思いつきSSログ保管庫
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雑記掲載SS保管庫 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory series ss「福引き」
6月6日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「フィーナ編」 6月8日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「翠編」 6月10日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「カレンさん編」 6月12日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「菜月編」 6月14日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「さやか編」 6月16日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「ミア編」 6月18日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「リース編」 6月20日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「麻衣編」 6月24日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 福引き「エステル編」 6月24日掲載 夜明け前より瑠璃色な sideshortstory「福引き編の楽屋裏で」
6月6日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(フィーナ編)  商店街でお買い物をしたら、サービスだっていわれて福引き券を頂いた。 「商店街の企画で、福引きができるんだよ」 「福引き?」 「あぁ、わかりやすく言うとくじ引きかな。いろいろと当たるんだよ。  たいてい参加賞しかもらえないけどね」 「面白そうね」 「折角だから福引きして行こうか」  担当の方に福引き券を渡す。  目の前に、とってのついた丸い機械。 「がんばれ、フィーナ」 「えぇ」  一度目を閉じて呼吸を整える。  そして達哉に言われたとおりゆっくりと機械を回す。  ガラッ  大きな音がして、そして一つの玉が機械から出てくる。  からんからん! 「おめでとー! 2等賞の温泉ペア宿泊券プレゼント!!」 「おめでとう、フィーナ。2等だって、すごいよ!」 「ありがとう、達哉」  目録をもらって家に帰ってきた。  部屋に戻り目録をあけると、近くの温泉宿で使えるペア宿泊券が入っていた。 「ふぅ・・・」  宿泊券を頂いたことは嬉しい、達哉と一緒にいけるといいのだけど  そうもいかないだろう。  2人しかいけないのであればミアをつれていけないし、何よりさやかや  麻衣もつれていけない。 「どうせなら、家族すべてを招待してくれればいいのにね」  この宿泊券、どうしようかしら・・・ 「それでは姫様、行ってまいります」 「フィーナ様、行ってきますね。」 「えぇ、たまには二人でのんびりしてきてちょうだい」 「では、行ってまいります」 「お土産買ってくるわね、楽しみにしててね」  そう言うとカレンとさやかは二人で温泉へ出かけていった。  宿泊券はいつも忙しいカレンにお休みと一緒にプレゼントした。  最初はあわてて受け取らなかったカレンだけど、達哉の説得が功を奏した。 「あのお願いは、ちょっとずるいわよ? 達哉」 「確かにそう思うけど、姉さんも休んで欲しかったし」  達哉の説得材料は、さやかだった。  お休みの少ないさやかの骨休めを手伝って欲しい、と達哉はカレンに  お願いしたのだった。 「でも、それを言うならフィーナだって」  さやかを連れ出すにはさやかにも休んでもらわないといけない。  だから私はさやかに有給を使わせるよう説得した。 「上に立つ物が使わないと、館員も使いづらいでしょう?」  ・・・ 「お互い不器用ね」 「あぁ、そうだな」  二人で笑い出してしまった。 「でも、ちょっと残念だったかしらね、達哉との温泉」 「あぁ、俺もそう思った。だからさ・・・」  達哉は私をそっと抱き寄せる。 「今度は俺がちゃんと招待するよ。そのときは一緒に行こうな」 「・・・うん、待ってる」
6月8日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(翠編) 「こんなものかな」  スーパーへの買い出しは久しぶり。  いつもはコンビニで済ませてしまう食材も、ちゃんと作るとなると  コンビニではよい物はそろわない。 「たまには私の実力、みせてあげないと忘れちゃうものね」  今度の週末、達哉君が遊びに来る時に、すっごいご馳走作っちゃうんだから!  からんからん  音のする方を見ると、そこには福引き所があった。 「残念、参加賞!」  誰かが引いた福引きは参加賞だったようだ。 「そういえば・・・」  買い物袋の中に福引き券があったっけ。  さっきの買い物でもらった福引き券、全然気にしてなかったけど  目の前に福引き所があるとやっぱり気になる。  福引き補助券は結構枚数があるので、2回くらいはできるかな?  数えてみる。  1回はできるけど、2回目には1枚補助券が足りなかった。 「・・・1回だけだけど、チャレンジしてみますか」  福引きの列に並ぶ、人は少ないのですぐに順番が回ってきた。 「・・・よし、一発必中!!」  力を込めて福引きの機械を回す。  からんからん! 「おめでとー! 2等賞の温泉ペア宿泊券プレゼント!!」 