SSログ保管庫〜楽屋裏狂想曲・人気投票編〜
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雑記掲載SS保管庫  FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票編〜」
3月22日・23日掲載 「楽屋裏狂想曲〜人気投票編〜」告知編 4月10日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票1日目〜」中間発表1日目編 4月11日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票2日目〜」中間発表2日目編 4月12日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票3日目〜」中間発表3日目編 4月13日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票4日目〜」中間発表4日目編 4月14日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票5日目〜」中間発表5日目編 4月15日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票6日目〜」中間発表6日目編 4月16日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票7日目〜」中間発表7日目編 4月17日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票8日目〜」 4月18日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票9日目〜」 4月22日 「楽屋裏狂想曲〜人気投票結果発表編〜」 4月23日 楽屋裏狂想曲人気投票編「陽菜の一番」 4月23日 楽屋裏狂想曲人気投票編「陽菜の一番」未公開版 4月24日 楽屋裏狂想曲人気投票編「瑛里華が1番」
3月22日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票編〜」 「・・・というわけだそうだ」 「人気投票、か・・・」  会長の説明はそのまんまだった。  出演者で人気投票が行われるということ。  期間は4月の半ば、10日間かけて行うこと。  投票は1位と2位に投票し、2点・1点がそれぞれカウントする。  投票資格は、学院生も含め、投票したい人すべてに与えられるが  1日1回のみ。  そして・・・ 「俺たちが投票対象であると同時に投票者でもあるわけですね」 「そういうこと、支倉君は飲み込みが早いね」  飲み込みが早いというのは関係ない気がする。 「まぁ、支倉君以上に飲み込みが早すぎる人もいるようだけどね」  会長が見る先には・・・ 「ふ、ふふふっ、これはチャンスね」 「え、瑛里華?」 「この人気投票で私は紅瀬さんに勝つわ、今度こそ1位を手に入れるわ!」 「それは数学の話じゃなかったっけ?」 「だからね、孝平」 「なに?」  俺は白ちゃんが用意してくれたお茶を飲みながら返事をする。 「あたしに入れてね!」 「ぶっ」 「ちょ、ちょっとなに吹いてるのよ、汚いじゃない!」  瑛里華に言い方に思わず吹き出してしまった。 「瑛里華が変なこというからだって」 「変なことなんて言ってないわよ? 私は孝平にいれてほしいって・・・」 「だからその言い方やめろ」 「ははーん」  会長がすがすがしい笑いを浮かべる。  ・・・俺にはいやな笑い方に見えるけど。 「支倉君、君は投票者でもあるのだよ。だから誰に投票するのも君に自由さ」  急にまじめに解説する会長。  そしてなぜか監督生室の窓を開ける東儀先輩。 「だから、支倉君。俺にい・れ・て♪」 「気色悪い言い方するなっ!!」  瑛里華の一撃で会長は星になった・・・っていうか、東儀先輩これを  見越してたな。 「・・・無様ね、千堂さん」 「なにかしら、紅瀬さん?」  今までパソコンとにらめっこしてた紅瀬さんが瑛里華を挑発する。  ・・・って何で挑発してるの? 「あなたがいくらアピールしようとも支倉君がだれにいれるかは支倉君の  自由意志よ」 「そうだけど・・・」 「自信ないの?」 「そ、そんなことないわ。だって支倉君・・・孝平は本編で私にあれだけ  なんどもいれてくれたのだから・・・」 「ぶっ!」  俺はまたもやお茶を吹き出した。本編って・・・ 「確かに、本編では貴方が一番入れてもらえたようね。でもここは楽屋裏。  番外編なのよ?」  ・・・あの、紅瀬さん?  話がだんだんややこしくなってきたような気がする。 「そういう意味では私だって、支倉君に・・・その・・・なんども・・・」  顔を真っ赤にして声が小さくなっていく紅瀬さん。 「そ、そういえば東儀先輩は参加されるんですか?」  俺は話を逸らそうと、東儀先輩に話しかける。 「興味はない・・・と言いたいところだが、俺は白に投票するだろう」 「あ、ありがとうございます、兄様」  会長が星になったのを目撃して小さくふるえてた白ちゃんがにぱっと  笑顔になる。  うん、やっぱり白ちゃんは笑顔が一番だな。 「白はどうするつもりだ?」 「私ですか? 私はやっぱり支倉先輩に・・・あっ、ゆきまるにも投票  できるんですよね? 私、わたし・・・」 「白、自分でよく考えるんだぞ」 「はい、兄様。まだ開始まで日があるのでよく考えます」 「それで、支倉はどうする?」  東儀先輩のこの一言で、そらそうとした話題があっさり帰ってきてしまった。 「ちょっとまったぁっ!!」 「お、お姉ちゃん。大声ださないでよ」  陽菜の制止を無視?して監督生室に入ってきたかなでさん。 「こーへーは優しいお姉さんにいれるのが決まってるのだよ!」  ・・・こうなることを予想して俺はお茶を飲むのをやめていた。 「お姉ちゃん、そんなことを大声で言わないでよ、恥ずかしい・・・」 「え? なんで恥ずかしいの? こーへーが私にいれるだけだよ?」 「だからぁ・・・」 「えりりんにきりきり、いれてもらった回数なら私だって負けないよ?  こーへーの好みだって知り尽くしてるし、エプロンだってしたんだから♪」 「孝平・・・」 「支倉くん・・・」  あぁ、瑛里華と桐葉の目が怖い。 「それに、お約束の王道の、ブルマとスク水でもいれちゃったんだから!」 「っ!」  真っ赤になる陽菜。 「あ、水着なら私も・・・」  白ちゃんの言葉に部屋の一角が凍り付いた気がした。  俺は怖くてそちらを見ることができない。 「でも、それならメイド服だったのは私だけ、かな?」  ・・・陽菜さん、状況を悪化させないでくださいませんか? 「なら答えは簡単だな」 「母様!?」  いきなり監督生室に現れたのは伽耶さんだった。 「皆は一度でもいれてもらったのだろう? なら今回は遠慮するがよい。  まだ一度もいれてもらってない私が優先されるのがすじ、というものだろう?」  いきなり現れてなにをいうんですか、伽耶さん! 「そんなのたとえ母様でもだめ! 孝平は私にいれるの!」 「千堂さん? 支倉君は支倉君の意志で私にいれるとおもうわよ?」 「えりりんもきりきりも違うよ、こーへーはお姉ちゃんの私にいれるに  決まってるよ!」 「・・・孝平君、できれば私にいれてほしいな・・・中でいいから」 「支倉先輩・・・私にはいれてくれないのかな?」  俺はこのやりとりから逃げ出したくなった。  そっと部屋を出ようとしたのだが。 「あら、孝平、どこに行くのかしら?」  ・・・瑛里華にあっさりつかまった。 「孝平?」  と、微笑む瑛里華。ちなみに目は笑ってません・・・ 「支倉君?」 と、まるで捨てないでと言わんばかりの顔をしてる桐葉。 「支倉先輩?」と、信じてますオーラ全開の白ちゃん。 「こーへー?」と、ちょっと不安そうな顔をしてるかなでさん。 「孝平君?」 と、私だけを見てほしいっていう顔の陽菜。 「誰にいれるの?」 --- おまけ、其の壱 「ねぇ、八幡平君は人気投票どうするの?」 「興味無いっす。それよりもお嬢は?」 「・・・いいのよ、本編で名前がでなかった私は」 「・・・」 おまけ、其の弐 「天池先生、今回の企画は・・・」 「えぇ、かまいませんわ、青砥先生。ふふふっ」 「天池先生?」 「私だってまだまだ現役で通じるんですもの、負けませんわよ?」 「・・・程々にしておきましょうよ、天池先生」 「あら、いやですわ青砥先生、ちょっとした軽い冗談ですわよ。  ふふふっ」 「・・・」 おまけ、其の参 「・・・」  ・・・ 「・・・」  ・・・  雪丸は眠っているようだ。それ以前に理解してるかどうか。 --- ・SS紹介感想感謝&さらにおまけ  M-A-T別館 ふみぃさん  宇宙の星の片隅から 朝霧玲一さん  柳の風まかせ ブタベストさん  まったり空間 マクさん  雑記さいと FiRSTRoN Faxiaさん 瑛里華:先日の楽屋裏協奏曲〜人気投票編〜の紹介や感想     ありがとうございましたm(_ _)m 白  :みなさん、本当にありがとうございますm(_ _)m 桐葉 :この人たちは誰に投票するのかしらね? 瑛里華:・・・ 白  :えと・・・どうなんでしょうね? 桐葉 :みんながみんなの自由意志で投票するわけだから、     恨みなしよ?、千堂さん。 瑛里華:な、なんで私が恨むのよ? 桐葉 :・・・なんとなく、かしら 瑛里華:わ、わたしがそんなことするわけないじゃない。     だって、エレガントに・・・ 桐葉 :朝霧さんに指摘されるまで忘れてたくせに?     おねだりなんてはしたない。 瑛里華:っ! それを言うならマクさんのところで姑息な手段使ってるじゃない! 桐葉 :姑息? 瑛里華:えぇ、眼鏡かけて好感度あげようだなんてしてるじゃない。 桐葉 :・・・あぁ、向こう側の私がした事ね。     別に好感度をあげようとしたわけじゃないわ、ただ私の順位を下げて     支倉君と並べるようにしただけよ。 白  :支倉先輩の隣・・・いいなぁ、私も隣がいいです。 瑛里華:ちょっと、白まで・・・ 桐葉 :でも5人が上位を独占するのは予想されてるでしょう?     支倉君が私たちの中に食い込むのは不可能。     なら、私の順位を下げるしかないじゃない。 瑛里華:あの・・・紅瀬さん? それ本気で言ってる? 桐葉 :えぇ 瑛里華:ブタベストさんが描いてくれた絵をを見ると絶対に     逆効果だと思うんだけど・・・ かなで:ちょっとまったぁ! 白  :ひゃぁっ! 陽菜 :お姉ちゃん、また大声出しながら乗り込まないでよ。 かなで:私たちをおいて昨日の続きを始めるなんてえりりん、この策略者! 