うの」  「変わったこと?」  ベットの上にいつものように並んで座った杏は突然そう言って  持ってきたバックの中からある物をとりだした。  「・・・手錠?」  「そう、手錠。警察官が持っている拘束具。腕の自由を奪うもの。」  ・・・雪村流暗記術が使えなくなっても、杏は杏だった。  「それで・・・その手錠をどうするんだ?」  「・・・わかってるくせに」  頬を染めて上目使いで見つめる杏。  ・・・理性が飛んでいきそうだ。  俺の中で杏を拘束し、いつも以上に可愛がる行為が浮かんでくる。  「それじゃぁ・・・義之」  「あ、あぁ・・・」  俺は杏から手錠を受け取ろうと手を伸ばし・・・  カシャッ!  「?」  カシャッ!  「あれ?」  手錠は俺の両腕を拘束していた。  「何故?」  「拘束の基本よ」  「いや、基本って・・・」  「もしかして、私を拘束したかったの?」  「えっと・・・」  「私は挑戦してみようと言ったけど、私でとは言ってないわ」  そういえばそうだった気が・・・  「というわけで、義之。えいっ!」  俺は杏に押し倒され、そしてベットの上で両腕を上げる形で固定された。  「え?」  「ふふふ・・・これで義之は私の自由」  「えーと?」  「義之にはこういう願望があるって、板橋から聞いてるわ。だから安心して」  「渉のやつ、何を吹き込んでるんだ!」  「あら? 違うの?」  「違うっ! そんな趣味は渉だけだ」  「でも、私は好きよ」  好きって・・・ここでそう言われるのはイヤじゃないけどいきなりは・・・  やっぱり恥ずかしい。  「攻めるの大好き」  「そっちかっ!」  「だから、覚悟してね? 義之」  その後結局俺が攻めて杏が許しを請うパターンになるのはいつものことだった。  「義之・・・絶対Sでしょ?」  「杏は?」  「私は義之相手ならどっちでもいいの。義之な・・・あっ」  恥ずかしい台詞を最後まで言わせないようにそっと杏の唇を奪う。  「義之、そっちの方が恥ずかしい」
6月15日  「麻衣?」  「ううん、ちがうよ。舞いだよ」  夕食の時の家族の会話、話題は学園祭の話し。  「舞いということは、雅楽かしら?」  「そうだよ」  「クラスの出し物か?」  「ううん、部活だよ」  「たしか麻衣ちゃんは吹奏楽部よね? なんで雅楽なの?」  俺もその点は疑問だ。  吹奏楽部の演奏ならやはり吹奏楽だろう。  「私もそこはわからないんだけど、遠山先輩が一押しして、決まったの」  「翠か・・・」  お祭り好きな翠なら、考えそう・・・か?  「それでもわからないな。和楽器にも笛はあるけどあれはフルートとは   違うだろう?」  「笛の担当の人は大変だよね、練習期間少ないし」  「麻衣もだろう?」  「お兄ちゃん、話し聞いてた? 私は舞い担当。これも遠山先輩の一押しなの」  そういえば、最初にそう言ってたっけ。  ・・・というか、なんで舞い?  「私、お休みとって絶対見に行くね」  「ありがとう、お姉ちゃん。お兄ちゃんも見に来てね」  「あ、あぁ・・・」  学園祭で麻衣が舞う事はわかったけど、何故か納得行かなかった。  そして学園祭。  体育館に設置されたステージでの舞台の上では或る意味異様な光景だった。  出演してる吹奏楽部のメンバーはみんな和装している。  女子はみな巫女装束だ。  舞台左右に控えてる吹奏楽部のメンバーは大鼓、小鼓、太鼓、笛を演奏し  そしてその中央で麻衣が巫女服で舞っている。  麻衣は扇を持っていた。  扇を胸の前で広げたまま、舞台中央へしずしずと歩み出てくる。  その扇を空にかざし、また膝をついて地にかざし・・・  優雅に、扇を舞わせる。  舞いにあわせて楽曲が奏でられてるような錯覚に陥った。  静かに、優雅に。  時折、巫女服の衣擦れの音が客席まで聞こえてくる。  そんな音が聞こえるほど静かに、そして激しい舞いが舞われていた。  麻衣は舞台中央に両膝を付き座る。  扇を閉じ、目を閉じて一礼し、楽曲の演奏も終わった。  静けさに支配されてた体育館は、舞いが終わった後しばらくの間も静寂が  続いたが、気付いたように拍手がわき上がって、最後には大声援もでるほどに  なった。吹奏楽部のステージは大成功の内に終わった。  「麻衣、お疲れさま」  「麻衣ちゃん、ご苦労様」  「ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん。私の舞いはどうだった?」  「すごかったわ、麻衣ちゃん。」  「なんていうか・・・圧倒されたよ」  「よかったぁ、練習した甲斐あったよ」  「お疲れ、麻衣」  「遠山先輩、お疲れさまでした!」  「翠、お疲れさま、おまえの太鼓も良かったぞ?」  「ありがと、朝霧君」  「所でさ、翠。どうして吹奏楽部が、雅楽なんだ?   それに麻衣がメインって決めたのも翠なんだろ?」  「あー、それはね・・・巫女だから」  「?」  「ほら、今はやっぱりそういう時代でしょ? それに巫女舞でしょ?   やっぱり麻衣が舞うから麻衣なのよ、なんてね」  「・・・」  「・・・遠山先輩?」  「・・・朝霧君、そのジト目はなにかな?」  「・・・いや、成功したからいいの、か?」  「そうそう、終わりよければ全て良しなのだ!」  「・・・」  「朝霧君も、愛しの妹の巫女さんの姿みれて良かったでしょ?   惚れ直した?」  「なっ・・・」  「あははー、冗談だって。それじゃぁ、お先に〜」  ま、まぁ・・・麻衣の巫女姿が見れたから良かった事には変わりないか。  「お兄ちゃん?」  「あ、いや。なんでもない。それじゃぁ帰るか」  「うん!」  「今日はお姉ちゃんがお祝いに美味しいもの作ってあげるね」  「やったぁ!」  「俺はアイスを買って帰るか」  「ありがとう! お兄ちゃん、お姉ちゃん大好き!」
5月2日  「達哉、ちょっと話しきいてくれる?」  「なに?」  「私ね、面白い夢を見たの」  「・・・夢の話」  「?」  「あ、いや、なんでもない・・・」  「どうしたの? なんだか疲れた顔しちゃって」  「ちょっと・・・ね。」  あの時、夢の話をされた後、俺は現実に悪夢を見た・・・気がした。  「私ね、学園に通ってたの。カテリナ学院じゃない、他の学園なの。   桜の花びらがとても綺麗だったの、覚えてるわ・・・」  「そういえば、フィーナは地球では桜を見たことあるの?」  「写真や記録だけしかないわ、ホームスティに来たときはもう   咲いてなかったもの」  「来年はこっちいるとき、満開になるといいな」  「ええ、そのときはみんなでお花見にいきましょうね、達哉」 ---  フィーナが夢の中で通っていた学園って、どこなんででしょうね?  それは達哉の機転で語られませんでした、危ない危ない(w
4月27日 side:Tatsuya  夜中に目が覚めた。  寝付きは良い方だと思ったけど、まくらが違うからだろうか?  起きあがると、窓のカーテンが淡い光が放っていた。  「そうか・・・今日は月がでているんだっけ」  食事前に入った温泉では湯船に浮かぶ月を肴におやっさんが  飲んでいたっけ。  なんだかこのまま寝るのはもったいない気がしてきた。  横で寝ている仁さんやおやっさんを起こさないよう、タオルをもって  俺は部屋を出た。  旅館の案内には大浴場とは別に家族風呂があると記載してあった。  折角だからこっちに入ってみよう。  「確か奥の方だったよな」  夕食前にみんなで入った大浴場を通り抜け奥の方へと進んでいく。  程なくして見つかった家族風呂への入り口。  誰も使ってないのを確認してから、入り口にある看板を裏返す。  そこには「入浴中」とかかれている。  「みんな家族だけど・・・さすがに女性多いからな」  苦笑いしながら俺は脱衣所に入った。 side:Feena  夜中に目が覚めた。  寝付きは良い方だと思ったのだけど・・・  枕がかわると眠れないというけど、公務で地球全国を飛び回る私が  枕程度で眠れない訳はない。  ふと、部屋の中が明るいのに気付いた。電気がついているわけでは無い。  光源は・・・  「故郷の光ね」  窓を覆うカーテンが淡く光っていた。  なんだかこのまま寝てしまうのがもったいなく感じてきた。  折角温泉に来ているのだから、もう一度お湯につかってみようかしら。  温泉には美肌効果もあるってさやかもいってたことだし・・・  私は寝ているみんなを起こさないよう、そっと部屋を抜け出した。  大浴場の方へ向かうと、ずっと前の方に誰かが歩いていた。  「あれは・・・達哉? こんな時間に・・・」  言葉に出て、それがおかしいことにきづいて笑ってしまった。  「私もこんな時間に出歩いてるのだから」  気が合うわね。  折角だから達哉と一緒に温泉にはいろうかしら?  そう思って声をかけようとした達哉は、大浴場の入り口を通り越して  先の方へ歩いていった。  温泉に入るのではないのかしら?  気になってそっと後ろをついていったら、一つの部屋の入り口から  中に入っていった。  そこは家族風呂という、貸し切りの温泉だった。  「家族風呂というのはね、他のお客さんと一緒じゃなくて家族だけで   入れる温泉なの。家族だけなら気兼ねないでしょう?」  夕食前にさやかに説明されたことを思い出す。  入り口に入浴中との立て札が出ている。  「家族だけなら気兼ねない、か・・・恋人同士だとどうなのかしら?」 side:Tatsuya  「ふぅ〜」  かけ湯をしてから湯船に入る。  