「え? まじ?」  目録をもらって家に帰ってきた。そして中身を確認してみる。 「温泉ペア宿泊券・・・」  ようするに、温泉旅館にペアでご招待されちゃう権利。 「・・・」  ・・・ 「誰か私を担ごうとしていない?」  ・・・ 「って、そんなわけないか」  にゃはは、と笑ってみる。 「・・・どうしよう?」  ペアで招待されちゃう宿泊券。  一番よいのは両親へのプレゼントだろう。  だが、世界中を飛び回ってる両親に、満弦ヶ崎で休める休みは  ほとんどない。  そうなると、私が行く事になる・・・よね?  ペアでいける訳だから、誰かを誘えるわけで・・・そうなると・・・  真っ先に浮かんできた顔は、達哉君の顔だった。 「わ、わわっ!」  あわてて浮かんできた顔をうち消す。  確かに恋人の達哉君と一緒に行くのが一番よいのだと思うけど、  ペア宿泊券ってことは同じ部屋に泊まるのだろうし、そうなると  温泉も混浴だろうし、そうなると・・・ 「・・・駄目駄目駄目、まだ恥ずかしいよ!」  ・・・少し頭冷やそうかな。  部屋の窓をあけて夜風に吹かれながら、ふと夜空を見上げる。  そこには月が浮かんでいる。  私の素敵なクラスメイトが、あの月で暮らしている。  フィーナと菜月と、達哉と楽しく過ごしたあの時のことは今でも  鮮明に思い出せる。 「・・・そっか、それがいいかも」  思いついてみれば簡単な話だった。  よし、早速確認してみようっと。  私はサイドテーブルにおいてあった携帯電話を手に取った。 「それではごゆっくり」 「ありがとうございます」  畳の部屋に通された私は荷物を放りだして寝ころんだ。 「んー、畳の感触気持ちいい!」 「こら、翠。荷物をちゃんとおいてからにしなさい」 「ん、もう、菜月はお堅いなぁ」  そう、この温泉の旅行の相手には菜月を誘った。 「でもさ、翠。私なんかでよかったの?」 「菜月ぃ、ここまで来てそれは無しだよ。菜月が良かったから誘ったんだから」 「でもさ・・・達哉を誘えば良かったんじゃない?」 「何度も言わせないの!」  ちゃんと座って菜月の方を向く。 「菜月とさ、ゆっくり話したいこと、いっぱい、いっぱいあるの。  だからつきあってもらったの。これは私のわがままなんだから、菜月」 「?」 「覚悟してね!」
6月10日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(カレンさん編) 「どうしようかしら・・・」  私は手に持った白い封筒を持て余していた。  小さな飾りが付いてるのし袋で、表に大きく書かれた「目録」の文字。  さやかと会った帰りに、商店街で買い物をしてもらった福引き券。  当たることはないけど・・・と思って軽い気持ちで引いたらあたった商品。 「温泉ペア宿泊券」  封筒の中に入ってる説明を改めて読む。  有効期限内に指定旅館に予約を入れることにより宿泊できるチケット。  現地までの往復は各自負担。  問題は・・・ 「この有効期限ね」  今日明日無くなる期限ではないが、大使館での仕事は多忙でありこの期限内に  連続した休みがあるかどうかはわからない。  いや、たぶん無いだろう。突発的に休みができることはあっても、事前に予約を  必要とするチケットは使えない。 「それに・・・」  ペアチケット。私は誘う相手の心当たりは一人しかいない。  その一人も多忙で連続した休みはなかなかとれないだろう。 「・・・ふぅ」  このチケットを無視してしまえば悩む必要もないのだろう。  だが、私が当ててしまった。  当てたかった人もいただろう、その人を差し置いて当ててしまった。  使わないのは礼儀に反する。  だけど、使うことが出来ない。 「こういうとき、孝行できる両親がいればよいのに・・・」  ・・・ 「・・・そうだわ。私にだって恩返ししたい方はいらっしゃる」  私は休めなくても、あの方のスケジュールの調整ならなんとかなるかもしれない。  よし、調べてみよう。なければなんとか理由をこじつけて機会をつくって  しまえばよい。 「・・・こじつけるだなんて、まるでセフィリア様やフィーナ様みたいだ」  でも、この考えた方不快ではない。  きっとセフィリア様もフィーナ様も賛同してくれることだろう。 「良い考えね、カレン」・・・と。  今は亡きセフィリア様のお顔と、月にいらっしゃるフィーナ様の顔を思い  浮かべながら、どう動けばプランが実行できるかシミュレートを始めた。 「しかし、驚いたな。」 「はい、モーリッツ様。」  駅のホーム、これから旅に出るのはモーリッツ様とエステル。  見送るのは私と達哉さん。 「教会の視察にしては、滞在期間が長いと思ってはいたが、まさかこんな  仕掛けがあるとは思わなかったよ、カレン」 「恐れ入ります」 「いや、責めてるわけじゃない。逆に感謝しないといけないな」 「いえ・・・モーリッツ様へのご恩を返すには足りないくらいです。」 「・・・私は何もしてないよ、カレン」 「そんなことはありません、モーリッツ様がいらっしゃったから今の  私がいるのです!」 「エステル・・・ありがとう」 「エステルさん、モーリッツさん。そろそろ電車が来る時間です」 「もうそんな時間?」 「すまないな、朝霧さん。エステルを借りてしまって」 「いえ、親孝行できるのなら、出来るときにしておいた方が絶対いいです」 「・・・ありがとう、朝霧さん」 「エステル、モーリッツ様を頼みます。それと・・・」 「カレン様?」 「親孝行、いっぱいしてきなさい」 「はいっ! カレン様も分まで親孝行してまいります!  達哉、見送りありがとう。お土産楽しみにしてて下さいね」 「うん、エステルさん、モーリッツさん、楽しんできてくださいね」 「はい!」 「ありがとう、では行ってきます」  ホームから出ていく電車を見送る。  モーリッツ様、私にはこれくらいしかできません。  もしかすると、エステルの親孝行が逆にモーリッツ様を苦しめるの  かもしれません。  ですが・・・  今だけでもモーリッツ様に安らぎと救いを・・・  そう願わずにはいられなかった。 「カレンさんって優しいんですね」 「た、達哉さん。何を?」 「本当はカレンさんがモーリッツさんに親孝行したかったんじゃないですか?  その機会をエステルさんに譲ってあげた。」 「・・・考えすぎですよ、達哉さん」 「そう言うことにしておきます」  私は達哉さん背を向ける。 「カレンさん?」 「帰りましょうか、達哉さんにはエステルがいない間の教会の掃除が  あるのですからね?」 「はい、わかってますって。ほこりが落ちてたらエステルさんに怒られますから」  ・・・不意打ちは卑怯です、達哉さん。