瑛里華:策略者って・・・ かなで:それにね、ブタベストさんは私に投票してくれるって     もう決まってるんだから。 瑛里華:な、なにを根拠に・・・ かなで:ふっ、私が根拠なしに断言なんてすると思う? 陽菜 :違うの? かなで:・・・おほん、根拠はこれこれだぁ! 白  :わぁ、かなで先輩のお話ですね。 かなで:そうなのだ、えっへん。うらやましいでしょう? 桐葉 :・・・悠木さん、この話が前提だと、序盤は順位が低いってことよね かなで:え゛? 陽菜 :あ、確かに序盤は低くないと逆転って事にはならないものね。 瑛里華:それまでに上位が逃げ切ったら逆転もなにもないわよね かなで:・・・ 陽菜 :だ、だいじょうぶだよお姉ちゃん。     ふみぃさんも投票してくれるよ、きっと。 かなで:バナーみるとひなちゃんへの投票はいいとして、美術部部長や     雪丸にまで投票してる・・・これじゃ票数が分散しちゃうよ。 白  :雪丸に投票してくださるんですか? ありがとうございます! 桐葉 :意外に美術部部長も票を集めそうね、マクさんも投票するでしょうし かなで:うぅ、確かに特典テレカの絵も少なかったけど・・・ 陽菜 :大丈夫だよ、お姉ちゃん。みんなきっとわかってくれると思うよ。 かなで:ひなちゃん・・・私にはひなちゃんだけで十分だよ! 陽菜 :泣かないで、お姉ちゃん 白  :美しい姉妹愛です、感動しました! 瑛里華:・・・ 瑛里華:後は無党派層をどう取り込むかよね。     朝霧さんやFaxiaさんが誰に投票するのかしらね。 桐葉 :朝霧さんは投票しないって言ってるわね。 瑛里華:せっかく投票権があるのにもったいないわ。     それに、できれば関わってくれたみんなに楽しんで参加してほしいし。 白  :それは大丈夫ですよ、瑛里華先輩 瑛里華:白? 白  :きっとみなさん、楽しんでくれますよ。 瑛里華:そう、よね。楽しんでもらえるよう私たちもがんばらなくっちゃね! 白  :はい、がんばりましょう♪ 桐葉 :・・・え? これを読むの?     このお話はフィクションであり、登場する人物名、団体名等は     オーガスト様に著作権があります。     また、登場してもらった管理人のみなさまには・・・ 瑛里華:どうしたの、紅瀬さん。 桐葉 :許可。 瑛里華:え? 桐葉 :とってないって。 瑛里華:・・・ 桐葉 :・・・ふぅ、もし問題があるようでしたらこのエントリー自体を     削除しますので、ご連絡くださいm(_ _)m かなで:あ、あと登場人物はすべて18歳以上でーす! 白  :あれ? 私は今年後期課程に入ったばかりだから 瑛里華:白! 白  :ひゃぅ! 瑛里華:登場人物はみんな18歳以上なの、わかった? 白  :は、はい・・・ 陽菜 :あ、あははは・・・
4月10日  『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票1日目〜」 「孝平、結果出た?」  曰く付きで始まった学院での人気投票。その初日の結果がついさっき  発表された。  俺は代表してその結果を確認しに行ってきたところだ。 「あぁ、これだよ」  結果が書かれてるプリントを机の上に置く。  瑛里華が一番にそのプリントを見る。 「ふふっ、やっぱり私が1番なのね。この調子で紅瀬さんに大差つけて  優勝よ!」 「・・・」  紅瀬さんは特に反応しなかった。 「紅瀬さん、この勝負もらったわ!」 「・・・別に結果には興味ないもの」 「悔しい?」 「別に・・・」 「あ、私は3位なんですね。私なんかが3位に入ってていいのでしょうか?」 「白の事を思って投票してくれたのだろう、だから自信を持ちなさい」 「はい、兄様」 「そういえば、伊織はどこに行った?」 「伊織先輩ならアピールしてくると言われてお出かけになりました」 「仕事を終わらせてからにして欲しかったのだがな・・・」 「陽菜が2位か・・・人気者だな」 「そうそう、さすがは私のヨメ! それよりもこーへー!」 「・・・あの、かなでさん。いつからそこにいたんですか?」 「そんなことよりもこーへー、私6位だよ?」  結果の書かれたプリントを見ると、確かにかなでさんは6位だった。 「なんで? メインヒロインなのに、サブヒロインに抜かれてるの?  納得いかなーい!!」 「お姉ちゃん、落ち着いて」 「うー、これは陰謀だっ! 私がなんであんなロリに負けなくちゃ  いけないんだ!」 「・・・ロリで悪かったな」  いつの間にか伽耶さんが部屋にきていた。 「かなでとやら、人のことを言う前に自分も鏡を見てみるべきだと思うぞ?」 「私、出るところ出てるもん、引っ込むところ引っ込んでるもん。  ねぇ、そうだよね、こーへー?」 「・・・なんでそこで俺に話題を振るんですか?」 「だって、こーへーは私にいれてくれたんでしょ? 全てをあげちゃったし」  部屋中で息を飲む音が聞こえる。 「そうね、私は順位なんて気にならないし結果なんてどうでもいいわ。  私が気になるとしたら・・・支倉君が誰に入れたか、かしらね」 「そ、そうよね・・・私が1位なのは当たり前だけど支倉君がだれに  いれたかよね?」 「・・・」  なんか、前と同じ展開になってきた気がする。 「先輩、先輩は誰にいれたのでしょうか?」 「もちろんお姉ちゃんにいれたんだよね、こーへー?」 「孝平君・・・」 「・・・黙秘権は?」 「ダメ」  みんなの声がはもる。 「・・・ほら、今は個人情報が保護される時代だし」 「孝平?」 「支倉君?」 「先輩!」 「こーへー!」 「孝平君・・・」 「誰にいれたの?」
4月11日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票2日目〜」  監督生室での生徒会の作業中。  瑛里華は落ち着かない様子で仕事をしていた。 「もうそろそろかしらね?」 「・・・」  俺はあえて返事をせず、目の前の仕事をこなす。 「むぅ・・・」 「・・・」 「ねぇ、孝平?」 「今は仕事中ですよ、副会長」 「そうね、支倉君の言う通りよ」 「ちょっと、紅瀬さんまで孝平の味方をするの?」 「味方も何も、今は生徒会の仕事をこなすほうが先ではないかしら?」  紅瀬さんの言ってることが正しいということがわかっているから  瑛里華は何も言い返せなかった・・・ 「そ、それじゃぁ兄さんはどうなのよ?」 「瑛里華、伊織をあてにする方が問題だぞ?」 「征一郎さん、その発言の方が問題だと思うのですけど・・・」 「・・・そういえば、会長は何処に行ってるんですか?」 「あ、伊織先輩なら講堂で講演されてます」  そんなスケジュールあったっけ? 「ねぇ、白。それってやっぱり?」 「はい・・・瑛里華先輩が思われてる通りだと思います」 「会長にも仕事するように言ってくれませんか? 副会長」 「私が言って聞くと思う?」 「・・・さぁ、目の前の仕事が終わったら休憩にするか」 「さりげなく現実逃避してるわね、孝平・・・」  バンッ!  扉が大きく開かれる、そこに居たのは 「ビックニュースだよ、こーへー!」 「・・・かなでさん、監督生室は作りが古いから静かに入室して」 「そんなことより、今日の結果見た? すんごいよっ!」 「悠木先輩、結果出たんですか?」 「ふっふっふっ、えりりんの栄光の時代はもう終わったのだ!  これからは悠木姉妹の時代がきたのだ!!」 「え?」 「私のヨメが1位独占なのだ!」  そう言うと結果が書かれたプリントを俺に渡してくれた。 「ちょっと見せて!」  ・・・瑛里華に奪われた。 「そ、そんな・・・」  プリントを見てすぐ、瑛里華は力が抜けたように椅子に座り込んでしまった。 「あら、千堂さんは順位が下がってるわね」  紅瀬さんは面白そうにプリントを眺めている。 「こ・・・こんなところに強敵がいただなんて・・・」 「プリント貸して」  俺はやっと順位の書かれたプリントを手に取ってみる。  1位に陽菜の名前がかかれており、瑛里華は2位に転落していた。 「へぇ、陽菜が1位か・・・あれ? そう言えば陽菜は?」  昨日はかなでさんと一緒に来た陽菜が今日はいない。 「ひなちゃん? ひなちゃんならね、恥ずかしがって部屋に戻っちゃった」  陽菜らしいなぁ。 「ね、こーへー。私も5位に上がったんだよ! ロリには負けないんだから!」  かなでさん曰くロリの伽耶さんは今日はまだ監督生室には来ていない。  思わず安堵のため息をついてしまう。 「これもきっとこーへーが私とひなちゃんにいれてくれたからだよね」  かなでさんのその言葉に、部屋の中にいる女性全ての視線が俺に向かったのが  わかった。  見えてないけど瑛里華の視線が一番恐いんですけど・・・ 「ありがと、こーへー。この調子で私やひなちゃんにどんどんいれてね。  ひなちゃんは中でもいいって言ってたし、私も・・・」 「孝平!」 「はいっ!」  かなでさんの言葉を遮るように瑛里華が俺の名前を呼ぶ。  その迫力に思わずすぐ返事をしたが、瑛里華の方を振り向く勇気は無い。 「今日も、私にいれてくれるのよね? 昨日悠木先輩に入れたという話は  無いわよね?」 「誰に投票したかは、終日ノーコメントです」 「それじゃぁ、今日は私にいれて、いますぐここで!」 「千堂さん・・・見られるのが好きなのかしら?」 「そ、そうなんですか?瑛里華先輩」  部屋の端での会話にツッコミを入れたかったが、俺はそれどころでは無い。  気のせいか、瑛里華の瞳が紅く光ってるような気がする。 「孝平、今日は私に、いれて!」