湯船、といっても大浴場と同じような露店の岩風呂だ。  お湯からでる湯気で奥がよく見えない。そんなに広くはないはずだが  気になったので奥の方まで歩いていった。  大浴場より広くはないけど、狭くもない広さだった。  「こんな家族風呂って、贅沢だな」  経営だいじょうぶなのか? とか思ってしまう。  俺は奥の岩壁に背を預け、そのまま上空を見上げる。  そこには38万キロの距離がある、輝く衛星の姿が浮かんでいた。  ただ、無言で見上げる。  そこに浮かぶ「月」。  「あそこにも人が住んでいるんだよな・・・」  そして、俺の最愛のフィアンセであるフィーナの故郷。  昔の俺は、月に人がいる、程度にしか思ってなかったのかもしれない。  しかし、今は違う。フィーナがいる。  たったそれだけの違いが、月に関する想いを変えてしまった。  「フィーナ・・・」  「なぁに?」  「・・・え?」  俺の独り言のはずだった、呼びかけに反応があった。  慌てて視線をおろすと、浴衣を着たフィーナが湯船の縁の近くに立っていた。 side:Feena  達哉以外の人が入ってたら、中まで入るのをやめよう。  それを確認するには中に入らないと行けない。  少し間をおいてから私も家族風呂の入り口をそっと開けた。  中の脱衣所には達哉が着ていた浴衣が籠の中に入っていた。  「達哉だけ・・・みたいね」  やっとふたりっきりになれた。その時私は気付いた。  「そう、そうだったのね」  種明かししてしまえば簡単なことだったのだ。  寝付けなかったのではなく、寝る前にすべきことが終わってなかったのだ。  そう、いつもなら朝霧の家に来るとある達哉との語らい。  今日は旅行だったから、周りに人が沢山いたから、二人の時間が全く  無かったのだ。  求めている答えがでたのなら、あとは簡単。  達哉に会いに行くだけ。  ・・・達哉に会いたい、話したい、一緒にいたい。  私はそのままの姿で浴室への扉をそっと開いた。  「フィーナ・・・」  奥の方から達哉がつぶやく声が聞こえた。  「なぁに?」  「・・・え?」 side:Tatuya  「フィーナ・・・どうしてここに?」  「達哉が入っていくのが見えたから、私も来たの」  「こんな時間に?」  「達哉こそこんな時間よ?」  確かに・・・  「達哉、私も入って良いかしら?」  「え・・・」  フィーナも温泉に入る?  ということは・・・  「そんなに見つめられると恥ずかしいわ」  頬を染めるフィーナ。  「ご、ごめん」  俺は慌てて後ろを向く。  後ろで布ずれの音が聞こえる。  フィーナが浴衣を脱いでいるのだろう。  そう思うだけで俺の頬も熱くなってくる。  ちゃぷん  お湯につかる音が聞こえてきた。  「良い湯加減ね」  「・・・あぁ」  俺は空を見上げた、それだけ言うのが精一杯だった。  確かに、フィーナの身体を見るのは初めてではない所か、フィーナが  地球に来たときは一緒に寝ることもある。  お風呂も、何度か一緒に入ったことがあったが・・・  「これは違うよな」  「なに?」  「いや、なんでもない。フィーナは綺麗だなって」  「私の方を見ないでわかるの?」  「もちろん、だってフィーナだからな」  「・・・ありがとう」  フィーナは俺の隣で一緒に空を見上げた。 side:Feena  「フィーナ・・・どうしてここに?」  「達哉が入っていくのが見えたから、私も来たの」  「こんな時間に?」  「達哉こそこんな時間よ?」  私はおかしくなった。さっき私が考えてたことと同じですもの。  それと同時に嬉しくもあった。  「達哉、私も入って良いかしら?」  「え・・・」  ここまで来て温泉に入らない方がおかしいわよ?  そう言おうとしたとき、達哉の熱い視線を感じた。  「そんなに見つめられると恥ずかしいわ」  「ご、ごめん」  慌てて後ろを向く達哉。なんだか可愛い。  普段はあんなに男らしいのにね。  達哉が後ろを向いてくれてる間に、私はそっと浴衣を脱ぐ。  時折達哉の方を確認しながら・・・  確かに普段から・・その、見られてはいるけど、脱いでいる所は  別なのだから。  ちゃぷん  そっと足からお湯につかる。  軽く身体にお湯をかけてから肩までつかる。  「良い湯加減ね」  「・・・あぁ」  達哉は私の方をみず、空を見上げてそう言う。  ・・・達哉のその態度にちょっと意地悪をしてみたくなった。  「これは違うよな」  「なに?」  「いや、なんでもない。フィーナは綺麗だなって」  「私の方を見ないでわかるの?」  「もちろん、だってフィーナだからな」  「・・・ありがとう」  ・・・私の負けかしらね。  達哉が見上げてる空を横で一緒に見あげた。 side:Tatsuya  隣にフィーナがいる。  一緒に温泉につかって、一緒に月を見上げている。  ただ、それだけで、会話も無いのに心が満たされている。  俺の肩にもたれてくるフィーナ。  そっとフィーナの肩を抱き寄せる。  そのままそっと口づけをする。  「・・・今日の達哉は優しいのね」  「俺はいつも優しいつもりだけど?」  「ベットの中でも?」  「・・・」  自信がなかった。  「今日は・・・求めてくれないの?」  「俺はいつもフィーナを求めてるさ。ただ・・・」  「ただ?」  「たまにはこういうのも良いかなって。フィーナは?」  「私も・・・そう思ってたの」  同じ気持ちでいてくれたのが嬉しかった。  「そろそろ上がろうか? のぼせちゃうし」  「そうね」  フィーナはそっと湯船からあがった。  その時見えた後ろ姿はとても綺麗で、幻想的でもあった。  「達哉、見ちゃ駄目」  「そんな綺麗な姿、見ないわけにはいかないだろう?」  「それでも駄目!」  怒られた。  家族風呂から出てきてロビーのソファで二人で座った。  「寝るときまで一緒にいたいけど」  「今日は無理ね、部屋が違うしみんなもいるもの」  「そうだな・・・」  「でも・・・もう少しだけ、一緒にいてもいい?」  「もちろんだよ、フィーナ」 side:Feena  隣に達哉がいる。  一緒に温泉につかって、一緒に月を見上げている。  ただ、それだけで、会話も無いのに心が満たされている。  そっと達哉の肩に身体を預ける。  そっと、でも力強く私の肩に手を回して抱き留めてくれる達哉。  そっと、静かな、そして甘い口づけ。  「・・・今日の達哉は優しいのね」  「俺はいつも優しいつもりだけど?」  本当かしら?  「ベットの中でも?」  「・・・」  答えはなかった。わかってるのかしらね?  「今日は・・・求めてくれないの?」  「俺はいつもフィーナを求めてるさ。ただ・・・」  「ただ?」  「たまにはこういうのも良いかなって。フィーナは?」  達哉はたまに、私の欲しがってる事を見抜いてくれる。  そっと、優しく・・・  「私も・・・そう思ってたの」  「そろそろ上がろうか? のぼせちゃうし」  「そうね」  私は湯船から上がった。  湯船から離れた場所とはいえ、浴室で脱いだ浴衣はだいじょうぶかしら?  その時達哉の視線が私の方を向いてるのを感じた。  「達哉、見ちゃ駄目」  「そんな綺麗な姿、見ないわけにはいかないだろう?」  「それでも駄目!」  こういうときの達哉って鈍感。女の子が服を着るところを見るなんて  恥ずかしいのわからないのかしら?  でも、それも達哉らしいかな。  家族風呂から出てきてロビーのソファで二人で座った。  「寝るときまで一緒にいたいけど」  「今日は無理ね、部屋が違うしみんなもいるもの」  「そうだな・・・」  「でも・・・もう少しだけ、一緒にいてもいい?」  「もちろんだよ、フィーナ」  こうして二人の夜の逢瀬はそっとおわりを告げた。 intermission?  「おはよう、達也君。昨夜はぐっすり眠れたかい?」  少しだけ、ほんの少しだけ寝坊した俺を食堂で迎えた仁さんの  言葉にぎくっとする。  たしかあの時、仁さんは起きてなかったはずだし、戻ったときも  寝ていたはずだ。  「よく眠れましたよ」  おれはそう言って椅子に座ってみんなに朝の挨拶をする。  「・・・あれ? フィーナは?」  「今ミアちゃんが呼びにいってるよ」  「麻衣、同じ部屋なんだから一緒に来ればよかったんじゃないか?」  「そう思ったんだけど、フィーナさんぐっすり眠ってたし」  「無理に起こさないでもいいって、私が言ったのよ」  「姉さんがそういうなら・・・」  その時フィーナがミアと一緒に食堂に入ってきた。  「みなさん、おはようございます。遅れてごめんなさい」  「いいのいいの、それよりもフィーナ?」  「なに、菜月」  「昨夜はぐっすり眠れたの?」  ・・・そういえば、菜月って仁さんの妹だったっけ。  この後、昨日の夜の逢瀬の事はすっかりばれていることがわかった。 --- 温泉でのフィーナ(柳の風まかせ,ブタベストさん)  ブタベストさんのブログで温泉に入るフィーナ姫のイラストが掲載  されています。  そして其の絵を見たとき、早坂が以前書いた温泉での話の一部を  書き上げてみたのが今回の思いつきSSです。  台詞が二人のサイドどちらからみても共通なので、なんだか長ったらしく  なってしまいましたね、まだまだです。  ブタベストさんの絵を挿し絵にするなら、「ちゃぷん」とお風呂に入る  あたりかなぁ、各自想像してください(w
