Clochette カミカゼ☆エクスプローラー shortstory
*このページに直接来られた方へ、TOPページはこちらです。

 前のお話はこちら ・カミカゼ☆エクスプローラー aftershortstory            おっぱい☆エクスプローラー!セカンド
・カミカゼ☆エクスプローラー! sideshortstory                    「おっぱいエクスプローラー! サード」 「速瀬、そっちに行った!」 「了解です、班長!」  インカム越しに聞こえる先輩の声に俺は精神を集中する。  風紀委員の取り締まり中に発見した不審者を先輩のアンブラが追い詰める。  その先で待ち構える俺は不審者を足止めする役割だ、その後先輩のアンブラで取り押さえる作戦だ。 「……来た!」  遠くから走ってくる不審者と思われる男性に意識を向ける。  大きなカメラを抱えては走りづらいだろう、だが男性にとってそれは重要なアイテムであり、  中には貴重なデータが詰まっているのだろう。  捨てる気は無いようだ。 「……よし」  俺は精神を再度集中し、俺の中にあるメティスを起動させるべくメティスネームを…… 「え?」  言葉が浮かんでこない。 「なぜ……?」  わからない、確かに俺のメティス「ジョーカー」が起動したのはわかる、そして先輩のアンブラをコピーしているはず。 「コピー……いつ、したんだ?」  思い返そうと記憶をたどるが、いつコピーしたのか覚えてない。  不審者がいるという話を聞いてから行っているパトロール、その巡回を始める前に先輩からアンブラをコピーしたはず。 「それは、いつの話だ?」 「速瀬!」  インカム越しに聞こえた先輩の声に、不審者が目の前まで来ていることに気づいた。 「いつのまに!」  不審者は道路の脇に立ち尽くしてる俺に目をとめず走り抜けようとする。 「させるか!」  メティスが使えなくても足止めくらいは出来る。  俺は不審者に向かって駆けだした…… 「ご苦労さま、速瀬に宇佐見」  足止めに成功した不審者を俺と先輩で取り押さえ、その場にアルゴノートも集まってきた。 「速瀬君、だいじょうぶだった?」 「だいじょうぶよ、風花。慶司がこれくらいでどーこーなる頭してなから」 「琴羽、なんだか馬鹿にされてるような言い方に聞こえるぞ?」 「そう?」 「もう、琴羽ちゃんったら」  そんなやりとりをしてる中、近濠先輩と景浦は犯人を確認していた。 「ふむ、確かにデータがあるな、これは立派な証拠になる」  押収したカメラを確認しながら近濠先輩がニヤリと笑ってた。 「ぽち、警察に引き渡しに行こう」 「はい」 「それじゃぁ私たちも行くわ、お疲れ様でした」  アルゴノートが去って行って、この場には俺と先輩だけが残った。 「今回の盗撮は普通の犯人でしたね」 「くすっ、普通の犯人って言うのもおかしな話よね」 「確かに」  澄之江で起こる事件はその性質上、メティスがらみの物が多い。  CSCが以前の事件により事業の大幅な減少を余儀なくされている現在、地元警察だけではメティス犯罪を  取り締まる事が難しくなっていた。  だから俺たちが手伝っている、という訳では無い。  俺たちは学生で学業が本分だ。メティス犯罪は警察や大人に任せておけば良いという教師陣の話もわかる。  出来ることをする、それが今のアルゴノートと、風紀委員の方針だった。  今回の事件も澄之江の制服の女子の盗撮写真が出回っている事が発覚し、アルゴノートと風紀委員の連携で  自主的なパトロールを行っていただけにすぎない。その犯人と思わしき人も確保したし、これで一段落だ。 「ねぇ、けーくん」 「なんですか?」 「調子、悪いの?」 「……え?」 「さっき、メティス使わなかったでしょう?」 「はぁ……見てましたか」 「当たり前だよ、だってけーくんの事だもん」 「……」  言われることの意味に俺は顔を真っ赤にさせていた。 「で、けーくん。メティスは使わなかったの? それとも使えなかったの?」  ……さすがは沙織先輩、いきなり核心を突いてきた。 「調子が悪いのかもしれません」  沙織先輩との間に嘘はつかない、それが約束だから正直に話す。 「ジョーカーが起動した事は間違いないです、だから俺の中に何かのメティスがあるのもわかります」 「何かの?」 「えぇ、いつも沙織先輩と一緒にいるからアンブラのはずなんですけどね。  さっき使おうとしたら浮かんでこなかったんですよ、アンブラのメティスネーム」 「……それって!」 「はい、俺は沙織先輩とキスする前に誰かのメティスをコピーしています」 「ちょっ、けーくん! こんなところでキ・・・キスの話しないでよ!」 「でも事実ですから。それじゃぁ部屋に戻ってからキスの話の続きしましょう」 「もぅ、けーくんのいぢわる!」  どちらにしろ往来の真ん中でメティスの能力の話を堂々とするのは危険なので、場所を移すことにした。 「はい、どうぞ」 「ありがとうございます」  風紀委員の部室で沙織先輩が淹れてくれたお茶を飲む。うん、いつ飲んでも沙織先輩のお茶は最高だ。 「ふぅ、それでけーくん。メティスの話だけど……実習室に行った方がいい?」 「あ、いえ、大丈夫です。たぶん起動できませんから」 「コピーしたメティスが使えないの?」 「はい、俺のジョーカーはメティスをコピーする、正確に言えば触れたメティスを限りなく  忠実に再現するメティスです」  俺はお茶を一口飲んで話を進める。 「ですが、コピーしてもそのメティスを一度見るか、メティスネームと説明を受けないと使えないんです」 「そうだったんだ」 「あ、沙織先輩。