4月12日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票3日目〜」  土曜日は授業が休みで、学院の動きが緩やかになる日。  生徒会の仕事も増えることは無いのだが、たまってしまった仕事を  片づけて置かないと来週大変な事になるのが目に見えている。  特に週末は人気投票が始まりいろいろとごたごたして仕事が遅れ気味。 「別に逃げ込んだ訳じゃないぞ?」  ・・・誰もいない監督生室の午後、俺は一人でたまってしまった  仕事をこなしていた。  生徒会のメンバーも居ない、一人だけの監督生室。 「・・・静かだな」 「そうね、静かね。そんな静かな部屋で孝平は一人で何をしてるのかしら?」  扉を開けて入ってきたのは副会長、瑛里華だった。 「何って、仕事だけど」 「見ればわかるわ、私は孝平が一人で仕事をしてる理由を聞きたいの」 「遅れてるからだけど?」 「なら、なんで私たち・・・私を誘わないの?」 「デートの誘いじゃあるまいし、休みの日に仕事に誘うのは良くないだろう」 「・・・はぁ、私の役職しってる?」 「突撃副会長だろ?」 「突撃は余計よ!」  すぐにツッコミがはいった。 「・・・私は副会長、孝平は役員。役員にだけ休日出勤させておいて、監督役の  上司が居ないのは問題あるでしょう?」 「あるのか?」 「あるの! だから私も手伝うわ。その方が早く終わるでしょう?  それに・・・その、週末はごめんなさいね。仕事が全然進まなくって」 「いや・・・そんなことはないと思う」 「くすっ、孝平はいつでも優しいのね・・・」 「・・・」  監督生室にとても安らいだ、穏やかな空気が流れた・・・ 「支倉君、こんな所にいたのか! 大変だよ! 支倉君の順位が・・・」 「兄さん、孝平がどうしたの!」 「おや、瑛里華居たんだね。気付かなかったよ」 「そんなことより孝平がどうしたの!」  瑛里華の剣幕に会長が押されている。なんだか珍しいものをみてしまったような  気がする。 「いや、そのね、支倉君の順位が下がったんだよ」 「へぇ、そうなんですか」  俺は特に順位は気にしてないので下がったか、程度にしか思わない。 「孝平、貴方は生徒会役員なのよ? 順位が下がるなんて生徒の模範に  ならないでしょう?」 「・・・瑛里華、こればかりはどうしようもないと思うぞ?」  テストの点数じゃないし、自分の力だけでどうにかなるわけでもない。 「でも!」 「俺のことより瑛里華はどうだったんだ?」 「私は・・・今日も2位よ。悠木さんが1位で変動無しだけど大丈夫よ」  大丈夫、か。よほど自信があるんだな。 「だって、孝平が毎日・・・毎晩いれてくれるんでしょう?」 「おや、支倉君毎晩なのかい? 若いねぇ」 「・・・会長、話をややこしくしないでください」 「そうだな、ややこしい事なしで、ずばっといれればいいんだよ、支倉君  それでは後は若い者にまかせて・・・アデュー!」 「あっ・・・」  瑛里華が何かを言いかけたようだが、会長は去っていってしまった。 「・・・」 「・・・」  二人だけの監督生室。  さっきまであったはずの甘い空気はどこにもなく、張りつめた雰囲気に  なってしまった。 「その・・・孝平? あのね・・・」 「・・・」 「ねぇ・・・何か言ってよ?」 「えと・・・」  何かを言わないといけない、けど何も口から出てこない。  喉がカラカラに乾く、唾を飲み込んで潤そうとする。 「っ」  思ったより大きな音がしてしまった。  俺が緊張してることが瑛里華に伝わってしまったかもしれない。 「ねぇ、孝平・・・その、いれて・・・くれるの?」
4月13日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票4日目〜」 「ふぅ」  読んでいたの小説を机におく。  土曜日、休みを返上して生徒会の仕事を片づけたから今日1日は  オフになった。  街にでも散歩に行こうかともおもったが、朝方から雨が降っていたから  なんとなく出かける気分にもならなかった。 「ちょっと外の空気を吸いに行くか」  談話室の入り口の自動販売機でコーヒーを買う。  そしてソファーに座って一息入れる。  休みの日とあって、談話室にいる生徒は少ない、というか誰もいない。  雨はお昼過ぎに小康状態になり、いまは上がっている。  生徒達は午後から街に繰り出したのだろう。  俺は、今更だからという理由で出かけなかった。  買い足すものもまだないし、のんびりすごすのも良いだろう。 「・・・あれ?」  今になって、談話室の端の窓のところに、紅瀬さんがいることに気づいた。  ちょうど俺の座っているソファの背後になるから気づかなかった。 「紅瀬さん?」 「・・・支倉君」  紅瀬さんは難しい顔をしていた。 「どうかしたの?」 「・・・」  紅瀬さんは黙って俺の隣のソファに座った。  それも、俺と密着する形で・・・ 「あの?」 「・・・順位が上がったのよ」 「紅瀬さんの順位が上がった? おめでとう、紅瀬さん」  確か先日は4位だったはずだからあがったということはベスト3位入りだ。 「私のことはいいのよ、結果なんて気にしてないもの・・・それよりも  上がったのよ」 「いや、だからそれは聞いたよ。紅瀬さんの順位だろう?」 「・・・支倉君、貴方の順位よ」 「え?」  俺の順位が上がった? 「昨日より1つ上がってるの・・・」  そういえば昨日は順位が下がったんだっけ。  上がったと言うことは結果から言えば元に戻ったということだよな。  まぁ、どっちにしろ俺は上位をねらってる訳じゃないし何も気にならない。 「・・・」 「紅瀬さん?」  なのに紅瀬さんは難しい顔をしている。俺も紅瀬さんも順位が上がったの  なら、何も問題無いと思うのだけど・・・ 「・・・支倉君、貴方の順位が上がったと言うことは、貴方が投票されたと  言う事よ?」 「そりゃそうだよな」 「それだけ・・・貴方が人気があるということなの」 「そういうことになるのか?」  どうせ2位票とかだろうけど。 「えぇ・・・それが心配なの」 「心配?」 「支倉君、貴方はもう少し自分の魅力に気づくべきよ」  み、魅力?  俺にそんなのがあるわけないだろう? 「支倉君は気づいてないだけで・・・かなりもてるのよ」 「俺が?」  俺がもてる? その割にはあまりそういう話を聞かない気がするけど。 「貴方の周りには、たくさんの人が集まってくるわ。けど・・・」 「けど?」 「私には・・・貴方しかいないのだから」  紅瀬さんの言葉に鼓動が一気に早くなるのを感じる。 「私の順位があがったのは、支倉君がいれてくれたからよね?」 「・・・その件に関しては誰に対してもノーコメントにさせてください」 「・・・ふふっ、わかってるわ」  本当にわかってるのだろうか? 「そして今晩も私に・・・その、いれて・・・くれるのよね?」  顔を真っ赤にしている紅瀬さん。 「1日1回だなんてイヤよ・・・ねぇ、支倉君。  ・・・今晩も私の部屋で・・・たくさんいれて・・・ね?」  ・・・自分の理性を押さえるのに必死になる俺の意志を崩させるような  紅瀬さんの一言だった。
4月14日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票5日目〜」 「熱心だよな」 「えぇ、凄く熱心です」  俺が礼拝堂に来たときからシスター天池はずっと祈りを捧げている。  何がそこまでさせるのだろうか?  俺にはわからないけど、シスターだからこそ何かがあるのかもしれない。 「邪魔にならないように掃除の続きしようか、白ちゃん」 「はい」  礼拝堂に来たのには理由があった。  先日から白ちゃんの様子がちょっとおかしいからだ。  普通に見てる分にはわからないちょっとした変化。  また、何かを抱え込んでいるのだろうか?  月曜の今日はまだ学院側からの書類が出来上がってないため、生徒会の  仕事は暇になった。だから俺は早めに切り上げて礼拝堂に様子を見に  来たわけだが・・・ 「・・・」  シスターが祈りを捧げている場所で白ちゃんに悩みを聞くわけには  いかなかった。  別にここで悩みを聞くつもりではないけど、白ちゃんはローレルリングの  活動で礼拝堂からは離れられない。  仕方が無く俺は掃除の手伝いをしていた。  少したってから 「あの、シスター。そろそろお時間です」  遠慮がちにシスター天池に話しかける白ちゃん。 「あら、もうそんな時間なのですか? 教えてくれてありがとう、東儀さん」 「・・・」  あっさり祈りを終えたシスター。祈りってそういうものなのだろうか? 「あら? 支倉君も来てくれてたのですね。気づきませんでした」 「・・・こんにちは」 「こんにちは、せっかく来てくださったのにごめんなさいね。私はこれから  職員会議に出なくてはならないの」 「はい、白ちゃんの手伝いはまかせてください」 「ふふっ、頼もしいわ。是非ローレルリングに加わって欲しいわ」 「その話は」 「えぇ、存じてますわ。生徒会の仕事もありますしね。それでは私はこれで。  東儀さん、戸締まりお願いしますね」 「はい、シスター」 「シスター、何を祈ってたんだろうな?」 「わかりません、でもあんなに熱心に祈られていたのは初めてみました」 「そっか・・・、それじゃぁ続き始めちゃおうか」 「はい、よろしくお願いします」  シスターが一心に祈っているという、荘厳な空気が無くなった分、礼拝堂の  中の空気が少しだけ軽くなった気がした。  余裕が出来た俺は、ちらりと、白ちゃんの方を見てみる。 「・・・」  掃除をしながら何か考えてるように見える。  俺の見間違いではなさそうだ。 「白ちゃん」 「は、はい! 何でしょうか?」 「あのさ、俺の勘違いじゃなければいいんだけどさ・・・  白ちゃん、何か悩んでない?」 「・・・特に何も」 「白ちゃん、即答できない段階で嘘だって言ってるようなものだよ」 「そ、そうなんですか?」  驚く白ちゃん、その驚きが嘘だって事を表している。  こんな事はしたくないけど、こうでもしないと白ちゃんは内にためて  しまうから。 「俺じゃ役に立てないと思うけど」 「そんなことはありません!」  俺の言葉を力強く否定する白ちゃん。 「支倉先輩はいつだって、私を見てくださいました。助けてもくれました。  だから役に立てないだなんてことはありません!」 「それなら、俺でも役に立てるのかな?」 「あ・・・はい、支倉先輩じゃなくちゃ・・・駄目なんです」 「私の順位が下がってしまったのです」 「人気投票の事、だよね?」 「はい」  驚いた、白ちゃんも順位を気にしてるのか。 「私は順位なんて気にしてませんし、瑛里華先輩や紅瀬先輩に勝てるとは  もとから思ってませんでした。」  それでも最初はベスト3に入っていたんだよな、白ちゃん。 「ですが・・・私は東儀なのです。東儀のものとしては恥ずべき事なのです」 「・・・はい?」 「千堂家に譲るのは問題ないのですが・・・その、紅瀬先輩には申し訳  無いのですけど・・・」  どうやら東儀一族でこの人気投票での順位を下げたことに問題があるらしい。  ・・・って、学院の人気投票を問題にするってどんな一族だよ。  そしてどこの馬の骨ともいえない人に抜かれたことも問題になっているようだ。  その東儀一族の人が紅瀬さんの正体知ったらどう思うかな・・・ 「私は瑛里華先輩も紅瀬先輩も大好きです、だから・・・」 「なぁ、白ちゃんはどうしたいんだ?」 「えっ?」 「一族のしきたりも大事だとおもう、けど白ちゃんはどうしたいんだい?」 「私・・・?」  俺の言葉に白ちゃんは考え込む。 「あの、あの!」 「落ち着いて、白ちゃん」 「は、はい! ・・・支倉先輩、私はどうして欲しいのかわかりました。  私は・・・その、支倉先輩に・・・いれて、欲しいです」 「はい?」 「瑛里華先輩や紅瀬先輩の方が魅力的なのはわかります。だけど、私にも  いれて欲しいんです、もう我慢したくありません!」 「白ちゃん、落ち着いて!」 「私は落ち着いてます、だからたくさんいれてください、お願いします!」