4月6日  「突然すみません」  「いや、かまわんよ。珈琲でいいかな?」  「おかまいなく」  テーブルの上に珈琲を淹れてだす。  「ありがとうございます。」  「お口に合えば良いのだが」  「・・・美味しいです、お世辞抜きに」  「ありがとう。それでカレンさん、今日はどんな御用事なのかな?」  「はい、実はフィーナ様の提案と伝言をお伝えに参りました」  「地球に来てるのかい?」  「いえ、いまは月です。また近い内に外交でこちらに参ります。   その後の話しです。」    フィーナ姫が近い内に地球に降りてくる、今回は仕事以外に  休養できる期間があるとのこと。  そこでいつもお世話になってる朝霧と鷹見沢の家を招待して  温泉に、という話しだそうだ。  「申し出はありがたいが店があるからな」  「それについてはフィーナ様から無理強いしないよう仰せつかっております   ですが、左門様がいらっしゃってくれると私としても安心なのです。」  「俺がか?」  「はい、左門様がいらっしゃらない場合、保護者と呼べる方がさやかしか   降りません。いささか不安ではあります。」  「さやちゃんはしっかりしてるからだいじょうぶだろう?」  「はい、確かに普段はしっかりしてます。しかしアルコールが入った場合・・・」  そうだったな、さやちゃんはアルコールに弱い。  「幸いフィーナ様の休日の時、菜月様もお帰りになってる頃です」  さすがはフィーナ姫、というべきかな。  「そこまで準備していただいて、お受けしないわけにもいかないだろう。   カレンさん、フィーナ姫にそうお伝え下さい。」  「かしこまいりました、姫も喜んでくださるとおもいます。   それでは早速報告に戻ります。それと・・・   珈琲、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」 ---  と、いうわけで温泉旅行編のお話の序章を書いてみました。  しかしこのペースで書くと思いつきショートストーリーとは言えないほどの  量になりそうですね(^^;  この話の先は今日の雑記で紹介しているやまぐうさんやブタベストさんの  お話に続・・く?(他人任せ  そういえば、遠藤覚志さんからシチュエーションリクエスト?  あったので、その場面ちょっとだけ。 ---  「うわぁ、温泉っておっきいんですね!」  浴室に入ったとたん、ミアが感嘆の声をあげる。  「ミア、そんなに騒いで・・・」  「フィーナさん、いいじゃないですか。私だって驚いてるんだから」  「そうそう、こんなにすごい岩風呂だって思ってなかったんですもの」  麻衣もさやかも、驚きを隠していない。  私は、驚いてないフリをしつつも、このお風呂には驚いていた。  崖の岩場を削っただけのような、この露天風呂。  その崖の中腹から滝のようにお湯がわき出ていて、そのしたの浴槽に  そそいでいる。  まるで自然の中にいるような錯覚を覚えそうだ。  「フィーナ様、どうかされましたか?」  「え、なんでもないわ、カレン」  ・・・  「カレン、なんで眼鏡かけたままなの? それにその刀は?」  「いついかなる時もフィーナ様の安全を確保するのが私の役目です。   眼鏡を外すと視界が悪くなりますので。」  「あ、ありがとう、カレン」  「いえ」  この場所ってそんなに危険なのかしら?  「カレンさん、でも刀だと近づかないといけないですよ?」  「菜月様?」  「だから、これ」  そういって菜月がとりだしたのは・・・  「しゃもじ?」  「そうそう、これで狙えばだいじょうぶだよ」  「その時はお願いします、菜月様」  「使う機会がなければいいのだけどね」  使う機会ってあるのかしら?  熱くもなく温くもない温度のお湯にみんなでつかる。  普段お風呂は一人で入ることがおおいので、みんなの顔を見ての入浴は  ちょっと不思議な感じ。  さやかの隣でお湯につかってる麻衣がなんだかずっと私の方を見ている  気がする。  「どうしたの? 麻衣」  「あ・・えと・・その」  「?」  「フィーナさんって綺麗だなって思って。・・・胸もおっきいし」  私は反射的に胸を手で隠していた。  「そうですよね、姫様の肌は綺麗ですよね。最近少し大きくなられた   ようですし」  「ミア?」  「やっぱり愛してくれる人がいると変わっていくのよね?」  「さやか!」  「いいなぁ、私も」  「菜月まで」  私の顔は湯当たりとは違う、赤さに染まっていることだろう。  「さやか、その辺にしておいてください」  「あらあら、カレンも肌は綺麗だから安心して」  「なっ、私はそんなことは気にしてない!」  「・・・カレン、私とサイズかわらない」  「リースっ!」  その時菜月が突然立ち上がり、構えてた物を投げ出した。  それは綺麗な放物線を描き、竹垣の向こうに消えていった。  「どうしたの? 菜月」  「ううん、なんでもないの。」  そういってお湯につかりなおす菜月。  その胸は私より豊かだった。  以前の私はそういうのは全く気にしなかったけど・・・  達哉もやっぱり、大きい方がいいのかしら? ---  「大きな岩風呂ですね」  「そうだな、来て正解だったな」  早速湯船につかる。  「親父殿、こんなのを持ってきましたが如何ですかな?」  仁はお盆を湯船の近くの岩場においた。  その上にはとっくりが数本置かれていた。  「つぎます」  「タツ、ありがとな」  タツが俺の持つお猪口に注いでくれる。  「仁さんも」  「さんきゅ、達也君」  お猪口の中に浮かぶ月をみながら、それを飲み干す。  そういえばこんな休日いついらいだろう?  その時俺の視界の端にあらぬ方向に向かう仁の姿が映った。  「おい、仁。何してる?」  「親父殿、この向こう側には我が愛しの妹がいるんですよ。   兄としてはどれくらい育ったか見てやらないといけません。」  「仁さんっ!」  「達哉君、声が大きい」  「すみません・・・て駄目ですよ。菜月以外の人もいるんだから」  「それは事故だよ、達也君。」  「駄目ですって」  「気にしちゃ駄目だ、多少の犠牲はつきものなんだよ」  「おい、仁、その辺にしておけよ。俺が来ている訳を考えろ」  「親父殿、これは男の戦いなのです。ここは暖かく見守ってください!」  これ以上注意しても駄目か。こうなったら  「タツ、仁を止めるぞ」  「はい」  その時竹垣の奥の方から何かが飛来してきた。  それはまるで見えてるように仁の後頭部に向かっていき・・・  「ふぎゃ」  そのまま仁は湯船の中に沈んでいった。  「少し放っておくか」  「そうですね。あ、つぎます」  「おお、ありがと」
4月4日  「達哉君、逃げるんだ!」  「どうしたんですか? 仁さん。そんなに慌てて」  「我が愛しの妹がとうとうふぎゃぁ!」  仁さんの後頭部に何かがぶつかった音と共に俺の目の前で沈んでいく仁さん。  「あ、達哉。ちょうどよかった」  「菜月?」  左手に何故か竹刀をもった菜月が表れた。  「達哉は前にフィーナと剣道の練習したんだよね?」  「あ、あぁ。結局勝てなかったけどな」  「でも素人じゃないんだよね?」  「かじった程度だけど・・・何?」  「あのね、私夢を見たの」  「夢?」  「うん、なんか小説にでてくるような中世のヨーロッパみたいなところが   舞台なの」  「なんかずいぶんしっかりとした夢だな」  「でね、夢の中の私は、お姫様の護衛の騎士だったの」  「お姫様?」  俺の脳裏に浮かんだお姫様のイメージは、凛としてしっかりしていて、  姫という立場を理解していて、常に月と地球の事を考えている、でも  本当は寂しがり屋の・・・  「達哉?」  「あ、ごめん。でそのお姫様はフィーナみたいな感じだったの?」  「ううん、全然違う。お城にいるのが退屈でお忍びで街に遊びにでちゃう   おてんば姫って言うのがぴったしな可愛いお姫様」  俺はフィーナ以外のお姫様には会ったこと無いけど、世の中には  そういう姫もいるだろうなぁ。  「私はその姫の護衛を王に頼まれた騎士なの」  「菜月が騎士?」  騎士って剣を振ってるあの騎士?  「結構楽しいお話だったよ」  「夢じゃないのか?」  「うん、夢だったはずなんだけどね・・・なんかね、試しにこれを」  そういって竹刀を構える菜月。  その構えはフィーナが構えるのとは全然違う、剣道でいう上段や中段、  下段の構えとも違う。  素人が見よう見まねで剣を振るときの構えというのが俺の最初の感想だったが  フィーナに鍛えられた俺の直感が、危険を感じていた。  「夢での出来事のはずなんだけどね、しっくりくるのよ」  「・・・」  「それでね、兄さんに相手してもらおうと思ったんだけど逃げちゃって・・・」  俺はこの状況から逃げ出す事を考えていたが、構えてる菜月に背を向けたら  一気にやられる、そんな気がしていた。  「というわけで、達哉。お願い、相手になって」  俺は縁側の所に横になって庭を眺めていた。  正確に言えば、座っていられないほどぼろぼろになったからだ。  そして庭では、フィーナと菜月が互角の戦いをしていた。  ・・・冗談だろう?  「やるわね、菜月。いつのまに!」  「フィーナこそさすがね!」  「菜月、夢を見たっていってたよな・・・   今俺が見ているのはなんなんだろう?」 ---  というわけで、遠藤さんのリクエストを即興で書いてみました。  思いつきSSではなく、即興SSです(笑)  似たようなものですが、似て非なる物です(^^;  書いてて思ったんだけど、クリフの方は喜劇、達哉の方は悲劇になって  しまいましたね(^^;  え? リクエストが全て反映されてない?  それは気のせいです(w