6月12日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(菜月編) 「・・・当たっちゃった」  今でも信じられないけど、私の手が持っている白い封筒。  表に目録と書かれてるこの封筒が、真実を物語っている。  そう・・・福引きで当たっちゃった。 「温泉ペア宿泊券」  大学での講義を終えて、自炊のための食材を買って帰るいつもと  同じ1日の夕暮れ。  この時期商店街で福引きが行われていて、1回ひけるだけの福引き補助券が  もらえて。 「どうせ残念賞のポケットティッシュだろうけど・・・」  それでもポケットティッシュはポケットティッシュ。  1個でも家計の節約にはなるだろう。 「節約できるところは節約しないと、ね」  軽い気持ちで回した機械から出てきた玉は、はずれの色ではなく・・・  からんからん 「おめでとう! 特別賞の温泉ペア宿泊券!」 「温泉へペアでご招待、かぁ・・・行くとしたらやっぱり達哉と・・・」  達哉と一緒に温泉旅館に行って、一緒に浴衣を着て、一緒にご飯を食べて  そして一緒に温泉に・・・入って・・・ 「そして一緒に寝て・・・でもきっと・・・」  ぼんっ! 「ってどうして私の考えはいつもそこにいきつくのっ!」  ・・・ 「と、とりあえずやることはしないと」  時計を見る、まだ時間はだいじょうぶだ。  達哉からかかってくる電話の時間になるまで、やることはたくさんある。 「まずはご飯を作らないとね、おなかすいちゃったし」 「ふぅ・・・暑い」  バスタオルだけをまいた姿でベットに腰掛ける。  そしてハンドタオルで髪の水分をそっとふき取る。  時計をみると、まだ時間はだいじょうぶ。  勉強する時間も充分ある。 「あ・・・」  そのとき机の上にある白い封筒が目に入った。 「・・・結局どうすればいいのかなぁ」  冷静になって考えれば、達哉と泊まりがけで旅行に行くのは難しい。  達哉のバイトのシフトは、土曜日は出勤だからだ。  学生であるいじょう平日は休みになることはない。 「連休はしばらくないし・・・」  お父さんにシフトの変更をお願いしてみようかな?  あ、でも達哉はそういうの嫌かもしれないし・・・  ・・・ 「・・・くちゅんっ」  そういえば、私まだ何も着てなかったっけ。  いくら気温が高くなってきたこの時期でも夜はまだ冷える。  風邪を引かないよう今日は暖かくして寝よう。  そのとき携帯のベルがなった。  私はあわてて携帯をとる、発信:朝霧達哉の文字。 「た、達哉? 今日は早いのね」 「早いって・・・いつもと同じ時間だぞ? 菜月」 「え?」  あわてて時計を見ると、いつもと同じ時間。  私ったらずっと考え込んでたの? 「菜月、だいじょうぶか? 疲れてないか?」 「だいじょうぶよ、達哉。心配しない・・・くちゅん」 「風邪か?」 「だいじょうぶだいじょうぶ。それよりも今日ね・・・」  達哉との電話の時間をいつものように楽しく過ごした。  いつもと違うのはお風呂上がりの格好のままだったこと。  それが原因で・・・ 「菜月の馬鹿」 「うぅ・・・」 「ちょっと着替える時間くらい俺は待てるぞ?」 「だってぇ・・・達哉との電話の時間減らしたくなかったんだもん」 「それで風邪をひいて寝込んでる訳だな?」 「うぅ・・・ごめんなさい」  バスタオルのままずっといたせいで湯冷めをして風邪を引いて  寝込んでしまった。  そのことを知った達哉は土曜の夜、バイトが終わってから飛ぶように  私の部屋まで来てくれた。 「でもさ・・・その気持ちは嬉しいよ、菜月。」 「達哉・・・」 「でも、それはそれ、これはこれ。」 「うぅ・・・反論できません。」 「とにかく今日は俺がずっと看てるからゆっくり休んで・・・風邪治そうな」 「うん・・・ありがとう、達哉」
6月14日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(さやか編) 「あら?」  受け皿に落ちてきたのは残念賞の赤い玉ではなく  からんからん  受付のおじさんがベルを大きく鳴らす。 「特別賞のペア温泉宿泊券、おめでとう!」 「あらあら?」 「というわけなの」 「すごい、お姉ちゃん!」 「姉さんそんなに運よかったっけ?」  その日の夜の食後のリビングで今日の報告。  達哉君が酷いことを言ってる気もしないでもないけど、私もそう  思っちゃうほど驚いた。 「それでね、この招待券なんだけど・・・」  満弦ヶ崎からちょっとだけ離れた保養地にある温泉旅館の招待券。 「ペアチケットだから、二人しかいけないの」  私の言葉に困った顔をする二人。  私たち家族は三人、招待されるのは二人。  どう考えても一人いけない人が出てきてしまう。 「あのさ、俺はいいから姉さんと麻衣とで行ってきたら?」 「ううん、私こそいいからお兄ちゃんとお姉ちゃんで行ってきたら  良いと思うよ!」 「ふふふっ」 「どうしたの?姉さん、急に笑い出して」 「予想通りだったから」  そう、きっとこの話をすれば達哉君も麻衣ちゃんも自分をのぞく二人で  行って来れば良いと言うと思ったから。 