4月15日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票6日目〜」 「と、いうわけで作戦会議を始めたいと思います!」 「あの、かなでさん。何の脈絡も無く俺の部屋で何を始めるんすか?」 「こーへー隊員、何を聞いてたのかね? ひなちゃん1位奪還の為の作戦  なのだよ!」 「お姉ちゃん、紅茶どうぞ」 「おー、ありがとう、ひなちゃん」  いきなり押し掛けてきたかなでさんと、連れてこられた陽菜。  かなでさんが説明?をしてる間に陽菜はいつものお茶会の準備をしていた。 「うん、やっぱりひなちゃんの紅茶は最高だよ」 「ありがとう、お姉ちゃん。孝平君もどうぞ」 「さんきゅ」  俺は陽菜から紅茶を受け取って飲む。 「・・・今日のはいつもよりまろやかだな」 「あ、わかる?」  嬉しそうな陽菜。 「そういえば今日の紅茶はまろやかだね、ひなちゃん」 「ふふっ、お姉ちゃんありがとう。クッキーもあるよ」 「わーい!」  まろやかな味のする紅茶においしいクッキー。  人数が少ないけど、いつもより穏やかな空気が流れるお茶会だった。 「って、こーへー! 勝手にお話終わらせないの!」  ぺしっ 「っ!」  俺の額に風紀シールが貼られた。 「今日はひなちゃん1位奪還の会議なの!」 「お姉ちゃん、私は順位なんて気にしてないから」 「せっかく奪った1位の座をえりりんに奪われたんだよ?」 「私なんかよりえりちゃんの方が1位にふさわしいと思うし」 「陽菜がそういうなら無理に奪還しなくてもいいんじゃないか?  それよりもかなでさんの順位の方が」 「かなですぺしゃる!」 「いたっ!」  かなでさんの一撃が俺にヒットする。 「孝平君、だいじょうぶ!」 「かなでさん、本気でぶたないでください」 「私はいつも本気なんだからね、こーへー。それにね、今日は  ひなちゃんのお話の日なの。私は明日だから今日はいいの!」 「・・・」  なんだかよくわからなくなってきた。 「むー、やっぱりひなちゃんに投票しない人には風紀シールを」 「職権乱用ですよ、かなでさん」 「そのためには風紀シールをたくさんつくらないと!」 「あの、かなでさん。俺の話聞いてます?」 「それじゃぁ後は若い二人にまかせるとしますか」 「お、お姉ちゃん!?」 「それじゃぁこーへー、ひなちゃん、まったねー。  一撃必殺悪い人とか〜」  かなでさんは歌いながらベランダの梯子を登って帰っていった。 「・・・」 「・・・」  なんだか気まずい雰囲気になってしまった。  それというのもかなでさんの最後の一言のせいだ。 「あの」 「あの!」  二人が同時に声をだす。 「・・・陽菜が先でいいよ」 「孝平君が先で、いいよ」 「・・・」 「・・・」  さっきまでの穏やかな空気はどこに行ったのだろう。 「・・・あ、孝平君。それって」 「あ、あれは取り込んだばかりの洗濯物だけど」 「もう、孝平君。シャツはアイロン掛けないと駄目じゃないの。  私がかけてあげるね」 「え、でも悪いし」 「私がしたいからするの、それじゃぁ・・・だめ?」  答えは言うまでもなかった。  一度部屋に戻ってアイロンセットを持ってきた陽菜は上機嫌で  俺のシャツやハンカチにアイロンをかけていく。 「〜♪」  鼻歌まで聞こえてきた。 「孝平君のYシャツって大きいね」 「そうか? 俺はそんなに大きくないと思うけど」 「ううん、やっぱり男の子なんだなぁって。女の子だとこんなに  大きいと袖とか余っちゃうもの」  陽菜のYシャツ姿か・・・意外に似合うかもしれないな。 「それに、このYシャツ、なんだか着心地良さそうだよね」 「そんな古ぼけたシャツなんて着心地良くないぞ?」 「そうでもないよ、おろしたてだとのりがきつくて駄目だし、やっぱり  ある程度着てくれた方が良いと思うよ」  そういって俺のYシャツをずっと手に取ってる陽菜。 「なんなら1枚あげようか?」  俺は冗談でそう言った。 「いいの?」  陽菜が目を輝かせて反応する、俺は思わず頷いてしまった。 「そ、そろそろ新しいの買うつもりだったし、そんなお古でよければ・・・」 「ありがとう! 孝平君。大事に着るね」  まだアイロンをかけてない俺のYシャツを抱きしめる陽菜。 「ねぇ、孝平君・・・着てみてもいい、かな?」 「・・・」  陽菜はバスルームへと消えていった。 「・・・」  なんだか落ち着かない。俺のお古のYシャツを羽織るだけだ。  ただそれだけのことなのに落ち着かない。 「・・・おまたせ、似合う・・・かな?」  バスルームの扉が開いて陽菜が出てきた。  俺の着ていたYシャツを着ている。第2ボタンまではずされたシャツは  陽菜の胸元を惜しげもなくさらしている。  やはり大きいのか両袖は手をすっぽり隠していて、指先がかろうじて  見える程度だった。  裾も陽菜の腰を隠しきるほど大きく、そこからのびる素足は太股の・・・ 「っ!」  なんで太股が見えるんだ? スカートはどうした?  それに胸元が開いてるからって胸の谷間が見えるのはなぜなんだ? 「その・・・孝平君?」  もじもじする陽菜。太股をこすりあわせる仕草は、Yシャツの裾から  その下にある、白い布が見え隠れする。 「ねぇ、孝平君。私はね、順位なんて気にしてないの。1位なんて欲しくないの。  私はたとえ1回でもいいから・・・孝平君にいれて欲しいの、それだけなの」 「陽菜・・・」 「孝平君が望むならこういう格好、いつでもする。だからね、孝平君・・・  孝平君が・・・いれて・・・ください」
4月16日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 『FORTUNE ARTERIAL』キャラクター人気投票開催、期間は2008年4月9日〜18日まで。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票7日目〜」  静かな夜。  学園の敷地のはずれの奥にある千堂家。その純和風の建物の縁側で  お茶を点てる伽耶さん。  着ている服もいつもの和装ではなく、着物と呼べるような服装だった。 「どうぞ」 「ありがとうございます」  純和風の部屋の縁側で、俺は出されたお茶を手に取る。  受け取って今更ながらに気づく。 「でも、俺は作法とか知らないんですけど」 「別に良いではないか。あたしの茶を思いのまま飲んでくれれば」 「でも伽耶さんはちゃんとした作法で煎れてくれたから、俺も」 「そこまで期待しておらぬ」  ・・・ 「いただきます」  俺はあきらめて、作法なんて関係なくお茶を一口飲む。 「・・・うまい」 「そうか、よかった」  今まで日本茶や紅茶とかは飲んだことがあったが、ちゃんと点てたお茶を  飲むのは初めてだった。 「てっきり苦いだけかと思ったんですけど、なんていうか・・・その苦みが  おいしく感じます」 「そなたも苦労してるのだろうな」 「・・・はい」 「せめて今だけはのんびりするといい」 「そうですね、全てを忘れるのも良いかもしれないですね」  見上げると夜空に月が浮かんでいる。  静かな夜。  そよぐ風が木々を揺らす音だけがする、俺と伽耶さんしかいない世界。  ・・・  ・・・ 「あの、なんで俺はここでお茶を飲んでいるんでしょうか?」 「あたしがお茶に誘ったからであろう」 「あれを誘ったって言うんですか・・・」  数分前の事、監督生室で仕事をしてる俺の前に突然伽耶さんが現れた。  会長や副会長が止めるよりも早く、俺は持ち出され、千堂家に連れてこられた。  なぜ連れ出されたかを考えようとして・・・やめた。 「今更だよな」 「どうかしたのか?」 「いえ、お茶がおいしいなぁって」 「そうか、もう1杯点てるか?」 「・・・お願いしても良いですか?」  そよ風に木々が揺れる音。  伽耶さんがお茶を点てる音。  たったそれだけの世界。  ここ数日あわただしくていろんな意味で気が休まる暇が無かった俺には  贅沢すぎる環境だった。 「ところでだな、孝平。その、瑛里華はどうなのだ?」 「副会長ですか? 特に変わった様子は無いと思いますが」 「そうではなくてだな・・・」 「あ、人気投票の事ですか? 今日1位に戻って喜んでましたよ」 「・・・なるほどな」  伽耶さんは瑛里華の母親だから、娘のことが心配なのだろう。  良い方向に変わった・・・いや、戻ったと言うべきなのだろう。 「瑛里華や桐葉が苦労するわけだな」 「?」  伽耶さんが小声で何かを言ったようだが俺には聞き取れなかった。 「それで、孝平はだれにいれたのだ?」 「・・・やっぱり話はそこに行くんだよなぁ」 「言えぬのか?」 「はい、誰に対してもこの件は黙秘しています」 「・・・さすがだな、瑛里華が見初めただけのことはある」  副会長が見初めたって? 「そして、あたしを説得しただけのことはあるな。でも・・・孝平」  伽耶さんは俺の目をまっすぐ見つめてくる。 「孝平はあたしを説得しかしておらぬ」 「え?」  伽耶さんを説得しかしていないって、まさかまだ伽耶さんは・・・ 「勘違いするでないぞ、あのとき瑛里華と伊織と孝平の前で宣言した  事は嘘ではない」  説得が成功した夜の、あの話し合いの事だろう。  一度家族を解散して、出来るのならまた家族として、つながっていたい。  会長と瑛里華への気持ち、償いを表したものだった。 「孝平は・・・あたしを説得して終わり、なのか?」 「・・・終わりじゃないですよ、俺も家族の一員ですから」 「本当か? あたしを救ってくれるのか?」  伽耶さんを救う・・・俺に出来るのか?  その役目は会長や瑛里華、紅瀬さんの方が適任だと思うのだけど・・・ 「俺に出来ることなら、やっていきたいと思ってます」 「そうか・・・孝平。ありがとう」  そういって笑う伽耶さんの顔はとても綺麗で、そして可愛かった。  ここで話が終われば、綺麗に終わったのだと思う。  けど世の中そうは甘くはない。 「なら、孝平。早速だがあたしの願いを聞き入れてはもらえぬか?」 「伽耶さんの願い?」 「そう、本編ではかなわなかったのだし、他のヒロインはもう充分であろう?」 「・・・」  展開が読めてきた。 「覚悟を決めた顔をしておるな、なら話は早い。  孝平、あたしに・・・その・・・い・・・いれ・・・」  顔を真っ赤にして言葉を紬だそうとする伽耶さん。  今まで見たことのない表情がなんだかほほえましい。  ・・・言おうとしてることさえ、まともならだが。 「くっ、たった一言が言えぬだなんて・・・屈辱だ」 「屈辱って・・・無理に言わなければ・・・」 「だめだ!」  俺の反論を大声で封じる。 「他のものどもは言えたのであろう? ならあたしが言えぬ訳がない。  孝平、あたしにい・・・いれ・・・いれ・・・」  伽耶さんが恥ずかしがってなかなか言えない。  俺はそれを見つつ、中間発表も今日までだから明日からはもう大丈夫だろう。  と、根拠のない事を考えていた・・・ 「孝平、あ、あたしにいれるのだ!」