4月1日  「あれ・・・いつもならここで剣を振ってるはずなんだが。」  フィーに頼まれてエルに届け物をしに湖の畔に来た俺だったが、いつものほとりに  エルの姿は無かった。  「この時間はたいていここのはずなんだが・・・」  俺は周りを探してみた。  程なく近くの樹の切り株の所に座っているエルを発見した。  「珍しいな、こんな所にいるなんて」  「あ、クリフ。うん、ちょっとね・・・」  その時俺はエルの手に握られてる物に気付いた。  握っているので良く分からないが持ち手はあるらしい。  持ち手以外の部分は平らに広がっている。  似たような物があるとしたら大鍋をかき混ぜるへらを小型化した感じだ。  「・・・なんだ、それ?」  「それが、私もよくわからないの」  「・・・」  「実はね、私夢を見たの」  「それはその謎の物体と関係あるのか?」  「まぁ、聞いてよ。」  「夢の中の私は、隣に住む幼なじみの男の子と仲良いの。」  「俺達みたいだな」  「え?」  「幼なじみなんだろ? 剣の修業も一緒にしたしな」  「・・・」  「エル、どうした?」  「なんでもない」  「建物とかは良く覚えてないけど、お父さんが料理人でお店を開いてるの   その手伝いを幼なじみの男の子と一緒にしてたの」  「なんだか俺とエルというより、俺とレイ姉みたいだな」  「そう、かもね」  なんだかエルの顔が寂しそうに見えた気がした。  気のせい、だろう。  「そういえば、お姫様も出てきたわ」  「お姫様って、レティか?」  「いえ。姫様よりもっとしっかりして、ちゃんとした姫様、だったわ」  「それって遠回しにレティはちゃんとしてないって事じゃないのか?」  「え? そそそ、そんなことはないわ」  「・・・」  「クリフ、その笑い顔は何?」  「いや、別に・・・」  「・・・」  突然エルは持っていた物を俺の横の方に投げつけた。  「何してるんだ?」  「夢の話はまだ続きがあってね、夢の中の私は飛び道具が得意でね・・・」  その時俺の耳は遠ざかったはずの音が近づいてきたのを聞き取っていた。  おれは音のする方を振り返る、そして目の前にあるはずのない物が迫ってくる  光景が目に飛び込んでくる。  慌てて大きく横に避けると、飛んできた物はエルの手の中に戻っていった。  「その時持ってた物が、これだったわけ」  「・・・なんだ、それは?」  「だから、私もよくわからないの。でも、ダガーより投げやすいのよね」  「・・・」  「・・・ねぇ、クリフ?」  「イヤだ」  「私は何も言ってないわよ?」  「だいたいわかる、的になれっていうことだろ?」  「わかってるじゃない?」  「だからイヤだといったろ・・・って、エル。なんでそんなに持ってるんだ?」  「木片を削って数を作ってみたの。   ほら、試してみないと実戦では使えないでしょ?」  「そんなの実戦で役立つわけ・・・ないだろ?」  「それはこれから試してみるの。そういうわけで、クリフ。がんばってね♪」  俺はエルの言葉を聞き終える前にその場から逃げ出していた・・・  「・・・恐ろしい武器だった」  後ろから飛んでくる謎の物体。  かわしたら今度は前から迫ってくる、ブーメランでもあんな動きはしないぞ。  「あ、お兄ちゃん、お帰りなさい。エレノアさんに届けてくれた?」  「・・・」  「お兄ちゃん?」  「・・・」  「・・・」  フィーにしかられた。俺、悪いことしたのか?  ---  今回の最大の欠点。  早坂はプリホリ未プレイ(w  だから厳密にしゃべりとか性格とか違うかもしれません。  確認したくてもソフトがないので(T_T)  その内・・・その内に。
3月22日    「タツヤ・・・」  俺を呼ぶ声が聞こえるような気がする・・・  「タツヤ・・・」  微睡みの中にいる俺に呼びかける・・・この声は?  「・・・タツヤ」  声質が変わった、ほんのちょっとの違いだけど、俺は聞き分けることが出来る。  愛おしい、リースの声。  ・・・リース?  俺は一気に目が覚めた。  瞼をあけたとき視界に飛び込んできたのは、寝るときは閉めているはずの、  今は開いているカーテン。  カーテンの外は夜明け前の独特な瑠璃色の空が見える。  月は・・・見えない。  そしてすぐ近くに、リースがいる。  「・・・起き・・!?」  俺は反射的にリースを抱きしめていた。  「タツヤ、苦しい」  「リース・・・リース」  久しぶりに帰ってきたリースを力一杯抱きしめる。  リースも俺の背中に手をそっとまわしてくれた。  「あー・・・感動の対面も良いのだがな?」  突然すぐ近くからリースの声が聞こえた。  リースは俺の腕の中にいるはず、なのに全く違う方向から聞こえてきた  リースの声。  いや、この声はリースであってリースではない。  声の聞こえた方に顔を向けるとそこにはリースと全く同じ格好の少女。  「フィアッカ?」  「ご名答」  「・・・これは夢?」  「現実逃避しない。したいのは私の方だ」  「よいしょっと、相変わらずこのスカートは装飾過多だな」  フィアッカはそう言うと椅子に座った。  俺はベットに腰掛け、リースは俺の腕の中に抱かれている。  「いったい、どういうことなんだ?」  「わからない」  「そう、わからないのだよ」  リースとフィアッカはそろってそう答えた。  「新たな遺跡が見つかって調査にでたのだが、そこで何かの装置が   作動してしまったようなのだ。」  「気付いたときは、二人」  「だいじょうぶなのか?」  俺が真っ先に思ったのはそのことだった。  融合した二人が別れる事は以前のあの事件を否応なしに思い出させる。  「その点はだいじょうぶだろう。私もリースもしっかり存在してるからな」  「遺跡の方は?」  「フィアッカ様が封印してきた」  「これ以上ややこしくしたくないのでな」  「そっか」  俺は身体から力が抜けるのがわかった。  異常な状態を目の前にして緊張してたようだ。  「タツヤ?」  「あぁ、なんでもない。」  改めて俺の腕の中のリースを見る。  そしてフィアッカを見る。  「・・・双子みたいだ」  「そうだな、その手で行こう」  「?」  「教団にいるとやっかいなので、朝霧の家に世話になろうかと思ってるのだが」  「俺は構わないけど・・・説明が大変そうだな」  「察しが悪いな。だから双子の姉妹なのだよ?」    「フィアッカ・マルグリッド・ノエルです、いつも姉がお世話になってます」  「姉?」  「フィアッカさ・・・」  「なに? リースリット姉様?」  「・・・なんでもない」  「リースちゃんに妹がいたんだー、そっくりだね」  「フィアッカちゃんっていうのね。よろしくね」  「いつも姉がお世話になってます」  朝食の席で俺は帰ってきたリースとその姉であるフィアッカを紹介する  手はずになっていたのだが・・・  「リース、なんでフィアッカが妹なんだ?」  「・・・わからない」  「達哉君、リースちゃんに妹がいたのなんで教えてくれなかったの?」  「ごめん、俺も知らなかったから」  「ワタシも」  「え?」  ・・・  「聞き違いかしら?」  「とにかく、朝食にしようか?」  「それじゃぁ、リースちゃんとフィアッカちゃんの分すぐつくるね」  「あ、私も手伝うわね」  「お姉ちゃん、ありがと」  キッチンの奥に二人が行ったのを見計らって・・・  「フィアッカ?」  「何?」  「なんでフィアッカが妹なんだ?」  「その方が面白そうだからな」  「・・・」  「・・・」  俺とリースはそろってため息をついていた。  午前中、カレンさんが姉さんに会いに来た。  「突然お邪魔してすみません・・・リース??」  「・・・カレン」  二人の間に火花が散る・・・ように見えるのは俺だけだろうな。  その火花はカレンさんの驚きの顔に変わったとき見えなくなった。  そう、いつものようにソファで俺の足の間に抱きかかえられてる  リースと、その横で本を読んでいるフィアッカ。  二人もいるのだから、驚きも2倍だろうな。  「おのれ、リース。私を惑わす気か?」  「・・・」  「リースリット姉様、あの方がカレンさんなんですね?」  「姉様?」  「・・・そう、カレン」  「達哉さん、これはどういうことですか?」  「どうもこうも、こういうことですよ」  説明するわけにもいかず、俺は言葉を濁した。  「そういえば、姉様の話のときはさやかのバックの中に」  そういってフィアッカはリビングに何故かあるさやかのバックの中をあけた。  「こんな風にラベンダーの下着が入ってたのですよね?」  そういってラベンダー色の下着を取り出す。  ・・・え?  「あっ・・・なんで?」  カレンさんは急に顔を真っ赤にして取り乱していた。  「さやか・・・また持っていったのね?」  お茶をもってきた姉さんは  「あら? そうだった・・・かしら?」  不思議そうな顔をしていた。  「確かに、リースリット姉様でも私でもぴったし、ね?」  「おのれ・・・フィアッカといったな。そこに直れ!」  その後の騒ぎは・・・思い出したくない。  「しかし、姉さんの酒癖の悪さには参るよなぁ」  「あれか? あれなら私が取り寄せておいた」  「フィアッカ様?」  「面白そうだったからな」  「・・・」  「・・・」  俺とリースは今日なんどめかの、ため息をそろってついていた。  午後、イタリアンズにリースがじゃれつかれてた。  