「俺達って単純なのかな?」 「でもお姉ちゃんは嬉しいわ。そんな二人が大好きだもの。だからね、  二人だけはだめなの。こういうのは家族で行かないと駄目だと思うの。」 「・・・俺もそう思う。やっぱり俺も温泉いきたいし」 「私も・・・実は行きたいかも」 「だから、このチケットは左門さんにあげようと思うの。」 「おやっさんに?」 「えぇ、もうすぐ父の日だし左門さんは私たちのお父さんだから」 「お姉ちゃん、それすっごく良いと思うよ!!」 「俺も良いと思う」 「よし、満場一致でこのチケットは左門さんへの父の日の贈り物に決定!」  達哉君と麻衣ちゃんがぱちぱちと拍手してくれた。 「それでね・・・達哉君、麻衣ちゃん。」 「なに、お姉ちゃん。」 「今度のお休みがあう日に、温泉行っちゃおうか!」 「・・・は?」 「・・・え?」  二人とも口をぽかんとあけて固まってる。  この反応も予想通り、っていったら怒られちゃうかな? 「姉さん、だって温泉のチケットは左門さんに・・・」 「そうよ? それは今みんなで決めたじゃない?」 「じゃぁ温泉って・・・」 「日帰りで温泉に、家族で行きましょうってこと」 「えぇ!」 「姉さん・・・いいの?」 「実はね、お姉ちゃんも温泉行きたかったの、だからみんなで行きましょう」 「お姉ちゃんありがとう!」  抱きついてくる麻衣ちゃん。  達哉君はちょっと難しそうな顔をしてる。 「だいじょうぶよ、達哉君。私結構稼いでるんだから」 「それはわかってるけど・・・」 「たまにはお姉ちゃんの顔も立てて、ね?」  難しい顔をしてた達哉君、ふぅと一息ついて 「・・・わかったよ、姉さん。」 「よしよし」  私は達哉君の頭をなでる。  達哉君は自分にも頼って欲しい、私だけが背負い込まないでしまわないで  欲しいと思ってる。 頼りないわけじゃないのよ? 達哉君。  達哉君は十分すぎるほど私を支えてくれてるんだから。  今回は感謝の気持ちを込めて私が招待するだけなんだからね、達哉君。
6月16日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(ミア編) 「はいよっ、ミアちゃん」 「ありがとうございます」 「おっと、忘れるところだった。ミアちゃん、これ」  そう言って手渡されたのは・・・何かのチケットみたいなもの。 「福引き券だよ。少しサービスしておいたから帰りにやっていくといいよ」 「はい、ありがとうございます」  でも、福引き券ってなんだろう? 「ミア」 「達哉さん!」  聞き慣れた優しい呼び声の方を向くと、学院帰りの達哉さんがいた。 「お帰りなさいませ、達哉さん」 「重そうだね、少し持とうか?」 「とんでもないっ! これくらいだいじょうぶです。」 「・・・ミアは俺に彼女にだけ荷物持ちさせる甲斐性のない男に  させたいのかい?」 「あ・・・あぅ」  酷いです、達哉さん。そう言われちゃうと・・・ 「はい、ミア。荷物貸して」 「は、はい・・・お願いします、達哉さん」 「福引き券か、もうそんな時期なんだなぁ」  達哉さんに八百屋さんでもらった福引き券の話をした。 「達哉さん、福引きって何でしょうか?」 「簡単に言えば当たりはずれのあるくじ、かな。」 「くじですか」 「説明するよりもやってみた方は早いよ、福引き所はすぐそこだから」  そういう達哉さんの向いてる先に、福引き所はあった。 「あの機械を回すんですね?」 「そう、福引き券の枚数だけあの機械を回すんだ。中から色の付いた玉が  でてきて、その色に応じた景品がもらえる仕組みになってるんだ。」 「面白そうですね」 「たいていは残念賞のポケットティッシュだけどね」 「商店街の商品券・・・あ、左門さんのお店のお食事券もあるんですね」 「そう言えば昔、菜月が当てたっけ・・・お食事券」 「菜月さん、すごいですね。特別賞ですよ?」 「まぁ、すごいことには変わりないけど・・・自宅のお食事券ってのもな」 「ミア、福引きやってきたら?」 「え? いいんですか?」 「良いも何も、福引き券はあるんだから」 「これはさやかさんに渡そうと思ったのですけど」 「姉さんは難しいな。福引き所があいてる時間に帰ってこれないだろうから」 「それでは達哉さん、お願いします」 「俺は運ないからなぁ。だからミアがやるといいよ」 「私だって運なんてないですよ?」 「いいからいいから、何事も経験だからさ」  そう言うと私の背中を押して福引き所に。  達哉さんったら・・・ちょっと強引です。 「はい、3回どうぞ」 「これを3回回せばいいんですね?」 「そうだよ、可愛いお嬢ちゃん!」 「では・・・行きます!」  からんからん  1回回して出てきたのは赤い玉。  からんからん  2回目も赤い玉。赤い色は残念賞のポケットティッシュ。  3回目もたぶん同じ色かな?」  からんからん  3回目は・・・赤くない。 「銀色?」  からんからん! 「おめでとう、温泉ペア宿泊ご招待券当たりだよ!」 「えぇ?」  その日の夜の食卓ではこの話で持ちきりだった。 「ミアちゃん、すごいわね〜」 「ミアちゃんの運にあやかりたいよ」 「はぁ・・・」  温泉への宿泊券は確かに嬉しい、でも。 「問題はペア宿泊券、2名様までなんだよな」  そうなんです、この招待券は2名しかいけないのです。  私たち家族は4人。どうしても数が合いません。 「ミアちゃんが行けばいいじゃない?」 「そんな、私なんか・・・」 「当てたのはミアちゃんなんだから、1人目はミアちゃんに決定ね」 「さやかさん・・・」 「そうなるともう一人は・・・もちろん、お兄ちゃんだよね」 「でも、ご迷惑になるのでは?」 「そんなことはないよ、ミア。俺は嬉しいよ」 「達哉さん・・・」 「ミア、一緒に行こうか!」 「はい!」 「熱いわね、麻衣ちゃん」 「ほんと、熱いですね、お姉ちゃん」 「はぅ・・・」 「姉さんも麻衣もからかわないで、ミアが真っ赤になってるじゃないか!」 「あらあら、真っ赤になってるのは達哉君もよ?」 「あははー、お兄ちゃんも真っ赤」 「う・・・」