4月17日 ・オーガスト,FORTUNE ARTERIAL人気投票開催中です。 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票8日目〜」  生徒会の仕事も今日はそんなに無く、早めに切り上げることが出来た。  昨日と違っていきなり連れて行かれることもなく、ちょっと監督生室の  中の雰囲気がぴりぴりしている事以外は何事もなく。  寮に戻って部屋に戻る前に談話室でコーヒーを飲みながら一休みする。 「平和だなぁ・・・」  人気投票が始まってから毎日いろいろありすぎて心休まる日々が無かった  俺は、何事もなく平穏無事に1日が過ごせたことに思わず感謝したくなる。 「あ、孝平君お帰りなさい。疲れてるところ悪いんだけど・・・  ちょっと、いいかな?」 「ただいま、今日はまだ疲れてないから大丈夫だよ」  ・・・思わず自分で「まだ」と言ってしまうあたり、今日も平穏無事に  終わらないであろうと理解してしまう。 「あのね、お姉ちゃん見なかった?」  陽菜の話を聞くと放課後からかなでさんがどこにもいないらしい。 「用事があるわけじゃないんだけどね・・・その、気になって」 「かなでさんの部屋は?」 「からっぽだったの、携帯かけてもつながらないからちょっと心配なの」  かなでさんも子供じゃないし、大丈夫だとは思うけど、陽菜が心配して  いるんだから。 「見つけたら連絡するよ」 「うん、お願いね」 「かなでさん、どこに行ったんだろうな?」  今日は監督生室に乗り込んでこなかったし、食堂でも見かけていない。  ・・・事件に巻き込まれた?  いや、それはあり得ないか。 「・・・少し外を捜してみようかな」  春とはいえ夜になると冷え込む。  俺は一度自室に戻って着替えていくことにした。  自室の扉の鍵を開けて中に入る。 「・・・誰かいる」  暗い部屋の中に人の気配がある。  いったい誰が! 「・・・って、かなでさんしかいないよな」  電気をつけると、俺のベットの上でまるくなって眠っているかなでさんがいた。 「そっか、孝平君の部屋で寝てたんだ」 「あぁ、まだ起きそうにないから寝かせてる。きっと疲れてるんだろう」 「ありがとう、孝平君。お姉ちゃん起きたら迎えに行くから」 「わかった、また後で電話するね」 「うん、それまでお姉ちゃんをよろしくね」  陽菜への連絡を終えると、ベットの上のかなでさんが寝返りをうった。 「・・・」  今のかなでさんは制服姿だった、さすがに上着は脱いでから寝たようだけど  ・・・その、制服ってことはスカートが短いわけで。  そのスカートが少しだけまくれてしまい、いつもより太股が見えて・・・ 「・・・って、何を見てる俺は!」  毛布を掛けようと思って・・・駄目だ、毛布はかなでさんの下に敷かれている。  仕方が無く俺の制服の上着をそっと掛ける。  これで大丈夫だろう・・・いろんな意味で。 「ん・・・こーへー?」 「起こしちゃったかな?」 「んー・・・こーへー、遅い」 「はい?」 「こーへー、遅い! かなですぺしゃる!!」 「ごめんなさい、こーへー」 「つまり、寝ぼけてた訳ですね?」 「うん、こーへーがあまりに遅いから眠っちゃったみたい。てへ」 「それはわかりましたけど、なんで俺の部屋で?」 「・・・」 「かなでさん?」 「こーへーが悪いんだよ?」 「え?」  俺が悪いって? 「だって、今日は私の番だって思って監督生室に行ったらこーへー  いなかったんだよ? あのロリにさらわれた後だったんだよ?」  ・・・昨日の話か。 「みんなちゃんと順番にお話あったのに、私だけメインヒロイン以外の  ロリより順番後なんだよ?」 「かなでさん、落ち着いて・・・」 「確かに初日の順位は6位だったけど、今は5位なんだよ?」 「だから落ち着いてくださいって」 「・・・」 「・・・かなでさん?」 「いーんだ、どーせわたしは人気なくたって・・・」 「かなでさん・・・」 「ソフト販売の促進テレカに描き下ろしがないのだって、他の描き下ろし  でも私のは少ないのも、私のエンディング曲の発売が未だに告知され  ないのもどーせ私が悪いんだ・・・」 「・・・あの、かなでさん。Pure Messageならきっとサウンドトラックに  収録されてますよ」 「そのサウンドトラックだってまだ発売予定ないよ」 「それは大丈夫、ほら」  なぜか監督生室での仕事の時に入ってきた情報をプリントした用紙を  かなでさんに見せる。・・・なんで俺はこれを用意してあるんだろう? 「おー、やっと出るんだね、これで私も一安心だけど・・・  ジャケットはひなちゃんなんだね」  サウンドトラックのジャケットはヘッドホンをしている陽菜の絵だった。 「ひなちゃんがジャケットってのは私のヨメだから当たり前の選出だと  思うけど・・・私の描き下ろしは無いんだよね、きっと・・・」 「・・・かなでさん、その」 「いーの、こーへー。私は寮長さんだから」  かなでさんは笑顔で話を続ける。 「私は縁の下の力持ちなんだよ」  そういって腕を曲げて力を入れるかなでさん。  当たり前だけど女の子の腕だから、いくら力んでも二の腕は盛り上がらない。 「今度の人気投票もみんなが最後まで楽しめるようにがんばるよ!」 「・・・かなでさん、俺感動しました」 「へ?」 「やっぱりかなでさんは凄い人だなって・・・俺にはとても及びません」 「え、え?」 「俺も出来ることは協力します、だから一緒に最後まで楽しみましょう!」 「あ、あはは・・・そんなにおだてても何も出ないよ?」  そういって顔を真っ赤にしてるかなでさん。 「で、でも、嬉しいな。こーへーがそう言ってくれて」  かなでさんが笑顔になる。  さっきまでのかなでさんの顔は似合わない。  やっぱりこうでなくっちゃ。 「あ、そーだ。こーへー、なんでも協力してくれるって言ったよね?」 「えぇ、俺で出来る範囲なら」 「こーへーじゃなくちゃ出来ないんだよ」 「俺しか出来ない?」 「そうそう、これはこーへーしかできない、大事なことなの」  俺しかできない大事なこと・・・いったい何だろう? 「あのね、こーへー。私は順位なんて本当はどうでもいいの。  ただ・・・こーへーがいれてくれるだけでいいの」 「・・・」  結局このオチにつながるのか? 「今までこーへーがだれにいれたかなんてもう聞かない。  今日は、今夜は・・・私にいっぱいいれて、そそいで欲しい・・・の」 「・・・」 「ね、こーへー。今日は大丈夫な日だから・・・いっぱい・・・いれて」
4月18日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票9日目〜」  授業がおわってから俺は一度寮へ戻った。  必要なものを用意し、やるべき事をしてからいつものように監督生室に  向かう。今日もやるべき事はたくさんあるのだ。 「やぁ、支倉君。今から行くのかい?」 「会長」 「そっか、今日も生徒会の仕事に行くんだね」 「当たり前です、今日仕事をおわらせておけば週末時間が作れますからね。  というより会長もちゃんと来て仕事をしてください」 「もちろん、そうするよ。でもちょっとだけ野暮用があるからほんの少し  だけ遅れる。そう、瑛里華に伝えておいてくれ」 「わかりました、ちょっとだけ遅れると伝えておきます」 「・・・」 「会長?」 「支倉君、虎穴に入らずんば虎児を得ず。そんなことわざを知っているかい?」  いきなりなんだ?  会長はたまに訳の分からないことを言うことがある。  問題なのはそのすべてがそうでないということ。  ごくまれに核心をつくような事を遠回しに言ってくることがある。 「危険を犯さなければ成功は収められない・・・でしたっけ?」 「・・・気をつけたまえ」  そう言うと会長は去っていった。 「・・・いったいどういう意味だ?」 another view 千堂伊織 「うーむ、この場合は鴨がネギをしょってやってくる、の方が  よかったかな?」  どっちにしろ、おもしろくなりそうだ。 another view end  監督生室についたとき、誰も来ていなかった。 「俺が1番か、珍しいな」  たいてい誰かが先に来ていることが多いけど、こういう日も無いわけ  では無い。  部屋の電気をつけて、俺は先日の書類のチェックから始めた。 「たのもー!」 「・・・かなでさん、もう少し丁寧に部屋に入ってください」 「もぅ、リアクション薄いよこーへー」  いつものように元気よく扉を開けて入ってきたのはかなでさんだった。 「よし、こーへーしかいない。ふふふっ」  そう言いながら俺の方へにじりよってくるかなでさん。 「あの、かなでさん?」 「こーへー、お姉ちゃんと愛の逃避行しよ!」 「はい?」 「愛のと・う・ひ・こ・う! ここじゃ雰囲気良くないから私の部屋で  いれてもらうの」 「・・・まだひっぱるか、このネタで」 「でもこーへーが望むなら、その・・・恥ずかしいけどここでも、いいよ?」 「望みません!!」 「ん、もぅ、こーへーったら照れ屋さんなんだから」 「照れてません、呆れてるだけです」 「孝平君、お姉ちゃん来てな・・・お姉ちゃん!」  開けっ放しの扉から陽菜が入ってきた。 「また孝平君の邪魔してる、ダメっていったじゃない」 「邪魔じゃないもん、愛の逃避行するんだもん!」 「え?」 「あ、そうだ! せっかくだからひなちゃんにもいれてもらおうっと。  これで悠木姉妹の黄金伝説の幕開けなのだ!」 「お姉ちゃん!」 「だいじょうぶだよ、ひなちゃん。今度はひなちゃんがスク水で私が  体操着着るから」 「な、なにを言ってるの、お姉ちゃん!」 「こーへーは優しいからそっといれてくれるよ。だから安心。  あ、それともひなちゃんは激しい方が良いの?」 「・・・」 「そうだよね、プリム服であんな事しちゃうくらいだし」  パシッ! 「えぅ」 「お姉ちゃん、いい加減にして。それになんでそんなこと知ってるの?」  いつの間にか手にはスリッパが握られていた。  ・・・スリッパ? 何で? 「うぅぅ・・・発売前の黒歴史モードのひなちゃんだ・・・  でも、これはこれで良し!」 「何が良いんですか!」  思わずつっこみしてしまう。 「何はともあれ、敵が来る前にこーへーを連行せねば!」 「もう、遅いわよ、悠木先輩・・・」  開け放たれた扉には瑛里華と紅瀬さんが立っていた。 「食堂に呼び出したと思ったらあんなに熱いなべやきうどんを私に  押しつけるなんて・・・」 「・・・かなでさん、瑛里華に何したんですか?」 「えっとね、時間稼ぎするために熱い鍋焼きうどんをごちそうしました〜  えりりん、美味しかったでしょ?」 「そりゃもちろん美味しかったわよ」 「ちなみにきりきりにはあつあつのチゲ鍋でした」 「・・・ごちそうさまでした」 「でも熱すぎてなかなか食べれなかったじゃない」 「だって、それが目的だもん」 「ごめんなさい、えりちゃん。