「わぷっ」  「リースリットは人気者で良いな」  「・・・」  「どうした? 達哉。」  「いや、なんで俺の腕の中にいるのかなぁと思って」  「リースリットがここにいるのをみて気持ちよいのかどうか気になったから」  「・・・ま、いっか」  「よくない」  「リース?」  気がつくと俺の目の前にリースがいた。  イタリアンズにじゃれつかれてたため洋服に汚れや抜け毛がいっぱいまとわり  ついていた。  「フィアッカ様、そこは私の居場所」  「リースリットの居場所であるなら、私の居場所でもあるわけだ」  「・・・どいて」  「恐いな、どいておくか」  そう言って俺の間から抜け出たフィアッカと入れ違いに入ってくるリース。  入ってくるなり目を閉じて俺に身体を預けてくる。  そっと頭をなでながら、今リースがいる幸せに俺酔いしれてた。  夜、今日は左門に食べに行く日。  菜月も帰ってきていて久しぶりに家族が揃う夕食。  「リースちゃんが来ているので俺が腕によりをかけて作ったよ」  「僕の甘いスィーツで今日こそ美味しいって言わせるよ、子猫ちゃん達」  確かに、今日のまかないはまかないとは言えないほど豪華な作り、  二人して新作までだしてくる、気合いが入った物だった。  「どうだい? リースちゃん、フィアッカちゃん。今日の俺の料理は?」  「・・・悪くない」  「普通以上」  「相変わらずだな、でも気に入ってもらえて良かったよ」  「僕のデザートはどうだい?」  「・・・甘い」  「普通以上」  「むっ・・・」  おやっさんは満足まではいかないものの、手応えは感じたようだ。  仁さんは満足してはいないようだ。  「今度こそ美味しいって言わせてみせるスィーツをプレゼントするよ?   だからまた来てね、子猫ちゃん達」  「仁さん、なんだか言い方がいやらしいよ?」  「麻衣ちゃんも子猫ちゃんだよ? さやちゃんは子猫ちゃんって言うより・・・」  「あらあら、なんで私何なのかしら?」  ・・・さやか姉さん、顔は笑ってるけどあれは怒ってる。  「子猫ちゃんって言うには大人の魅力が出過ぎてるからね」  「モノは言いようね〜」  「My妹よ、もう少し良いフォローをしてくれるとありがたいんだが・・・」   夜。  リースとフィアッカが何処で寝るか一悶着があったのだが、気がつくと  俺の部屋に布団がひかれていた。  姉さんは一緒に寝れないことがすごく残念そうだった。  「おやすみ、リース、フィアッカ」  「おやすみ、タツヤ」  「おやすみなさい、達哉」  挨拶をしてそれぞれ布団に潜り込む・・・はずだったが。  「リース?」  リースは俺のベットに潜り込んできた。  そして俺の腕の中に収まった。  俺はそれ以上何も言わずにそっと抱きしめて、リースの頭をなでた。  その時背後に、フィアッカが潜り込んできた。  「フィアッカ?」  「背中くらいは良いだろう、リース?」  「・・・うん」  ・・・  俺は仰向けになり、左側にリース、右側にフィアッカを抱き寄せた。  「タツヤ?」  「達哉?」  「今日だけだからな」  「・・・うん」  「・・・ありがと」  俺は二人をそっと、力強く抱きしめた。  朝起きたとき、この場からいなくならないように願いながら・・・  目覚ましの音で目覚めた朝、最初に感じたのは喪失感。  「っ! リース? フィアッカ?」  「・・・タツヤ、うるさい」  「リース、リースはいるんだな?」  「・・・眠い」  俺の右腕の中にリースがいたが、左腕の中には誰もいなかった。  「フィアッカはどうしたんだ?」  「・・・苦しいな」  右腕の中のリースがそう答えた。  「フィアッカ?」  「どうやら戻ったようだな・・・」  「おい? どうした? 何か調子でも悪いのか?」  「簡単に説明するとだな、昨日の症状は位相の相違でおこった現象だった   ようだ」  言ってる意味は良く分からない。  「簡単に言えばだな、次元のずれで同時に存在できてただけでな、結局は   リースリットも私も同じ存在だったのだよ」  「??」  「それが今朝一つにもどったわけだが・・・ちょっと問題があってな」  問題?  「昨日1日2人で行動してたわけだが、全てがフィードバックされてな・・・   食べ過ぎて苦しい」  「・・・」  「そういうわけで私が眠る、リースリットに代わる」  そういって目を閉じたフィアッカ。その直後に目をあけたときはリースだった。  「フィアッカ様・・・ずるい」  「リース、だいじょうぶなのか?」  「お腹、苦しい・・・」  「それじゃぁ胃薬を」  「お兄ちゃん、リースちゃん、フィアッカちゃん、起きてる?」  ノックの音と共に麻衣の声が聞こえてきた。  「入るねー・・・ってどうしたの?」  「リースがちょっと食べ過ぎたっていって」  その時腕の中のリースが目を閉じて・・・  「昨日は激しかったから・・・」  そうつぶやいた。  「・・・おーにいちゃーん?、聞かせてもらえるかな?」  その後フィアッカが消えた理由と、朝の一言を説明するのに苦労したのは  言うまでもない・・・  フィアッカ、なんか俺に恨みでもあるのか?   「なぁに、ちょっとした嫉妬だよ」
3月14日  「申し訳ありません、フィーナ様。」  帰りの車の中で運転席のカレンはそう切り出してきた。  「カレンが悪いのではないわ」  そう言いながらも、私自身がいらついてるのがわかる。  公務での会談、思った以上に時間が押してしまったのがその理由。  ・・・違うわね、公務での会談が押してしまったため、今日の夕食を  みんなととれなかったのが原因ね。  スケジュールでは今日は夕方にはすべての公務が終わり、久しぶりに  左門さんのお店で夕食を共にする約束をしてた。  それに間に合わない所か、もう日付が変わってしまっている。  ミアは先に左門さんのお店に行くようにお願いしてある。  私が間に合わないことと、ミアまで公務に付き合わせる必要が無いからだ。  こういう約束は、姫という立場をしている以上間に合わないことが多い。  今までも沢山あった。  けど・・・  今日は帰えれると思ったのに・・・  「フィーナ様?」  「・・なに、カレン」  「今日はもう遅いですし、居住区の方に部屋を用意しました。   ミアには明日朝迎えをよこそうかと思います。」  「そう、ありがとう」  「いえ・・・」   どうやら帰れそうにもない。  いま、同じ惑星に達哉がいる。それだけでも嬉しいのに、今は同じ街に  達哉がいる。  なのに・・・会えない・・・。  ほんのちょっと顔を見るだけでもいいのに、それは無理な願い事。  「あまり遅い時間にお伺いするのは迷惑になります」とは、カレンの弁。  確かにそうだけど・・・  車はゆっくりと商店街を通っていく。  ・・・商店街?  私が疑問を口に出そうとした瞬間、見知った人が前の方に見えた。  「カレン、車を止めて」  「はっ」  車が止まりきるまえに私は外に飛び出していた。  「達哉!」  「フィーナ?」  そこには私の、求めてる人がいた。  「それではフィーナ様、明日朝お迎えに参ります」  「無理を言ってごめんなさいね、カレン」  「いえ、この程度はなんでもありません。   達哉さん、フィーナ様をお願いいたします」  「わかりました」  カレンは一礼すると車にのって居住区へ向かっていった。  「フィーナ、帰ろうか?」  「えぇ」  私は達哉と腕を組んで朝霧の家へ向かって歩き出した。  「しかし、驚いたな。こんな所でフィーナと会えるなんて」  「私もよ。達哉はこんな時間に何をしてたの?」  「なんだかさ、寝付けなくてさ、公園のほうまで歩きにいってたんだ」  「そうなの。でも良かったわ」  「なんで?」  「だって、達哉と会えたから」  達哉の顔が真っ赤になった、照れてる達哉は可愛い。  「それよりも、フィーナ。こんな遅くまでお疲れさま。」  「どうってことないわ」  たしかに、この程度なんでもない。だって、達哉にあえたのだから  今日の疲れなんて飛んでいってしまったもの。  「そっか、元気そうでなによりだよ」  「私を誰だと、お思い?」  「そうだな、フィーナだもんな」  「何か酷い言われような気がするんだけど?」  「おいおい、なんて答えればいいんだ?」  「答えは、態度で示せばいいのよ?」  そして私はそっと目を閉じた。  「ただいま、達哉」  「おかえり、フィーナ」  達哉の部屋でそう、挨拶する私たち。  そう、ここは私の帰ってこれる場所。月の王宮以外で私の帰りを待っていて  くれる人がいる場所。それはとても幸せなことよね。  私はそっとベットに腰掛ける。  「フィーナ?」  「なに?」  「今日はもう寝ようか?」  「久しぶりに会えたのですもの、時間がもったいないわ」  「でも・・・、いや、駄目だ」  「達哉?」  「調子わるそうだからな」  「・・・達哉にはお見通しなのね」  「出会った頃だと気付かなかっただろうな。でもな、これでも俺は   フィーナの婚約者だぜ?」  「・・・そう、ね」  婚約者という言葉に頬が火照るのがわかる。きっと達哉も同じだろう。  「機会ならまだあるさ、今日はもう寝よう。部屋まで送っていくよ。」  その言葉に火照った頬の熱を奪う。  せっかく会えた、同じ惑星の、同じ街の、同じ家の、同じ部屋にいるのに  別れるなんて・・・  「達哉・・・私、離れたくないわ」  「フィーナ・・・」  「今日はここに、泊めて・・・一緒がいいの」  「・・・俺も離れたくないから」  ドレス姿の私はこのままではベットに入れない。  