6月18日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(リース編)  からんからん  商店街を歩いてると聞き慣れない音が聞こえてきた。  音の方を見てみると、普段あいていないお店があいていて、人が  まるい機械をまわしていた。 「・・・」  ただ、それだけの光景。  ・・・のはずだった。 「リースちゃん、つーかまえたっ!」 「わっ」  突然後ろから抱き留められた。  こういうことをする人は一人しかいない。 「さやか?」 「はい、さやかお姉ちゃんですよ〜、リースちゃんこんにちは」 「・・・こんにちは」 「リースちゃん福引きしたいの?」 「別に」 「そっかぁ、ちょうどお姉ちゃん福引き券持ってるの。  一緒にやってみようか」 「・・・興味ない」 「まぁまぁ、そう言わないで、よいしょっと」 「わわ」  私はそのまま抱かれたまま持ち上げられた。  そして福引きのする所へ連れて行かれた。 「可愛いお嬢ちゃんだね」 「えぇ、私の自慢の家族なのよ」  ・・・家族といわれるのは嫌じゃない。 「はい、リースちゃん。2回ゆっくりまわしてね」 「・・・」  こうなるとさやかは私がまわすまで私を手放さない。  仕方がないので2回まわす。  からん・・・ 「・・・」  出てきたのは赤い色の小さな玉。 「リースちゃん、もう一回チャンスあるわ。ふぁいとっ!」 「・・・」  からん・・・ 「・・・」 「あら?」  出てきたのは銀色の玉だった。  からんからん!  機械を回す音ではなく、ベルが鳴らす音。 「おめでとう! 温泉ペア宿泊券当たりだよ!」 「すごいわね、リースちゃん。当たりよ!」 「・・・興味ない」 「というわけなのよ〜」 「リースちゃん、運が良かったんだね」 「すごいな、リース」  夜。さやかにつれられたまま朝霧の家にいる。  朝霧の家での私の定位置、達哉が座るソファーの、達哉の腕の中。  いつも優しく撫でてくれる達哉は嫌いじゃない。 「でも困ったのよね、これってペア宿泊券なのよ」 「ペアってことは二人しかいけないんだよね?」 「そうなのよね、私たち家族は4人でしょ?」 「・・・」  家族4人、その中に私がいるのは不思議。  でも悪くない。この感じは嫌いじゃない。 「あのさ、姉さん。一つ提案なんだけどさ」 「なに、達哉君」 「折角だから4人みんなでいかない?」 「お兄ちゃん、2人しか招待されないんだよ?」 「だから、後の二人は、俺とリースは自費で行くからさ」 「・・・?」 「そうすれば4人一緒にいける。」 「でも達哉君? 宿泊するとなると結構かかるわよ?」 「俺はバイトしてるし、少しだけど貯金もあるからだいじょうぶさ」 「それはいざって言うときのための貯金でしょ?」 「そうだよ? お兄ちゃん。私はいいからリースちゃんと一緒に  行って来ればいいよ?}  達哉がふぅ、と一息つく。頭の上がくすぐったい。 「いざっていう時だからこそ、使うんだ。今がそのときだから」 「でも・・・」 「これは家族崩壊の危機だから、いざっていう時だ」 「え?」 「ほえ?」 「・・・」  温泉の問題がなんで家族崩壊?  さやかも麻衣も不思議そうな顔をしている。 「せっかくの温泉招待券、でもいけるのは2人。残るのも2人。  つまり・・・4人が分かれるから崩壊」 「・・・お兄ちゃん、無理ありすぎだよ?」 「いいんだよ、崩壊の危機だからこそ俺の貯金を使うんだから」 「・・・くすっ、達哉君ありがとう」  さやかがソファの後ろから達哉を抱きしめた。 「そうね、崩壊の危機だから達哉君に頼っちゃおうかな?」 「あぁ、任せておいて。」 「麻衣ちゃんもこっちに」  麻衣もさやかと同じように達哉に抱きついてくる。 「こんな暖かい家族が分かれちゃうのはやっぱり崩壊の危機ですものね。  だから今回は達哉君に頼って崩壊の危機から脱出します!。  みんなで、温泉行きましょうね!」 「お兄ちゃんありがとう!」 「それじゃぁスケジュールを決めましょうね。  私はいつがお休みだったかしら?」 「連休だと俺のバイトも休みになるからそのときにあわせられると助かる」 「私もそれでだいじょうぶだよ!」 「リースちゃんは・・・」  ・・・ 「いつでもいいわよね? 決まったら絶対きてね。」 「・・・わかんない」 「駄目だよ、リースちゃん。来てくれないとお兄ちゃんが救ってくれた  家族が崩壊しちゃう危機になっちゃうんだからね?」 「・・・ずるい」 「よし、リースちゃんの承諾もとれたことだし」 「した覚えは無い」 「次の連休休めるようにがんばらなくっちゃ!」 ---  ・・・ふぅ、リースは眠ったか。  それでは、起きるとしようか。  さやかの部屋から抜け出した私は、そのまま達哉の部屋へ行く。  ドアをノックする。 「どうぞ」 「失礼する」 「・・・フィアッカか?」 「ご名答、今宵は礼を言いに来た。」 「礼?」 「あぁ、温泉に招待してくれた礼だ。」 「別にお礼を言われることじゃないよ、家族だからな」 「・・・そうだったな」  タツヤとはそういう人物であったな。 「しかし、傑作だったな。家族崩壊の物語」 「・・・う」 「確かに家族崩壊だな」 「・・・そうでも言わないとみんなでいけなかっただろう?」 「あぁ、タツヤにしては上出来・・・いや傑作だな」  思わず笑ってしまう。 「笑うことはないだろう?」 「すねるな、タツヤ。一世一代の晴れ舞台だったぞ?」 「・・・」  いかん、少しからかいすぎたか? 「それでは今日は寝るとするか。私も楽しみにしてるからな」 「あ、あぁ・・・」 「おやすみ、タツヤ」 「あぁ、お休み」  温泉旅館にいる間、少しは私も楽しむとするか。  ただ・・・さやかにだけは注意しないと。  あれだけは・・・  リースが気を失ったあのときの、さやかにつれられていった  お風呂場でのあれは・・・  もう思い出したくなかった。