お姉ちゃんが迷惑かけて」 「・・・悠木さんが謝ることじゃないわ。それよりも悠木先輩!  孝平をどうするつもりなの!」 「どうって、私にいれてもらうつもりだよ」 「・・・」 「ダメよ、孝平は私にいれてもらうんだから!」 「あら、それはどうかしら? 支倉君は私にいれるかもしれないわよ?」 「孝平君・・・私にはいれてくれないのかな?」 「・・・」 「支倉君、何仕事してるんだい?」 「会長、野暮用はもうおわったんですか?」 「あぁ、おわった。それよりも支倉君。現実逃避してる場合じゃないと  俺は思うんだが、どうかな?」 「・・・」 「孝平!」 「支倉君!」 「こーへー!」 「孝平君・・・」 「今日こそは!」 「今夜」 「今こそ!」 「・・・迷惑じゃなければ」 「私に!!」 「あれ、みなさんお揃いで何をなさってるんですか?」 「・・・」  遅れてやってきた白ちゃんと東儀先輩。 「白、みなさんの分のお茶を煎れて差し上げなさい」 「はい、兄様。みなさん、少々お待ちくださいね」 「・・・ねぇ、えりりん。白ちゃんってねらってやってる?」 「いえ、そんなそぶりは一度も見せたこと無いわ」 「じゃぁ、白ちゃんってもしかして?」 「・・・思った通りだと思うわ」 「・・・はぁ」  白ちゃんの一言が場を変えた。さすがというべきかなんというべきか。  俺はただひたすら、書類のチェックを続けるだけだった。 「ねぇ、孝平」  白ちゃんが用意してくれたお茶と和菓子。  みんなで仲良く食べる、そんな平穏な時間は・・・ 「結局孝平はだれにいれたいの?」 「ぶっ!」  あっさり終焉を迎えた。 「いきなりなんだよ?」 「えっとね、私たちがいれてほしいって言ってもずっと何もおしえて  くれなかったでしょう?」 「だから、結局こーへーは誰にいれたいのかなぁって思って」 「そうね、支倉君の意見が聞きたいわ」 「今日は最終日でしょう? だから孝平の意見を聞いてみたいの」 「だから、誰に投票するかは黙秘するって言ってるだろう?」 「ちっちっちっ、甘いなこーへー。誰にいれたかを聞いてるのでは  ないのだよ、誰にいれたいかを聞いてるんだよ」 「それって同じ事じゃないか・・・」  設問がすり替わってるけど主旨は全く変わって無いじゃないか。 「孝平、あなたは誰にいれたいの?」 「支倉君、あなたがいれたい人は誰?」 「こーへー、いれたいのはお姉ちゃんだよね?」 「孝平君・・・私ならいいよ?」 「・・・」  ・・・あれ? 白ちゃんが静かだ。  ここ数日は白ちゃんも参加してきているのに、今日はおとなしい。  机の上にあるきんつばをずっと見つめている。  いったいどうしたんだろう? 「あ、やっとわかりました!」 「どうしたの? 白ちゃん。何がわかったの?」  俺は話の矛先をかえようと、白ちゃんの話を聞こうと思った。 「支倉先輩、今日は投票の最終日ですよね?」 「・・・あぁ、その通りだけど」  話の矛先は変わっても話題は変わらなかった・・・ 「投票は10日間で行われるって最初に伊織先輩が説明してくださいました」 「その通り、期間は10日一日1回しか投票できない」  会長がそう続ける。 「それなのに、お話のタイトルが最終日なのに人気投票9日目になってます」  ・・・あ、本当だ。 「私、わかったんです。このお話のタイトルは人気投票ではなく、  中間発表編にするべきだったんです」 「偉いぞ、白。よく気がついた」 「兄様・・・」 「でも、もしそうであるのならそこの小娘の話は無くなっておったな」  いつの間にか俺の背後に伽耶さんが現れていた。  なぜか俺の首に手を回して・・・そのまま背後から俺に被さってきていた。 「あ、ロリっ娘。こーへーに何抱きついてるの?」 「おぬしにロリ扱いされるのはどうかと思うのだが?」 「私は脱いだら凄いんだよ、ねぇ、こーへー?」  かなでさんの言葉に部屋中の視線が俺に集まる。 「・・・」  俺は部屋中からプレッシャーを受けて何も言えないでいた。 「こ、孝平が望むなら、私も・・・脱ぐわ」 「あら、千堂さんは大胆ね。私は脱がないわ」 「お? きりきりは脱落宣言?」 「違うわよ、支倉君は脱がす方が好きだし、それにすべて脱がさないもの」 「・・・」  紅瀬さんの一言でまたプレッシャーが襲いかかる。 「でも孝平君はこの前脱いで欲しいって言ったよね」  陽菜の一言でまたプレッシャーが重くなる。 「脱がしたり脱がさせたり、脱がせなかったり・・・支倉君はいったい  どういう嗜好をしてるのかしらね」 「なら話は簡単だ。皆のものでいろいろと試したのだろうが、あたしは  まだフリーだ。だから孝平の望むしちゅえーしょんでい・・・いれ・・・  ・・も、もらえるわけだな?」 「だめー、私だってこーへーが望むならなんだってするもん!  体操着で朝から外でだってへっちゃらだもん!」 「孝平君が望むなら・・・その、また・・・一人でするの、見てもいいよ?」 「支倉君は外が好きなのよね・・・でも、たまにはなかがいいわ」 「孝平・・・私だって、望むならどんな姿でもかまわない」 「あの、支倉先輩・・また山に一緒に、いってくれます?」 「・・・」 「ねぇ、孝平・・・」 「支倉君」 「こーへー・・・」 「孝平君・・・」 「支倉先輩」 「私を選んで、そして私にいれて・・・」
4月22日 AUGUST,人気投票結果発表   ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜人気投票結果発表編〜」 「もう7時か」 「あら、もうそんな時間なの?」  放課後から書類や雑務と向かい合ってたらあっという間にこんな  時間になってしまった。 「そろそろ夕食の時間だな、今日はこのあたりにしておこう」  会長の一声で今日の生徒会の業務は終了した。 「今日は何食べようかな」 「孝平はどうせ焼きそばなんでしょう?」 「はずれ、今日はあんかけ焼きそばにしようかなって思ってた」 「結局焼きそばじゃない」 「あんかけ焼きそばは奥が深いんだぞ?」 「はいはい」  瑛里華が呆れて笑う、仕事の終わりはこうして静かに穏やかに迎え・・・  ドスンっ! 「あら、お客様かしら?」 「・・・」  展開が読めるというか、お約束? 「こーへー、びっくにゅーす!!」 「悠木、監督生室は作りが古いから静かに入室して欲しいのだが」  東儀先輩が釘をさす。 「そんなことより、結果でたよ!!」 「え、本当?」 「そうだよ、えりりん。気になる? んふふ〜」  そのかなでさんの微笑みを見て、俺は思った。  夕飯いつ食べれるかなぁ・・・ 「支倉君、何現実逃避してるんだい?」  この後の惨事を考えればそうしたくなるのが人情って  ものじゃないですか? 「みんな集まった? それじゃぁけっかはっぴょー!!」  なぜか監督生室にメインメンバーが全員集まった。 「忙しいなか来てやったのだぞ? 早くすすめろ」 「んふふ、いいのかな〜、あとで後悔するぞ?」 「なに?」 「かなでさん、伽耶さんを挑発するのはやめてください」 「こーへーが言うなら仕方がないな、それじゃぁ1位は・・・  私のヨメ、ひなちゃんだ!!」  1位 悠木陽菜 (7626,4102 19354) 「え、私?」  なぜかスポットライトを浴びている陽菜。  ・・・いつライトの設備を取り付けたんだ? 「そして2位はえりりんだ!」  2位 千堂瑛里華(7322,4174 18818) 「・・・」  瑛里華は表情を崩さぬまま、陽菜に近づいていく。 「陽菜・・・」 「えりちゃん?」 「おめでとう、陽菜!」 「え? ありがとう、えりちゃん!」  ふたりはがっしりと握手する。 「良い戦いだったわ、私の負けよ」 「そんな・・・私よりえりちゃんの方が1位にふさわしいのに」 「謙遜しない、この結果に胸を張りなさい!」 「うん!」 「今回は負けたけど、次は負けないわよ!」 「私もがんばるね、えりちゃん!」 「ちなみに、かっこ内の数値は最初が1位票投票者数、次が  2位票投票者数で、最後が合計ポイントです」 「かなでさん?」 「ほら、いちおー説明しておかないとね。  それでは、第3位はきりきりだっ! そして4位は白ちゃん!」  3位 紅瀬桐葉 (4162,4174 12348)  4位 東儀白  (3986,3603 11575) 「負けちゃいました、でもこの結果の通りだと思います」 「・・・貴方もあと数年すれば、追い抜けるわ。ここにいる誰よりも」 「そ、そうでしょうか?」 「がんばりなさい」 「はい、ありがとうございます、紅瀬先輩!」 「そして5位が私、みんなのアイドル悠木かなでお姉ちゃんだ!」  5位 悠木かなで(2457,3079 7993) 「みんなの応援でメインヒロインの座は守ったよ、ありがとう、みんな!」 「おい、かなでとやら。あたしはまだなのか?」 「ん、かやかやなら次だよ」  6位 千堂伽耶 (2238,2817 7293) 「かやかや・・・ってなんだそれは!」 「んとね、ろりっ娘のお母さんの名前」 「だからおぬしにろりと言われるいわれはないわ!  何度も言うが自分の姿を鏡で見て見よ」 「んーだからー、何度も言うけど私は脱ぐと凄いんだよ?」 「そうか、なら脱いでみせよ」 「え?」 「脱ぐと凄いのなら見せて見よ、と言うておるだけだ」 「・・・」 「出来ぬのか?」 「・・・かやかやのえっち」 「なっ?」 「そんなにみたいなら見せてあげたいけど、やっぱりだめ。  だってね、私の裸はこーへーにしか見せてあげないんだもん」  その瞬間、監督生室にいる女性陣の視線が俺に一斉に・・・突き刺さる 「孝平、それってどういう意味かしら?」 「お、俺は何もいってないぞ? なのになんで俺に問いつめる?」 「支倉君、言い残すことはあるかしら?」 「ちょっと紅瀬さんまで何を言ってるの?」 「孝平君・・・」 「支倉先輩・・・」  悲しそうな目で俺を見ないで・・・ 「まぁまぁ、まだ結果発表の途中だろ? そろそろ俺の出番だし  悠木姉、続けてくれないか?」 「おっけー、それじゃぁウサギ以下のみなさんはこんな感じで」  7位 ゆきまる ( 402,1972 2776)  8位 美術部部長( 470,1175 2115)  9位 千堂伊織 ( 302,1311 1915)  10位 東儀征一郎( 205, 885 1295)  11位 支倉孝平 ( 137, 852 1126)  12位 八幡平司 ( 118, 715 951)  13位 天池志津子( 88, 363 539)  14位 青砥正則 ( 65, 356 486) 「・・・ウサギ以下って」  あ、会長がショックを受けて落ち込んでいる。  なんか新鮮。 「支倉先輩は11位なんですね」 「まぁ、俺にしては結構得票数ある方だとは思うけどな」 「・・・」 「・・・」 「あれ? みんなどうしたの?」  急に誰もしゃべらなくなった。どうしたんだ? 