着替えは自室に用意されてると思うけど、一時も離れたくない。  かといって一糸まとわぬ姿ではまだ寒い時期。  その時私の目に止まったのは、壁に掛かった達哉の洋服。  「達哉、着替えるから向こうに向いて」  「お、おぅ」  達哉が壁の方を向いたのを確認してから、私はドレスを脱ぎ捨てた。  ティアラはそっと机の上において、私はショーツだけの姿となる。  そして、壁に掛かっていた達哉のYシャツを羽織る。  ・・・達哉が普段きているYシャツ。それだけなのに、ぬくもりを感じる。  「おまたせ、達哉。それでは寝ましょう」  達哉はそっと、こちらを振り向いた時急に動きを止めた。  「このシャツ、借りるわね。・・・駄目だったかしら?」  着てしまってから駄目?と聞くのは順序が違うかもしれない。  今更ながらそのことにに気付いた。  やっぱりすこし疲れてるのかしら?  「あ、あぁ・・・構わない」  達哉はやっとの事でそれだけを言う。どうしたのかしら?  一緒の布団にはいる。私はそっと達哉の胸によりそう。  達哉も優しく抱き寄せてくれる。  激しく愛してくれるのもいいけど、そっと抱きしめてくれるのも気持ちいい。  何より私を安心させてくれる、この鼓動がすごく力強くて優しくて心地よい。  「・・・」  達哉が何かをしゃべったような気がした。  私は見上げる、そこに達哉がいる。  安心して目を閉じる。  達哉のぬくもりに抱かれながら、安らかな眠りに落ちていった・・・  微睡みの中、俺は大事な人のぬくもりに抱かれていた。  ずっとこの微睡みの中にいたい・・・  けど、起きなくてはいけない気がした。   そっと目を開けると、そこには愛しい人の、フィーナの顔があった。  「おはよう、達哉」  「・・・おはよう」  そう言えば昨日は一緒のベットに入ったんだっけ。  いつもと違って・・・いつもってわけじゃないけど、昨夜はただ  一緒に寝るだけの夜。そして、一緒に起きる朝。  「残念だけど、そろそろ起きないと」  「そうか・・・残念だ」  フィーナがくすっと笑った。  「正直ね」  そう言ってフィーナはベットから抜け出した。  そのフィーナの姿を見て、おれは微睡みから一気に目覚めた。  ボタンを全部はめてないため胸元があらわになっている。  そして、裾から見える健康的な足。  そう、Yシャツだけしか着ていないのだ。  「達哉のシャツは寝心地がいいわね、達哉につつまれてるみたい・・・」  俺は何も言えずにフィーナを見つめていた。  「達哉?」  「あ、あぁ・・・よかったら持っていくか?」  「いいの?」  「シャツくらいかわまない」  「ありがとう、達哉。これでどこでも夜は達哉といっしょね」  フィーナは嬉しそうにほほえむ。  「お兄ちゃん、朝だよー。起きてる?」  「麻衣?」  「起きてるんだね、入るよ?」  「ちょっとまった!」  という、俺の言葉はすでに遅し。  「・・・フィーナさん?」  麻衣は部屋に入るなり固まっていた。  「え? 姫様が来てるんですか?」  麻衣の言葉に反応してミアも部屋に入ってくる。  「姫様、来ているのなら一言言って下され・・・ば・・・」  ミアも固まった。  確かに、いるはずのない人がいきなりあんな格好でいるのは・・・  そりゃ驚くよな。なんとなくそう思った。  「麻衣、ミア、おはよう。それと、ただいま」  「・・・」  「・・・姫様! なんて格好を!」  「何かおかしくて?」  自分の格好を見てそう答えるフィーナ。  「誰かに見られたらどうするんですか?」  「誰かって、朝霧の家には家族しかいないわよ?」  「ですけど・・・」  「ミア、もう少ししたらカレンが迎えに来るわ。準備しましょう」  「あ、はい。それではお部屋の方で・・・」  「達哉、それでは朝食の席で」  「あぁ」  フィーナはミアに付き添われて部屋を出ていった。  「おーにーいーちゃーん?」  「麻衣?」  「フィーナさんにあんな格好させて・・・お兄ちゃんのえっち!!」  その麻衣の大きな声はつつぬけになり、あとでいろんな人から  あらぬ疑いをかけられたのは、後の話し・・・ ---  数日前に流行?したキーワード、裸Yシャツ。  そのころからなんとなくできていたお話を書いてみた思いつきSSでした。
3月8日  「誕生日おめでとう!」  「ありがとう、みんな」  今日は姉さんの誕生日、フィーナ達もお祝いに駆けつけてくれた。  公務で忙しいフィーナと、ちょっとの間だけでも会える機会をくれた  姉さんの誕生日に俺は感謝した。  「みんなプレゼントありがとう、嬉しいわ」  「大した物じゃないけどね」  俺はそう言うと、姉さんは  「ううん、そういうんじゃないの。その気持ちが嬉しいの。」  と、嬉しそうな顔をして話してくれた。  「レディースエンドジェントルメン! さぁ、今日のメインディッシュの   お出ましだよ! この僕特製誕生日ケーキ!!」  仁さんが厨房に戻ったとおもったらケーキの用意をしていたのか。  そういえば菜月の時は消えにくいローソクなんて用意してたっけ。  まさか今日も?  「ちっちっちっ、達也君。僕は同じ仕込みは2度しないんだよ?   まだまだ甘いなぁ」  「俺何もいってないですけど」  「キミの顔をみればわかるさ」  隣のフィーナがおかしそうに笑った。  俺、そんなにわかりやすそうな顔してたかな?  仁さんの持ってきてくれたケーキはとても美味しそうに出来ていた。  「あれ?」  麻衣が何かに気付いた。  「どうした?」  「これ、ローソクの数・・・」  「そうですね、仁さん。少ないのでは?」  ミアの言葉に仁さんは満足そうにうなずいて  「これが僕からのプレゼントだよ? さやちゃん」  姉さんの方をみると不思議そうな顔をしている。  「ほら、良く言うじゃないかい? 誕生日の時当年とって何歳って」  「え、えぇ・・・」  なんとなく、姉さんの周りの空気の気温が下がってきた気がした。  「だから、今日はそれにあやかってローソクの数、十年取ってみました!」  「・・・」  「・・・」  みんな仁さんの笑顔を見ている。仁さんだけ満足そうだ。  「どうだい? いつも若々しいさやちゃんのためにふぎゃっ!」  突然仁さんは背後から襲ってきたしゃもじの直撃を受けて沈む。  俺はまたかと思い、菜月の方を向いた。菜月と視線があったとき、菜月は  わたしじゃないよ? とジェスチャーしてきた。  確かに菜月の手にはまだしゃもじが握られている。  というか、なぜしゃもじもってるんだ?  いや、それよりも今のしゃもじはどこから襲ったんだ?  「やぁね、仁君。私は若々しいんじゃなくて、若いのよ?」  俺は姉さんの方を振り向いた。  いつものにこやかな笑顔で語る姉さん。  しかしその周囲の気温が恐ろしいほど低く感じた・・・  「ということはさやかさんは・・」  「ミアっ!」  「はい、姫様?」   「それ以上は駄目よ?」   「よくわかりませんけど、わかりました」  ミアの危険な発言はかろうじてフィーナに止められた。  凍った空気が砕け散ることはなかったようだ。  「こほん」  フィーナはわざとらしく咳払いをしてから立ち上がり、さやか姉さんに  言葉を贈り始めた。  「さやか、誕生日とは生まれた日を祝うものだけじゃないわ。   生まれてきてくれて、今日まで生きて来てくれたさやかに感謝する日でも   あるのよ」  みんながフィーナの言葉に耳を傾ける。周囲の気温はもう元に戻ってる。  「生まれてきてくれて、今日までこうして生きてくれたからこそ、私たちは   出会ったの。とてもすばらしいことだわ。その出会いをくれたさやかに、   おめでとうだけではなく、この言葉も贈るの。ありがとう」  「フィーナ様・・・」  「お姉ちゃん、ありがとう。私のお姉ちゃんでいてくれて」  「麻衣ちゃん・・・」  「さやかさんは私のお姉さんでもいてくれたものね、ありがとう」  「菜月ちゃん・・・」  「さやかさん、ありがとうございます。」  「ミアちゃん・・・」  「・・・ありがとう」  「リースちゃん・・・」  「そうだな、さやかちゃん。ありがとな」  「左門さん・・・」  俺は言葉がでてこなかった。  「ほら、達哉も。思った通りの言葉でいいのよ?」  俺はフィーナに背中を押されて、唯一言の言葉を贈った。  「姉さん、ありがとう。これからもよろしく」  「達哉君・・・うん、うん!」  涙を流しながらほほえむさやか姉さんの顔はとても綺麗だった。 ---  何日遅れになったんでしょうね(^^;  思いつきSS、さやか姉さんの誕生日です。  相変わらず危険なネタですけど、フィーナに救われました。  一つ後悔してるとしたら、このお話を誕生日に思いつかなかった  事でしょうか(T_T)  というわけで、思いつきSSでした。 ---  感動の中、仁は一人床に倒れていた。  「・・・誰も僕の事を気にしてくれないんだね、さみしいよ」  「おい、仁。いつまで寝てるんだ? 用意してあるのだしてこい」  「僕もあの感動の嵐の中に入りたいのに・・・」  「おい、仁?」  「ういっす」