6月20日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(麻衣編) 「よいしょっと」  手に持った買い物袋を持ち直す。  今日の夜ご飯は家で食べる日、学院の帰りに商店街でいつものように  お買い物。 「・・・いつものように、ってのは嘘かな」  買い物袋の中に新製品のアイスがあるからいつもとちょっと違うお買い物。  そして、いつもと違う物はもう一つ。 「福引きかぁ・・・私って当たったためしないんだよね」  福引き所の順番に並びながら景品を眺める。  一等や二等はまず無理、せめて4等の醤油でも当たれば家計が少し助かるかな、  と思いつつもやっぱり良い物が当たって欲しいな、と本音では思う。  順番が来て係りの人に今日もらった補助券を渡す。  当たって砕けろ、かな?  そうして福引きの機械をまわす。  からんからん、と中に入ってるたくさんの玉が回る音。  そしてその中から出てきたのは・・・  からんからん。 「おめでとう、温泉ペア宿泊券当たりだよ!」 「・・・え?」 「温泉宿泊券・・・」  家について、ソファに座って手に持ってる白い封筒を見る。  目録、と書かれてるその封筒の中には温泉への招待券が入っている。 「お兄ちゃんといきたいな・・・でも」  この宿泊招待券はペアのもの、つまり二人しかいけない。  お兄ちゃんとなら人数的に問題ないけど、お姉ちゃんがいけなくなっちゃう。  この話をお姉ちゃんにするときっと 「達哉君と二人で行って来るといいわよ」って言うに決まってる。  そう言ってくれるならお兄ちゃんと一緒に温泉にいける・・・けど 「それって私の勝手な思いこみだよ・・・」  お兄ちゃんといけるのはすごく嬉しいけど、お姉ちゃんをお留守番にするのは嫌。  でも2人しかいけない招待券。  私とお姉ちゃんとで行くとなるとお兄ちゃんがお留守番。  ・・・そんなのもっと嫌。  お兄ちゃんとお姉ちゃんに行ってもらう。 「・・・」  いつも家を、私たちを支えてくれるお姉ちゃんと、私を救ってくれた  お兄ちゃんに少ししか出来ないけど恩返しを・・・ 「うん、それが一番だよね!」  そうしよう、それがきっと一番だから・・・ 「・・・いけない、そろそろ準備しないと」  夜ご飯の準備を始めないといけない時間になっていた。  この話はこれでおしまい、後で食事の時に発表して驚かせようっと。  でも・・・ 「一緒に行きたかったかなぁ・・・」 「すごいじゃないか、麻衣」 「本当ね〜」  食事の後の団らんの時間、温泉ペア宿泊券を当てた事をお話した。 「でもね、ペア宿泊券なの。だから」 「達哉君と二人で行って来るといいわよ、お姉ちゃんはお留守番してるから」 「ううん、お姉ちゃんとお兄ちゃんに行ってもらおうと思うの。」 「え?」  驚いた表情のお兄ちゃんとお姉ちゃん。 「いつもお世話になってるだけの私からのほんのささやかな恩返しです」  笑いながら・・・ちゃんと笑えてるかな?  恩返しは本当だけど、お兄ちゃんといけないのはやっぱり寂しい。 「・・・麻衣」 「なに? お兄ちゃん」 「・・・ふぅ」  私の顔を見て、あきらめたようなため息をつくお兄ちゃん。 「姉さん、一つ提案があるんだけど」 「何かしら?」 「このペア宿泊券、姉さんとカレンさんで行って来ない?」 「カレンと?」 「お世話になってる恩返し、という意味なら俺より姉さんとカレンさんに  行ってもらうと良いと思うんだ。姉さん、カレンさんに迷惑かけること  あるし」 「私はそんなにカレンに迷惑かけてないわよ?」 「・・・姉さん?」 「・・・」 「・・・」 「・・・うぅ」 「実際カレンさんの休みがあうかどうかはわからないけど聞いてみてよ」 「でもそうなると達哉君と麻衣ちゃんが・・・」 「姉さんが温泉に行く日に俺は麻衣とデートする」 「・・・え、えぇ!」  突然デートのお誘い? いきなり? 「ふぅ、わかったわ。お姉ちゃんはふられちゃったのね」 「べ、別にそんなわけじゃないけど・・・」 「麻衣ちゃん、この宿泊券はもらってもいいのかしら?」  私は首を縦に振ることしかできなかった。  温泉に誰が行くかなんてもう気になってなかった。  それよりもお兄ちゃんとデートに行く事の方で頭の中がいっぱいだった。 「ありがとう、麻衣ちゃん。でも、今度は家族みんなで行きましょうね」 「お兄ちゃん・・・起きてる?」  夜、寝る前にお兄ちゃんの部屋の扉をたたいていた。 「そろそろ来る頃だと思ったよ、どうぞ」 「失礼します・・・」 「それでどんな用事・・・って聞くまでもないか」 「うん」  私はベットの上に座っているお兄ちゃんの横に座る。 「俺は、麻衣と一緒に温泉には行きたかった」 「私もお兄ちゃんと一緒に行きたかった」 「でも今回は一緒にいけない、なら一緒にいかなければいいだけなんだよ」 「お兄ちゃん・・・」 「温泉は無理だけどデートには一緒に行けるから、今回はそれで我慢、な?」 「ううん、我慢なんてする必要ないよ! お兄ちゃんと出かけられるなら  どこだっていいんだもん!」  やっぱりお兄ちゃんはすごい。私が悩んでた事が馬鹿みたいに思えてきた。  ううん、やっぱり私は馬鹿だったのかな。  ちゃんとお兄ちゃんに相談してみれば良かったんだ。 「・・・えへ、お兄ちゃん。デート楽しみだね」 「まだいつ行くと決まった訳じゃないぞ?」 「うん、でも楽しみ」 「そうか・・・一緒に楽しもうな」 「うん! ありがとう、お兄ちゃん!」