「孝平にこれだけ得票があるって事は・・・」 「そうね、千堂さん。それだけ支倉君が・・・」 「支倉先輩、やっぱり・・・」 「むー、こーへーって・・・」 「孝平君・・・」 「えっと、みんな何を唸ってるのでしょうか?」 「こーへー! この意味わかる!」 「へ?」  意味って? 「孝平がこれだけ得票を集めてるってことは」 「支倉先輩、下級生に人気あるんです。よく教室でお話を聞きますし  私も聞かれます」 「・・・はい?」 「孝平君って誰にでも優しいから・・・」 「女の子なら勘違いする事もあるわよね、きっと」 「・・・えっと?」  なんだか嫌な雰囲気、というかいつもと同じ雰囲気になってきた  気がする。 「この際孝平が誰にいれたかはもう不問にするわ」 「そうね、結果が出た今そんなことはもうどうでもいいわね」 「そうそう、こーへーのこれからを考えなくっちゃね」 「はい、支倉先輩のこれからです」 「孝平君のこれから・・・」 「えと、みんな落ち着いて、ね?」 「孝平!」 「支倉君!」 「支倉先輩!」 「こーへー!」 「孝平君!」 「はいっ!」  みんなに一斉に呼ばれて思わず返事をする。 「今夜は覚悟してね♪」 ---  はーれむえんど?(笑)  というわけで、FORTUNE ARTERIAL人気投票の結果が今日の19時頃に  発表になりました。  最終中間発表から順位が全く動いてないですね。もう少しえりりんの  追い上げがあると思ったのですが届かなかったようです。  ですが、票数をみるとどこも僅差ですよね。  1位票をたくさん得ても2位票で逆転されてたりと、興味深い結果が  あちこちにあります。その辺の解説はどこかにお任せします(笑)  そして楽屋裏編は八方美人な対応をしてしまった孝平君の一人勝ち?(w  結果がでてから勢いで書く楽屋裏人気投票編もこれで無事終われそうです。  短い間ですがおつきあいありがとうございましたm(_ _)m
4月23日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory            楽屋裏狂想曲人気投票編「陽菜の一番」 「おめでとう、ひなちゃん!」 「おめでとう!」  今日のお茶会は陽菜が人気投票1位になったお祝いになった。  2位の副会長と4位の白ちゃんも参加している。 「ありがとう、みんな」  ほほえみで返す陽菜。 「・・・」 「ん、どうしたの、こーへー?」 「いえ、別になんでもないです」 「あ、わかった。ひなちゃんに見とれてたんでしょう?」 「あ・・・」  陽菜が顔を真っ赤にする。 「ふぅ、熱いわね〜」 「瑛里華先輩、窓あけましょうか?」 「・・・ふっ」  へーじ、そこでなんで笑う? 「それじゃぁ乾杯しよ。ひなちゃん1位、えりりん2位、白ちゃん4位、  私は5位のお祝いに、かんぱーい!」 「かんぱーい!!」  いつもと同じでちょっとだけ違うお茶会は、いつもと同じ時間に  お開きになった。 「私が洗い物しておくから」 「いや、俺がしておくからいいよ」 「でも・・・」 「大丈夫だって」 「あー、こーへーにひなちゃん。熱々なのはわかるけど二人だけの時に  したほうがいいよ?」 「え?」 「あ・・・」  副会長達の暖かい視線に俺達は顔を真っ赤にしてうつむく。 「後は若い二人にまかせるとしましょうか。お休みなさい、支倉君、悠木さん」 「副会長!」 「お休みなさい、支倉先輩、悠木先輩」 「またなー」 「それじゃぁね、こーへー、ひなちゃん。ほどほどに、ね?」  玄関から、ベランダからみんな去っていった。 「・・・」 「・・・」 「あの、孝平君。洗い物、しちゃおうか」 「・・・そうだな」  俺達は二人でお茶会の後かたづけを開始した。 「こっちは終わったよ、孝平君」 「こっちもOKだ」 「じゃぁ、もう終わりだね・・・」 「そうだな・・・」 「・・・」 「・・・」  副会長があんな事言うから意識しちゃうじゃないか。  気づくと俺は、陽菜の大きな胸や部屋着のシャツからのびる、スパッツに  包まれた足に目線が行ってしまう・・・ 「ねぇ、孝平君・・・その、聞きたいことあるんだけど・・・いい?」 「な、なに?」  俺はあわてて目線を陽菜の顔に戻す。 「あの、投票の事なんだけど、孝平君は私に・・・いれてくれた?」 「・・・正直悩んだ」 「え?」 「俺が投票するなら陽菜しかいないって思ってた。でもさ、それで陽菜の  人気が出ちゃうとさ・・・俺から離れていきそうな気がして・・・」 「孝平君・・・」 「俺って独占欲強いみたいでさ。そのさ・・・なんていうか・・・」  陽菜の身体を見ていたことをごまかそうとして、俺はかなり恥ずかしい  本音を告白してしまった。 「その・・・えと・・・え?」  「だいじょうぶだよ、孝平君」  俺はいきなり陽菜の胸に抱かれた。 「私はね、投票の1位なんていらないの。私が欲しいのは孝平君の1番なの。  だからね、孝平君の言葉嬉しかった・・・ありがとう、孝平君」 「・・・俺の一番好きな女の子は陽菜だから」 「私の一番好きな男の子は、孝平君だよ」  俺達の唇は重なった・・・ 「ねぇ、孝平君。投票はずっと私にいれてくれたの?」 「あぁ、やっぱり陽菜しかいないと思ったから」 「ありがとう、孝平君。その、1位のご褒美欲しいんだけど、いい?」 「1位の? 俺で出来ることならいいよ」 「孝平君しか出来ない・・・ううん、孝平君だけなの」  ・・・ 「票じゃなくて、孝平君のを・・・いれてほしいな」 「・・・陽菜」 「駄目・・・かな?」 「俺がどれだけ押さえてたか知ってて言ってるのか?」 「押さえる必要なんてないんだよ、孝平君。孝平君がしたいだけ  私に・・・いれていいんだよ。だって私は孝平君のもの、だから・・・」 「陽菜!」 「孝平君・・・あんっ」 ---  そしてこのとき、階上の部屋でかなでさんが・・・と4月17日付けの  マスターうーさんのかなでさんの絵と4月20日付と朝霧玲一さんのSSに  につながるわけですね(笑)
4月23日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「陽菜の一番(未公開版)」 「おはよう、孝平君」 「おはよう、陽菜」  朝、寮の前で待ち合わせして一緒に歩く。  今の俺達の日課だった。  少し早めに出ていくのは、二人だけの静かな時間をすごしたいから。  いつものように手をつないで歩く・・・けど、いつもより元気が  無いみたいだった。 「陽菜、調子悪いのか?」 「え? ううん、だいじょうぶだよ」  いつもの笑顔でそう答える陽菜。 「そうか、無理はするなよ?」 「無理なんてしてないから大丈夫、孝平君は心配性なんだね」 「そうかな・・・陽菜だから心配しちゃうのかもな」 「え?」 「だってさ、陽菜ってがんばりすぎて、自分の中にため込むタイプだろ?」 「・・・孝平君にはかなわないな」 「俺も陽菜にはかなわないけどな」 「ふふっ、ありがとう」 「ちょっとだけ、心配事があるの」  陽菜が話してくれた心配事、それは先日結果が出たの人気投票の事だった。  学院内の有志が始めた人気投票は瞬く間に学院全ての生徒が参加するような  大がかりなものになった。  一時期生徒会でも問題にはなったものの、自主性を重んじる学院の方針を  尊重する、ということで羽目を外さない事を条件に黙認する事になった。  そして発表された人気投票の1位は、俺の彼女である陽菜だった。 「みんなが投票してくれたのは嬉しいけど、私は違うと思うの」 「それでもいいんじゃないか?」 「え?」 「みんなが陽菜に投票した、それだけ陽菜を友達と思ってくれてるって  事だと思うよ」 「そう、かな?」 「結果に胸をはるといいよ、陽菜」 「・・・うん、ありがとう」  人気投票の結果、ただそれだけのはずだった。  しかし、この後俺の考えが甘かった事を思い知る羽目になった・・・ 「・・・なんだか人が多い、よね」 「あぁ・・・」  休み時間、教室の外の廊下に集まってくる生徒の数が異常に多い。  その全ての視線が俺達の教室の中に向かっている。 「ねぇ、孝平君。これって・・・」 「・・・」  不安そうにしている陽菜、でも俺はそれ以上にいらいらしていた。 「・・・」 「孝平君?」 「あ・・・ごめん、ちょっと考え事してた」  いけないいけない、俺の気持ちより陽菜のおかれた状況を考えないと・・・ 「悠木陽菜さん、ですね。ミス修智館おめでとうございます!」 「え?」  ミス修智館? 人気投票じゃなかったのか? 「新聞部は突撃独占インタビューを行いたいと思います!」 「えっと、その・・・」 「それでは早速」 「待て」  俺は制止の声を上げる。 「何ですか? インタビューの邪魔をしないでくださいよ」 「本人の意思を無視してするものじゃないだろう?」 「報道の自由を侵害しないでください」 「個人のプライバシーは侵害していいものなのか?」 「貴方には関係ないでしょう、私はミス修智館にお話があるのですから」 「・・・」 「それでは早速始めたいと」 「生徒会役員として発言します。  本人の意思を尊重しない活動があったと見なして良いですか?」 「・・・権力を振り回すのか?」 「では、あとで監督生室でお話を聞きましょう、放課後よろしいですか?」 「・・・」  新聞部の生徒は去っていった。 「・・・ふぅ」 「ごめんなさい、孝平君。私のために」 「いや、陽菜は悪くない。周りが浮かれすぎているだけだよ」 「・・・」  陽菜の顔が曇る。  ・・・こんな陽菜は見たくない、けどこの様子だと放課後も無事にすむか  どうかわからない。  俺は今から出来うる全ての手を打つ必要があった。  今日最後の授業は青砥先生だった。  その授業も残り10分というところで、俺は挙手する。 「・・・そうか、もうそんな時間か。支倉、行って良いぞ」 「はい、それでは・・・陽菜、行こうか」 「・・・うん」  教材を鞄にしまい、俺と陽菜は一足先に教室をそっとでる。  靴に履き替えて普通に表から寮へと向かう。  その後寮の前を通り過ぎて、本敷地へと向かう。  目的地は監督生室だった。  監督生棟の扉を鍵を開けて入ってからすぐに鍵を閉める。  役員は鍵を持ってるので閉めてあっても問題ない。  そのまま2階へとあがる。 「・・・ふぅ、陽菜。お疲れさま」 「ごめんなさい・・・私の」 「そこまでだ、陽菜」 「え?」 「陽菜は悪くない、俺が保証する。だから謝る必要なんてないって  言ってるだろう?」 「でも・・・」 「こうなったら最終手段だ」 「孝平・・・んっ」  何か言おうとする陽菜の口を俺の口でふさぐ。 「んんっ・・・」 「・・・」  ピチャっという音とともにお互いの口が離れる。 「・・・孝平君、ありがとう」 「・・・」  ちょっと強引だったけど、陽菜は落ち着いたようだった。  そのとき階下で鍵が開く音がした。  