3月7日  「なんでこうなったのかしら・・・」  そうつぶやく私の顔は困ってはいない。それどころか喜んでいる。  そんな顔していては舞えないわね、頬を両手ではさむようにはたく。  ぴしっ、という音と軽い痛みに心が引き締まる。  着ているワンピースを脱ぐ、普段はドレスを着ている私でも休みの  日くらいは軽装でいたい。  今ここにいる私は、月のアーシュライト家の王女、フィーナ・ファム・  アーシュライトではなく、朝霧の・・・婚約者が住む家に遊びに来ている  フィーナでしかないから。  達哉しかいないのだから、王女でいる必要はないものね。  「舞かぁ・・・、フィーナの舞は綺麗だったなぁ」  いつもの朝霧家のリビング、今日は公務のお休みの日。  朝から達哉と一緒にすごしている幸せな時間。  麻衣は学校へ、さやかは博物館に仕事に行っている、ミアはさやかへの  届け物で留守。そう・・・達哉と二人っきりの時間。  リビングでお茶をしながらのたわいもない雑談。  その話の中でお正月の舞の話しになったのは自然の流れかもしれない。  でも・・・  「もう一度みたいな、駄目かな?」  いけない、達哉を待たせては悪いわ。  思考を中断してクローゼットをあける。  練習用に持ってきてあった白い肌着と、緋色の袴。  ミアがカレンと一緒になって用意してくれた普通の巫女袴。  本番時は装飾などがついた物を着ることになる。  白衣に袖を通そうとしたとき、まだ下着を着たままだったことに気付いた。  着物というものは下着をつけないのが作法だったが、達哉を前にして何も  つけていない事は・・・恥ずかしい。  「作法だから・・・」  そう言い訳して下着を着ないことにした。  「お待たせ、達哉」  「フィーナ、遅かっ・・・」  達哉が私を見て急に言葉を失った。  「達哉?」  「あ・・・えと・・・お正月の時と違うな」  「えぇ、さすがにあの衣装は一人では着付けできないもの、だからこれは練習用」  「そ、そうか・・・」  そわそわしている達哉。こういうときの達哉ってわかりやすい。  「ねぇ、達哉。何か言うことはないのかしら?」  「あ、ごめん・・・その、すごく似合ってる」  「ふふっ、ありがとう」  真っ赤にしてる達哉の顔が可愛い。頬に熱を持ってきたのがわかる。  「それでは始めましょうか。今日は達哉のためだけに舞うわ」  庭にでてから、扇を手に持って構える。  音楽も舞台も何もない場所、だけど、達哉がいる。  達哉のいるこの場所は私にとって一番好きなところ。  そこで、舞う。  思いを込めて、優しく、ときには激しく。  達哉のことだけを考えて、達哉のために舞う。  この舞の本来の意味は私は良く分からない。  でも、達哉のために舞う事は、とても嬉しかった。  拍手の音にふと気がついた。  「すごかったよ、フィーナ。凛々しくて美しくて、可愛かった」  「あ、ありがとう、達哉」  舞っている時のことは良く覚えてない。けど、とても気持ちよかった。  「フィーナ?」  「なに?」  「だいじょうぶ?」  慌てて庭に駆けだしてくる達哉、なんでそんなに慌ててるのかしら?  それに達哉が少し大きく見える。  「何で心配してるの?」  「急に力が抜けたように座り込んだら心配するにきまってるだろ」  その時私は座り込んでいたことに気付いた。  「あれ? 私なんで座ってるの?」  「俺が声をかけたすぐ後に座り込んだんだよ」  自分でも知らない内に気が抜けていたのかしらね。  そう説明して立ち上がろうとしたとき、私の頬に冷たい雨の粒がおちてきた。  空を見上げると、先ほどまではれていたのにいまはどんよりとした雲に  覆われている。  そんなことにもきづかなかったことに驚いた私に、急にどしゃぶりの雨が  襲ってきた。  「フィーナ、中に早く!」  「えぇ・・・」  立ち上がろうとしたけど、足に力が入らない  「フィーナ?」  「達哉・・・立てないみたい」  「フィーナ、ごめん」  「え、きゃっ」  達哉は私を抱きかかえるとそのまま部屋の中に連れて行ってくれた。    「ごめんな、フィーナ。俺が無理させちゃったから」  「そんなこはないわ、普段ならあの程度どうってことないもの」  そう、練習やお正月の時は舞った後にあそこまで力が抜けたことはなかった。  「でも・・・」  「いいの。私が良いっていってるのだから・・・くしゅっ」  雨に濡れた着物を着ていたままの私の口からくしゃみがとびだした。  「とりあえずシャワーで身体を暖めて、フィーナ」  「えぇ、そうさせてもらうわ」  バスルームへ向かおうとするけど、上手く立ち上がれない。  身体にべったりはりついてる襦袢が思った以上に重い。  「ねぇ、達哉。バスルームまでエスコートしてくださらない?」  「え?」  「私に風邪をひかせるつもり?」  脱衣場で服を脱ごうとしても上手くいかない。  水をすった巫女服が身体にまとわりつく。  なんとか袴の帯をほどいたとき、突然足下が滑った。  「きゃっ!」  自分の作った水たまりで足をすべらせてしまったようだ。  その時脱衣場のドアがあいて達哉が飛び込んできた。  「どうした? だいじょうぶ・・・か?」  脱衣場に入ってくるかっこうのままで固まった達哉。  私は白い襦袢のみの姿でやはり固まっていた。  「ごめん」  「そうよね、不可抗力よね?」  「フィーナ・・・さん?」  「鍵をしなかった私も悪いけど・・・レディの着替えに飛び込むなんて」  「それは・・・フィーナが心配で」  そう言われると弱い、でも・・・  「心配してくれるのは嬉しいけど、その後は・・・その・・・」  「・・・そのさ、あまりに可愛くて我慢できなくて・・・」  「・・・」  「・・・」  「達哉、そういえば舞のご褒美もらってないわ」  「ご褒美?」  「えぇ、それで許してあげる」  「それで、何が欲しいの?」  「達哉・・・キスして」  その後、ミアに濡れた巫女服を発見され、さやかや麻衣にからかわれた  事は・・・語ることではないわね。 ---  思いつきSSシリーズ?  思い立ったまま書いてるのでプロットとかなにもなし(w  それでも書きたい方向に持っていくわけですけど、今回に限って  オチも途中経過も想像通りに行きませんでした(^^;  今回はオレンジエンペラーの水無瀬京さんのフィーナの絵を元に創作  してみました。本当は絵にある台詞も入れたかったのですけど、入れる  場所がありませんでした。  ちなみに没シーン。 ---  でも、達哉のために舞う事は、とても嬉しかった。  舞終わったとき、私の身体は酷く興奮していた。  襦袢にすれる敏感な所はうずき、内股につーっとたれるものも感じていた。  立っていられなくなった私はその場で砕けるように座り込んだ。  くちゅっと音がした。達哉にきこえてしまっただろうか? ---  えーこの先は、まぁ、こちらは没ですし。  それに本編でも・・・そういうことで(^^;
3月3日  「おねがい・・・私にいれて・・・」  「駄目ですっ!」  「ミア?」  「例え姫様であっても・・・それだけは駄目です!。   だって・・・私に入れてもらうんですからっ!」  「まぁ、ミアちゃんって大胆ね〜」  「さ、さやかさん。あぁ、私ったらなんてはしたないことを」  「そうだよ、ミアちゃん。お兄ちゃんは私に入れてもらうんだから」  「ちょっとまったー、麻衣。達哉は・・・達哉とは・・・   私が入れてもらうんだからっ!!」  「若いっていいわね〜、カレン。貴方は入れてもらわないの?   って、カレン。何むせてるの?」  「さやかが変なこと言うからです!」  「私、何か変なこと言ったかしら?」  「・・・」  「カレン、顔赤いわよ? 熱でもあるの?」  「いえ・・・おかまいなく・・・」  「リース、おぬしは良いのか?」  「・・・どうでもいい」  「折角なのだぞ? 入れてもらえばよいではないか?」  「・・・興味ない」  「それじゃぁ、私にいれてもらおうかの?」  「・・・」  「・・・」  「リース?」  「・・・なんでもない」  説明無く、会話のみで環境にやさしくない(w思いつきストーリーです。  水無瀬京さんの素敵なCGを紹介するときのタイトルから。  果たしてみんなどんな格好で言い合ってるのでしょうね?  そこは水無瀬さんにお任せするとして。  「私の出番無し?」  「お嬢さん、貴方はまだいいんだよ?」  「え?」  「僕達なんか、犬より低いんだよ?」  「えっと・・・」  「その僕達に俺も入ってるんですか?」  「もちろんだよ、さぁ、いっしょに悲しもうじゃないか?」  「何言ってるんだ、それよりも今日の仕込みまだじゃないか?   とっとと始めろ」  「うぃっす」