6月24日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き」(エステル編)  からんからん 「達哉、あれがそうですか?」 「そうですよ、やっていきましょう」  いつものように礼拝堂の掃除を終えた後、商店街への買い物に  達哉につきあってもらったときのこと。  食材や雑誌を買ったときにサービス券らしきものをもらった。 「これは福引き券っていうんですよ」 「福を引く券?」 「簡単に言えばくじ引きですよ、サービスの」  商店街で買い物をするように勧誘するための定期的に行われる  サービスの一種らしい。  私みたいに基本的に月人居住区内で買い物を済ませる人まで  サービスする必要は無いとは思うのですけど 「これも地球の文化の一つですよ、せっかくだからやっていきましょう」  達哉にそう言われて、福引き所までやってきた。  前の人が挑戦してるときに達哉がやり方をおしえてくれた。  持っている福引き券の枚数だけ、あの丸い機械を回せること。  中にたくさん小さな玉が入っていて、出てきた玉の色により景品が  もらえること。そしてほとんどが残念賞という、はずれだろいうこと。  そして、今手持ちの福引き券では2回できること。 「はい、2回だよ、お嬢ちゃん!」  受付の人に福引き券を渡して、私はそっと機械を回す。  からんからん、という音と共に出てきた玉の色は赤。 「・・・」  今度は少し気合いを入れて回してみる。  からんからん、という音と共に出てきた玉の色は・・・ 「はい、6等2本、ポケットティッシュ2個だよ」 「・・・」  礼拝堂への帰り道の土手の上の道。 「福引きっていったって、ただのくじだから、運が無かっただけですよ」 「運がないですって?」 「いや、その・・たまたまですよ、たまたま・・・」 「私に運がない訳なんてないんです!」 「え、エステルさん?」 「確かに地球に上らされて一番遠い教会に派遣されたことや、そもそも  それに付随するいろんな事がらは運がないって言われればそうかも  しれません、でも私はかけがえのない人たちに会えた。  モーリッツ様やカレン様、地球ではフィーナ様にもお会いできた。  そして何より達哉・・・貴方と出会えた。  この幸運を運といわずして何て言うのですか?」 「・・・」  達哉が顔を真っ赤にしてる、どうかしたのでしょうか? 「・・・」 「・・・あ」  わ、私ったら何を今言ったのでしょうか?  達哉と会えた幸運? それって、その・・・ 「た、達哉さん、今のは言葉のあや、という物です。だからその本気で  ってわけじゃなくって・・いえ、その本当の気持ちなんですけど、その」 「・・・」 「今の言葉忘れてください!」 「・・・はい、絶対忘れませんから」 「達哉、話聞いてましたか?」 「忘れて欲しいっていうのは表向きで、本当は忘れないで欲しいんでしょう?」  達哉・・・なんで私の本当の気持ちは達哉に伝わってしまうのでしょう?  いつも私のことを見てくれてるから?  いつも私のことを思ってくれてるから? 「そ、それよりも早く礼拝堂へ戻りましょう。美味しい紅茶をご馳走します」 「それは楽しみです、早く戻りましょう!」  そう言って私より先に歩き出す達哉。  いつもなら達哉を追い越して先に歩く私だけど・・・  今日は、貴方の大きな背中を見ながら歩いてもよいですか?  礼拝堂に戻ったらあのリーフを使って紅茶を淹れよう。  その前に・・・感謝しないと。  私と達哉に出会わせてくれた事に・・・
6月24日 ・夜明け前より瑠璃色な sideshortstory 「福引き編の楽屋裏で」  場所はトラットリア左門。  左門さんや仁さんが腕を振るって作られた料理がテーブルの上に  並んでいる、そこに集まるのは色とりどりの少女達。  若干少女と呼ぶには・・・ さやか「ナレーションさん、何か言いたそうね?」  ・・・いえ、なんでもありません(汗) 始めて下さい。 さやか「それではみんなグラスは持ってるわね?」 フィーナ「だいじょうぶよ、さやか」 麻衣「こっちもおっけーだよ、お姉ちゃん」 さやか「それでは、無事お話を終えたということで打ち上げです。     かんばーい!」 一同「かんぱーい!」 翠「いやぁ、いつ食べても左門さんの料理って美味しいよね〜」 菜月「だからってあんまり食べ過ぎるとちょっと心配になっちゃうのよね」 翠「え? あー、私だいじょうぶ、太りにくい体質だから」 菜月「・・・」 フィーナ「・・・うらやましい」 ミア「姫様、何か仰いました?」 フィーナ「いえ、何でもないわ。それよりも左門さんや達哉はどこに      いるのかしら?」 ミア「おかしいですね、準備の段階まではいたのですが・・・」 さやか「どこにいったのかしら・・・あら? リースちゃん、それはなに?」 リース「読めって言ってわたされた、だから読む。     ・・・男性陣は華にならないので退室しています。」 フィーナ「そんなこと無いのに。達哉にはいて欲しかったのだけど・・・」 カレン「エステル、そんなに端によってどうしたんですか?」 エステル「いえ・・・その、こういう場所には不慣れな物で」 カレン「確かに不慣れでしょう、でも慣れておいて損はないですよ?     気心の知れた人しかいないのだから」 エステル「気心の知れた・・・って。フィーナ様は別格です!」 カレン「フィーナ様は確かに月の王女であらせられる、けどその肩書きは     ここでは使われてないわ」 エステル「でも・・・」 カレン「エステル、郷には入れば郷に従えと言う言葉、知っていますよね」 エステル「はい」 カレン「そんなに肩肘張らないで、今くらい楽しみましょう」 麻衣「・・・」 菜月「どうしたの、麻衣?」 麻衣「・・・うぅ、今思い返すと私の話だけなんかアダルトっぽかったって    ちょっとはずかしくなっちゃって」 菜月「・・・それ言うなら、私なんかお風呂上がりのシーンあったよ?」 麻衣「菜月ちゃんの場合は別にそれだけでしょ?」 