俺達はその音に緊張するが、鍵を開けて入ってこれるのは役員のみ。 「おまたせ、支倉君に悠木さん」  副会長だった。 「俺が聞いた話だとね、悠木妹にアタックしようとしている部は・・・」  その後役員全員が集まった監督生室。  会長が持ち帰った情報を聞いて俺は唖然とした。  新聞部にはじまり、美術部や写真部や映画研究部など、メディアを  扱うような部全てが陽菜をねらっているそうだ。 「美術部部長はそう言うことするような人じゃないと思ったけど・・・」  体育祭の打ち合わせで会ったときのことを思い出す。 「美術部は副部長が乗り気のようだよ」 「そうですか・・・」  これはあまりに羽目を外しすぎている。 「どうする? 支倉君」  会長が俺に聞いてくる。 「まずはこの混乱を収めないといけません。その上で陽菜に元の学園生活を  楽しく送ってもらえるようにならないと駄目です」 「言うだけなら簡単だな、支倉」  東儀先輩の言うことはもっともだ。 「・・・」 「あの・・・私が取材とか受ければ何も問題無いんですよね?」 「確かにそうかもしれないな、悠木妹。だが取材だけですまないレベルに  なってきているんだよ」 「どういうこと、兄さん」 「映研はミス修智館をヒロインに映画を撮りたがってるようだ。写真部は  グラビアをとりたがってるようだし、美術部はモチーフに使いたいそうだ。  つまり、何かを受け入れた場合全てを受け入れないといけないわけだよ」 「・・・だめだ」 「孝平君?」 「それじゃ陽菜が犠牲になるだけじゃないか、そんなのは駄目だ」 「なら支倉君には良い案はあるのか?」 「・・・」  そう簡単に案が浮かべば苦労はしない。 「あの・・・会長。お聞きしたいことがあるんですけど」 「なんだい?」 「明日の放課後、講堂をお借りできます?」 「陽菜?」  講堂を借りる? 何をするつもりだ? 「悠木妹がそうしたいなら手配をしよう。いいのかい?」 「・・・はい、私がやります」 「OK、わかった。征、講堂の使用許可とそれまで生徒を押さえる手だてを  頼めるか?」 「わかった、今から行ってくる」 「お願いします、東儀先輩」 「気にするな」  そう言うと東儀先輩は監督生室から出ていった。 「それじゃぁ俺達は仕事をしなくちゃな。支倉君は帰ってもいいよ・・・  と、言いたいけど今は無理だな」  会長は窓側にそっと立つと外をうかがった。  普段人気のない本敷地の奥にある監督生室の玄関の広場に何人かの生徒がいる。 「嗅ぎつけたかな?」 「まったく、しつこいわね・・・支倉君に悠木さん。しばらくここにいた方が  いいわ」 「ご迷惑をかけてすみません」 「いや、迷惑なんかじゃないよ。監督生室に綺麗な花が増えたんだ。  迷惑どころは喜ぶべき事だよ」 「兄さん・・・時と場合を考えてよ」  副会長のため息が聞こえた。  結局日が落ちるまで生徒会の仕事を陽菜と一緒にすることになった。 「お手伝い出来る事はあまりないと思いますけど」  そういう陽菜だったけど、書類の整理や資料を探し出すことに活躍。 「なぁ、悠木妹も生徒会に入らないかい?」  会長にスカウトされるほどだった。  日が暮れた後、役員全員そろって監督生室を後にする。  そこに陽菜がいない事を見ると生徒も散っていった。  その後俺は寮の屋上から会長の手を借りて外へ降りてから監督生室に戻る。 「待たせたね、陽菜」 「ううん、だいじょうぶだよ」  そして隠れるように寮へと歩いて戻ってきた。 「ひなちゃん、こーへー、こっちこっち」  寮の裏口からかなでさんが手招きしてくれている。 「今ならだいじょうぶだから、こーへーの部屋へ!」 「ふぅ、やっと帰ってこれた」 「ずっとひなちゃんを守ってくれてたんだよね、偉いぞこーへー」  そう言うと俺の頭をなでる。 「俺は何も出来なかったですよ・・・」 「そうかな? こーへーだけが出来ることをしてたと思うよ」 「・・うん、孝平君だけが出来ること、してくれてた」  俺が出来ること・・・何かしただろうか? 「でね、ひなちゃん。B棟の入り口はやっぱり駄目だから、私の部屋経由で  帰るしかないと思うよ」  かなでさんの話だと、談話室や女性階への入り口付近にいつもより生徒が  多く残ってるそうだ。 「しつこいな」 「全く、私のヨメをなんだと思ってるんだ」 「お姉ちゃん、声大きいよ」 「おっと・・・とりあえず消灯後に迎えにくるからここでしばらく  いるしか無いみたい」 「ごめんな、何もないところだけど」 「ううん、そんなこと無いよ」 「うんうん、それじゃぁ私はまるちゃんの所行って来るからひなちゃん、  消灯後にまたね」 「・・・」 「・・・」  何もすることが無いので、二人でお茶を飲む。 「あのさ、陽菜。明日講堂で何をするつもりなの?」 「私の今の気持ちをみんなにちゃんと言うつもりなんだけど・・・  あはは、今になって怖くなって来ちゃった」  陽菜の肩がかすかにふるえる。  俺は陽菜の肩をそっと抱きしめる。 「陽菜が何をしようとするのかわからないけど、俺は信じてるから」 「孝平君・・・ありがとう」  目を閉じる陽菜、俺はそんな陽菜の唇に俺の唇を重ねる。 「ん・・・孝平君。私に孝平君の勇気を・・・ください」 「今日はお集まりありがとうございます。  今回の人気投票にみなさんが投票してくださったおかげで1位に  なることができました。私はとても嬉しく思います」  翌日の講堂での陽菜のスピーチが始まった。  講堂内には有志という形であつまった、生徒が詰めかけていた。  その中に新聞部を始め各部の面々も集まっていた。  俺は舞台の端で陽菜を見守っていた。 「でも、私は・・・誰のお誘いも受けません。だって私は・・・」  陽菜は言葉を句切る。 「私は、孝平君の彼女ですから」  その瞬間、会場内に悲鳴が上がった。  陽菜は俺の方に駆け寄ってきて、そのまま抱きついてきた。  そしてみんなの見てる前で俺に口づけをしてきた。  このとき会場の中を満たしたのは悲鳴ではなく歓声だった。  この後シスター天池にみっちりお説教を受けた。  監督生室では会長にからかわれたりと大変な1日になったが  陽菜の俺の彼女宣言のおかげで次の日の校内新聞が騒がれただけで  騒ぎは収束していった。  そしてこのときの話は修智館学院で語り継がれる伝説となったそうだ・・・
4月24日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory            楽屋裏狂想曲人気投票編「瑛里華が1番」  副会長敗れる!  ミス修智館に選ばれたのは5年の悠木陽菜嬢! 「瑛里華もがんばったけど、悠木妹の方が一枚上手だったわけだな」 「・・・」  監督生室に会長は校内新聞の号外を持ち込んできた。  この前の人気投票の結果が掲載されてる校内新聞号外。  その見出しは新たなミス修智館の誕生と同じくらいの大きさで  副会長が敗れた事がかかれていた。  前予想では副会長がダントツだったにも関わらず僅差の結果敗れる。  確かに記事としてはおもしろいのかもしれない。  だが・・・ 「・・・兄さん、仕事するの、しないの?」 「おー、こわっ」  当人からすれば屈辱的な事なのだろう。  新聞の記事を見てからの瑛里華の機嫌が危険なレベルにまで悪くなっていた。 「孝平! ぼーっとしてないで、そっちの書類頼むわよ!。  白は・・・そっちをお願いするわ」 「は、はい!」  白ちゃん、瑛里華の怒りの煽りを受けちゃってるな。  少し震えてるような気もする。 「ふぅ・・・瑛里華。少し落ち着けよ」 「私は別にあわててなんていないわよ! 孝平こそ口を動かす暇あったら  手を動かす!」 「・・・わかった」  こりゃ言葉で説得できそうにはないな。  とりあえずは仕事をこなすしかないか。  俺はいつもより集中し、仕事のペースをあげることにした。  仕事を終えての寮への帰り道、瑛里華は不機嫌なままだった。 「なぁ、瑛里華・・・機嫌なおせよ」 「私は機嫌が悪くなっていないわ」 「・・・じゃぁ、なんでそんな顔してるんだ?」 「悪かったわね、これが私の顔よ」 「・・・ふぅ。まったく」  俺は呆れて、そのまま瑛里華に近づく。 「な、何よ・・・え?」  そしてそっと瑛里華を抱きしめた。 「な、なんで・・・こんなところでこんなことを・・・」 「だって、瑛里華がそうして欲しそうな顔をしてたから」 「そんな顔してなんか・・・」 「してないのか?」 「・・・ううん」 「・・・」 「・・・」  俺はそっと瑛里華の髪を手で梳いて、落ち着くまでまった。 「私ね・・・悔しかったの」  俺に抱きしめられたまま、瑛里華が語りだした。 「あんなにみんなが応援してくれて・・・何より孝平が応援して  くれたのに・・・勝てなかったの」 「・・・」 「結果が出せなかったのよ! 応援してくれたみんなに・・・  応援してくれた孝平に申し訳なくて、悔しくて・・・」  ・・・俺は無言のまま瑛里華の両肩をもって、距離をあける。 「孝平?」  そして瑛里華の目をちゃんと見て俺はこう伝えた。 「馬鹿」 「・・・え?」 「馬鹿って言ったんだ」 「なんで私が馬鹿なのよ? こういうときは優しく慰めてくれる  ものじゃないの?」 「それは後だ」  というか瑛里華は何かの漫画の読み過ぎじゃないか? 「あのな、瑛里華。瑛里華は結果のためだけにがんばったのか?」 「・・・結果は、結果よ」 「なら結果が伴わなかったら、それまでの過程はどうなるんだ?  無くなってしまうのか?」 「そんな訳ないじゃない!」 「なら、そう言うことだよ、瑛里華。みんながこの人気投票に一喜一憂し  楽しんだ10日間だった。なら、それでいいじゃないか。  それこそ瑛里華が望む、楽しい学園生活じゃないか」 「あ」 「まったく、瑛里華は裏方の時はそれしか考えてなかったのにな。  ステージに立ってはしゃぎすぎてそれを忘れるなんて・・・」  まるで、子供みたいだな。それは口には出さなかった。 「なによ、孝平。その全てを知ってるみたいな顔は・・・」 「さぁ、なんだろうな?」 「孝平!」 「はは」  いつもの副会長に、瑛里華に戻った。 「俺の一番の瑛里華はやっぱりこうじゃなくっちゃな。  寮へ帰ろうか、瑛里華」 「・・・」 「瑛里華?」  呆気にとられてるような顔をしてた瑛里華が、満面な笑みを浮かべた。  思わず見とれる俺だったが 「そっかぁ、私は孝平の一番なんだ」 「なっ!」  その瑛里華の一言に言葉を失った。心を読まれたのか?  それとも考えが口に出てしまったのか? 「くすっ、照れない照れない」 「な、なな・・・」  俺は言葉にならない声を出すことしかできない。 「行きましょう、孝平!」  俺の手をとって駆け出す瑛里華。 「私がんばるわ、ずっと孝平の一番でいられるように!」
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