2月5日  ドアの前でいつものようにノックする。  「先生、小日向です」  「どうぞ〜」  返事を待ってから研究室の扉をあけて中にはいると  「小日向君」  「あれ、春姫もいたんだ。呼ばれたの?」  「ううん、ちょっと先生に聞きたいことがあったの。小日向君は?」  「先生に呼ばれて・・・それで、先生。俺に何の用事ですか?」  「その前に雄真君のお茶も煎れるわね。」  「雄真君を呼んだのはね、そろそろマジックワンドを作ろうかと思うの」  「小日向君、すごい! もう専用のマジックワンドを作ってもらえるのね!」  春姫が目を輝かせて喜んでいる。  俺には実感はないけど、今までの練習用のワンドではなく専用のワンドを  作るというのは、それなりに実力がついてからでないと駄目だそうだ。  「魔法服はもう決まってるから考えることはないわね」  「決まってましたっけ?」  「バスタオル1枚♪」  「え?」  先生の一言で春姫はあの時の事を思い出したのか顔を真っ赤にしてる。  俺もあの時のことを・・・思い出したくない。  「先生、冗談でしょ?」  「本気・・・って、やぁね、雄馬君。何も泣かなくても」  「いえ・・・」  「それでマジックワンドの件だけど、何か希望ある?」  マジックワンドは持ち主の大事な物から作るのが通常だそうで、春姫の  「ソプラノ」は春姫の昔もっていた管楽器をモチーフに作られている。  杏璃の「パエリア」は羽根ペンがモチーフらしいし、小雪先輩のタマちゃんは  ・・・  タマちゃんは・・・  なんなんだろう?  「小日向君、どうしたの?」  「あ、いや・・・世の中には不思議があるんだなぁって」  タマちゃん、残機制っていう話しだし・・・  「先生、俺はまだマジックワンドはいいです」  「そんな?」  驚く春姫を横目に先生は優しく話しかけてくれた。  「理由は、聞かせてもらえる?」  「はい。俺はまだ魔法使いっていう訳じゃないですし、いまだに魔法に対して   抵抗と恐怖があります。だから、本当の魔法使いになるまで専用のワンドは   いらないとおもいます。それに・・・」  「それに?」  この先を言うのはちょっと恥ずかしい・・・けど先生の眼を見てると話して  おいた方が良い気がする。  「それに、俺にはこの指輪がありますから。先生から・・・母さんからもらった   この指輪で今は充分です」  俺の顔は真っ赤になってるだろうなぁ・・・  なんとなく顔をそむけた先に春姫がいた。  なんか目がすごく輝いてるようにみえる・・・この目は伊吹のプリクラを見せた  時と同じくらい輝いてるような気がするのは気のせい?  「雄真君・・・」  あれ? 先生の声が変わった気が。もしかして・・・怒らせちゃった?  「先生・・・?」  「雄真君、可愛い!!」  え?  気がつくと先生の胸に抱きしめられていた、それもおもいっきり苦しいくらいに。  「もう、なんて可愛いんでしょ!」  なんだか先生が興奮して俺を抱きしめてる・・・苦しいんですけど。   「先生!!」  なんか遠くで春姫の悲鳴が聞こえる・・・  「雄馬君、今からでもいいから家に帰ってらっしゃい」  「その前に離して欲しいんですけど・・・」  やっとの重いで絞り出した俺の抗議は  「恥ずかしがらなくてもいいのよ?」  「恥ずかしがってないって・・・」  「先生、それは・・・やりすぎです!」  「あら、春姫ちゃん。やきもち?」  「ち・・ちがいます!」  その時ノックをする音が聞こえた。  「御薙鈴莉、ちょっと問いたいことがあるのだが、よいか?」  「いいわよ〜」  「おお、すまぬな。・・・何をしている?」  「何って、私の息子を愛してるのよ」  「愛して・・・って離せ、今すぐ小日向雄馬を離すのじゃ!」  「なんで? 私が産んだのだもの、いいじゃない」  「御薙鈴莉・・・おぬしは私から大事な物を2度も奪うというのか?」  「奪うも何も、秘宝は伊吹さんの物じゃなかったし、雄馬君は私の物だし」  ・・・俺は物ですか?  「・・・やはり御薙とは決着をつけないといけないらしいな。ビサイム!」  背中にしょっていたマジックワンド「ビサイム」を構える伊吹。  「おい、伊吹。何もこんな所で」  「小日向雄馬、御薙の味方をするのか? 私とは二世の誓いを・・・」  「わーわーわー!!」  まずい、この状況であのことがばれるのはまずい・・・  「小日向君・・・式守さんと何をしたのかしら?」  「まだなにもしてない!」  「神坂春姫、邪魔をするでない。小日向雄真と私はこれからなのだから」  「式守さん、例え貴方があいてでも、小日向君は渡さない!!」  「そうか・・・お主との決着もまだであったな」    「雄馬君?」  突然離れたところから先生の声が聞こえた。  いつのまに俺は解放されていたんだ? 先生の方を振り向くと・・・  「げっ」  いつのまに俺から離れて防御結界をひいていた。  「なんで先生だけ魔法の中なんですか?」  「雄真君も離れるか結界はらないと危険よ?」  ・・・楽しんでる、先生、絶対楽しんでる!  「ソプラノ、行くわよ! エル・アムダルト・・・」  「ビサイム! ア・ゲドル・マ・ザヴィア・・・」  俺は逃げようと思ったその時、突然視界いっぱいに広がった緑色の  物体の直撃を受けて・・・  気付いたときは保健室で寝ていた。  なんでも小雪先輩が二人を止めようとして放ったタマちゃんが  俺に直撃したらしい。  気を失った俺を見て春姫も伊吹も慌てたらしく、あの場は収まった  そうだが・・・  「式守さん、小日向君の看病は私がしますからお引き取り下さい!」  「何を言うのだ? 私は小日向雄馬に一生尽くしていくのだから   問題あるまい?」  「駄目ですっ! 小日向君は私が!!」  「雄真さん、もてますね〜」  「小雪先輩・・・なんで俺の頬をつねってるんですか?」  「愛情の裏返しです」  「・・・」  この後話を聞きつけてきた杏璃や準、すももとみんなで大騒ぎになり  俺達はまとめて保健室を追い出された。  ・・・俺、怪我人なんですけど? ・というわけで思いついたときが今書きどきの、SSシリーズ?  今回ははぴねす!からでした。
1月18日 「フィーナ、そんなに雪が珍しい?」  リビングの窓を開けて外を眺めていた私の横に達哉が並んだ。 「えぇ、月では雨だって珍しいのよ? 雪なんて降らないわ」  私は目線を外に向けたまま、そう答える。  満弦ヶ崎でも珍しい雪の日、その影響で飛行機がとばなくなり  今日予定してたスケジュールはすべて白紙になった。  正確には延期、今頃カレンがスケジュール調整で頭を痛めてるでしょうね。  カレンには申し訳ないけど、こうして達哉と過ごせる時間ができたのだから  雪には感謝しないと、ね。  「寒くない?」  「そうね・・・こうすれば大丈夫」  私は達哉にそっと寄り添った。  「フィーナ?」  「寒いのなら暖めてくださる?」  「姫様が望みますのなら」  そういって達哉は私の肩に手を回して、抱き寄せてくれる。  「達哉・・・」  「フィーナ・・・」  「くしゅっ」  「え?」  突然後ろから可愛いくしゃみが聞こえてきた。  朝霧家のリビングに、冬の間こたつが置かれている。  そのこたつに・・・  「リース?」  いつのまにかリースが入っていた。  「寒い・・・窓しめて」  「あ・・・ごめん」  慌てて窓を閉める達哉。  「リース、いつからそこに?」  「最初からいた」  私は顔が真っ赤になるのがわかった。  「それに、みんなそこにいる」  「え?」  リビングの入り口の扉の向こう側にさやかと麻衣、ミアの姿が  見え隠れしていた・・・  こたつを囲んでの家族の団らん。  それは心も暖める物だと、思ってたけど・・・  「あんまり雰囲気が良くて、こたつに入れないかとおもったよ」  「・・・」  「いくら婚約しても、時と場所は選んでね? 達哉君?」  「・・・はい」  「二人ともアツアツ・・」  「・・・」  麻衣やさやか姉さん、リースの会話は俺の顔を真っ赤にしていた。  隣でフィーナは小さくなってる。  こんな姿のフィーナも・・・可愛いな。  そう思った瞬間にフィーナが俺の方を見た。  目があった瞬間、二人で顔を真っ赤になったとおもう。  「あらあら・・・」  「私、冷たい飲み物入れてこようか?」  「あ、麻衣さん。私がいれてきましょうか?」  ミアまで・・・  こたつから逃げることもできず、俺達は話題が落ち着くまで  待つことになった。  こたつという文明機器を知ってから初めて、こたつが恨めしくなった  夜だった・・・ ・というわけで思いついたときが今書きどきの、SSです。  オーガストさんのハンドブックの雪のお話を見たとき思いつきました。  こたつって入っちゃうとなかなかでれませんよね?  そーゆーわけで、達也たちはなかなか解放されなかったのでありました。  今回のSSは書いてる内になんかストーリーが変わってしまいました(^^;  実は、こんなシーンがあったりしました。  書いてる内につなげられなくなったのですけど(^^; 折角なので掲載。  「雪、やんだみたいね」  フィーナが窓際まで出て夜空を見上げていた。  一糸まとわない姿は、とても綺麗で思わず見とれてしまう。  「寒くない?」  思わず場違いな質問をしてしまう。  「今まで熱かったから、ちょうど良いくらい・・・」  そう言ってほほえむフィーナの顔を見る。  その時フィーナが突然輝いたように見えた。  「あ、月が・・・」  フィーナは窓の外を見上げた。  雲の切れ間から月が覗いたようだ。その月明かりが雪に反射して  フィーナの身体を照らしている。  均整のとれたプロポーションに、長い透き通るような髪が、月明かりに  照らされている。  とても神々しく輝いている・・・綺麗なのに何故か切ない。  俺はとっさにフィーナを後ろから抱きしめた。  「達哉? どうしたの?」  「・・・」  俺は・・・フィーナがきえてしまうような幻想に襲われていた。  それほど今のフィーナの姿が神々しく見えたのかもしれない。  ベットに戻ってそのことを話すとフィーナは俺を頭を優しくその  胸に抱き留めてくれた。  「だいじょうぶよ、達哉。私は貴方と共に歩むことを決めたのだもの。   貴方をおいていくことはないわ。」  「フィーナ」  フィーナの微笑みは俺の幻想を消し去ってくれた。  「さぁ、今夜はもう寝ましょう。おやすみなさい、達哉」  「おやすみ、フィーナ・・」 ・オチも何もないお話でした。  思いつきで書いただけのことはありますね(^^;
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