菜月「別にって、それって結構恥ずかしいんだけど・・・」 麻衣「私はあの夜お兄ちゃんの部屋で・・・」 フィーナ「・・・」 さやか「・・・」 ミア「・・・」 翠「・・・」 エステル「・・・」 麻衣「えっと、なんでみんなそんなに静かなのかなぁ?」 フィーナ「気にしないで麻衣、話を続けてちょうだい」 麻衣「出来るわけないじゃないですかー」 翠「まぁ、麻衣のお話が若干優遇されてたのはわかるわね。」 さやか「さすが八月最強の義妹っていう呼び名があるくらいですものね」 菜月「最強の義妹かぁ、私も妹っていえば妹だけど、兄さんが・・・はぁ」 エステル「あら、リース。どこに行くの?」 リース「・・・」 エステル「リース?」 ?????「気にするな、少し裏方の仕事をするだけだ」 エステル「・・・貴方?」 フィアッカ「今回の趣旨を今更ながら公開する。       とある方が言った、書けないときでも書けるようにしておいた       方がよい、という言葉の実戦が今回の福引き編を始めたきっかけだ。       そして以下のルールが存在する。」      ・福引きをテーマに全ヒロインをメインにしたSSSを書く。      ・メインヒロインの物語の後日談にする。つまりメインヒロインと       結ばれてる状態である。      ・順番はランダム、リクエストがあった場合のみ優先する。      ・基本的に2日に1回公開。 ミア「でも最後だけ4日間あいてしまいましたね」 麻衣「それは、お兄ちゃんが書ける状態じゃなかったからどうしようもないよ」 フィアッカ「私的には不本意だが、カレンの話があったのはリクエストがあった       からだそうだ。よかったな、リクエストが1通だけあって」 カレン「別に私は出番が欲しかった訳ではありません。     ですが・・・貴方に言われると釈然としないのですが」 フィアッカ「カレンとの物語が無いので、カレンの時はエステルの物語を       ベースにして書かれている、それ故にエステルは最後に回された。       それが悲劇・・・いや、喜劇の始まりなのかもしれない。       基本ルールの項目の最後にこういう物がある。」      ・最後のヒロインはオチ(笑) エステル「・・・」 ミア「し、司祭さま?」 エステル「納得行かないです、地球に上らされてこの扱いですか!!」 フィーナ「あら、でも司祭様もまんざらではなかったのでは?」 エステル「フィーナ様?」 フィーナ「達哉と出会えた運に感謝してらしたものね」 エステル「っ!」 麻衣「ですよねー、お義姉さま?」 エステル「っ!!」 カレン「貴方の負けね、エステル」 翠「そういえば、エステルさん以外がみんな温泉当ててたけど、必ずしも   当てた人がいったわけじゃないんだよね。・・・私は行ったけど」 エステル「そこはかとなく悪意を感じるのは気のせいでしょうか?」 翠「まぁまぁ」 リース「・・・」 さやか「リースちゃん、何はってるの?」 リース「はってくれって頼まれた」  さやか&カレン(フィーナ編)  翠&菜月(翠編)  エステル&モーリッツ(カレン編)  不明(菜月編)  左門&仁(さやか編)  ミア&達哉(ミア編)  達哉・麻衣・さやか・リース(リース編)  さやか&カレン(麻衣編)  はずれ(笑)(エステル編) エステル「はずれ(笑)の笑ってなんですか!!」 翠「まぁまぁ、美味しいオチ担当なんだから」 エステル「美味しくなんてありません!!」 フィーナ「こうしてみると、達哉は意外に行ってないのね」 麻衣「お兄ちゃんと二人っきりでいけたのはミアちゃんだけだね」 ミア「えっと、その・・・はぅぅ」 さやか「家族全員で行ったのはリースちゃんとの時だけね」 菜月「なにげにカレンさん、さやかさんと2回行ってるね」 カレン「それは成り行きですから」 フィーナ「別に責めてるわけじゃないわカレン。・・・私は一回も行ってないけど」 カレン「・・・」 麻衣「そういえば、温泉でのお話も読みたいっていうリクエストあったけど    どうなるんだろう?」 翠「難しいんじゃない? 行った人の組み合わせがあれだし・・・」 さやか「書くとしたら今回の福引きの話と別になるんじゃないしら?」 菜月「意外に作品そのものも変わってたりして・・・なんてね」 フィーナ「・・・あり得るあたりが笑えないわね」 菜月「・・・やっぱり?(汗)」 さやか「そろそろ料理も食べ終わったことだし、解散にしましょうか?」 フィーナ「そうね、夜も遅い事だし」 麻衣「後かたづけはどうするの?」 菜月「だいじょーぶ、兄さんの担当だから」 カレン「それでは夜分遅くまで失礼致しました」 エステル「今日はお誘い、ありがとうございました。」 フィーナ「二人とも気をつけて帰ってね」 カレン「はい。 エステル、行きましょうか」 エステル「はい、それでは失礼致します」 菜月「翠はどうする? 折角だから止まってく?」 翠「んー、それも悪くないかな。よーし、今日は朝まで語り尽くそう!」 菜月「ほどほどにね」 フィーナ「さやか、麻衣、ミア。そろそろ戻りましょうか?」 ミア「はい、姫様。菜月さん、マスターと仁さんによろしくお伝え下さい」 菜月「おっけー!」 麻衣「ごちそうさまでしたー!」 さやか「ごちそうさま。それじゃぁみんな、お休みなさい」  その後の左門。 仁「なぁ、達哉君。結局本当のオチは僕たちじゃないのかい?」 達哉「・・・」 仁「達哉君はまだいいじゃないか、本編に出番あったのだから。   僕なんか楽屋裏のおまけにきてやっと初登場だよ?」 達哉「・・・」 仁「この扱いの差をどこに訴えればいいんだ!」 左門「仁、早くかたづけないと寝れなくなるぞ?」 仁「・・・」 達哉「そういうことです、過ぎたことだからもう忘れましょう」 仁「・・・誰か僕を主役にした作品、書いてくれないだろうか?」
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