このこと黙っててくださいね」 「うん、私とけーくんだけの秘密だね」  そう言って微笑む沙織先輩の顔はとても嬉しそうだった。 「あ、ごめんなさい。それで今はどうなの?」 「沙織先輩、アンブラをお願いできますか?」 「アンブラ!」  俺の意図をくんでくれた沙織先輩はすぐに3体のアンブラを出してくれる。  そのうち1体が俺の足下にじゃれついてきた。 「サンキュー、トリス」  トリスの頭をなでる。 「トリスだってわかったの?」 「えぇ、最近わかるようになってきましたから」  外見は全く同じの沙織先輩のアンブラ、だけどよくよく見ると動きに癖があることに気づいた。  それさえ気づけば判別は可能だ。って、話がそれたか。 「……どう?」  トリスに触れていても、コピーした感覚が無い。 「やっぱり今朝沙織先輩とのキ……会う前ににジョーカーが何かをコピーしたのは間違いありません」  キスといおうとしたけど、真面目な雰囲気なので普通に答えることにした。 「それで心当たりはある?」 「……」  今日1日の事を思い出してみる。  ジョーカーは睡眠で意識が途絶えたり、一定時間でコピーしたメティスは消滅する。  だから朝起きた時、ジョーカーはメティスを複製出来る起動状態になっている。 「……おかしいな、今朝沙織先輩に会うまで誰とも触れていない」  一番最初に触れる機会があるとしたらルームメイトの航平だが、今朝から出かけていなかった。  それに航平はメティスパサーではない。 「可能性としては沙織先輩に会うまでに遠隔系のメティスに触れてしまい、それをコピーした。  俺はそのメティスを知らないから使うことが出来ない。それくらいの想像しか出来ないです」  あり得ない話じゃないけど、違う気がする、でも。 「とりあえず今日はこの話はもう止めましょう、俺がもし何らかのメティスの受けてたとしても、  一晩寝たら消えるんですから大丈夫です」 「けーくんがそこまで言うなら……でも、理由わかったらちゃんと教えてね」 「わかってます、俺は沙織先輩を……沙織を悲しませたくないですから」 「……うん」  二人の影は重なる、重なった唇から沙織の温かい気持ちは伝わってくるけど、メティスは流れ込んでこなかった。 「あ、けーくん!」  翌朝、ヴィルフランシュで待ち合わせってメール来てたんだけど 「なんで制服着てるんですか!」 「風花がどうしても外せない用事があるから私が代わってあげたの」 「そうでしたか」 「それよりもけーくん……」  沙織先輩はそっと俺の手を握ってくる。 「……どう、かな?」  上目遣いで訪ねてくる沙織先輩が可愛すぎて思わず抱きしめたくなるのを理性を総動員して我慢する。 「……駄目、ですね」  沙織先輩の心配な気持ちと、暖かさは流れてくる、けどメティス波の流れは全く感じなかった。 「心配かけてすみません、もう少しいろいろと調べてみます」 「けーくんがそう言うのなら……」  沙織先輩の顔が曇る、力になれないのが悔しいのだろう。 「……でも、その前に朝食食べていこうと思います、可愛い沙織分も補給できそうですし」 「え? や、やだ、そんな……」  俺の褒め言葉にうろたえる沙織先輩が可愛すぎていろいろと辛い! 「だってこの制服私に似合ってないでしょう?」 「そんなことありません、とっても似合ってて可愛いです」  確かに風花や琴羽が着たときと比べれば胸の強調度が少なすぎる気がする。  だがそんなことは関係ない、俺の沙織がこんなに可愛い格好なのだ、お持ち帰りしても罰が当たらないと思う。 「……」  沙織先輩が突然自分の胸を隠すように両手で覆う。 「沙織先輩?」 「あ、ごめんなさい。なんだかけーくん以外の人に見られてるような気がしたの」  俺は周りを見回す、まだ開店直後の時間で客は俺しかいない。 「気のせい……じゃないんですよね?」  昔の俺なら気のせいか、それとも俺の視線が熱すぎるとかの冗談で済ませただろう。  だが、俺の中でこれがキーになってるという、確信めいた物があった。 「すみません、沙織先輩。ちょっとだけ確認したいことあるので良いでしょうか?」 「なに?」  俺はじっと沙織先輩の目を見る。 「け、けーくん?」 「今俺以外の視線を感じましたか?」 「え、えっと……けーくんの熱い視線だけだったと思う」 「それじゃぁ次です、先に謝っておきます、ごめんなさい」 「え?」  俺は沙織先輩の足下から視線をなめるように上へ上げていく。 「ちょっと、けーくん、なんだかえっちだよぅ」  恥じらう沙織可愛い以下略。  そして視線が胸のところに来たとき、沙織先輩はさっきと同じく胸を隠す仕草をとる。 「沙織先輩?」 「ごめんなさい、やっぱりけーくん以外の人に見られてると思う」  そのとき閃いたことがあった。 「……沙織先輩、今夜あいてますか?」 「え? うん、特に予定は無いけど?」 「では後でメールしますね、俺は準備してきます」  思った通りなら俺のジョーカーの不調の理由がわかる。  俺は多少の無茶を通すため、学園へと向かった。 「けーくん、朝ご飯ちゃんと食べてくれると良いんだけどな」  その夜、俺は沙織先輩を風紀委員会室へと呼び出した。 「どうして夜にこんなところに呼び出したの、けーくん?」 「この部屋に一晩いることは許可取ってあるので大丈夫です」 「この部屋で……一晩?」  沙織先輩は部屋を見回す。壁いっぱいの本棚に中央には会議にも使う長机、その周りに椅子。 「……あ」  入り口から一番遠い奥、簡単には見えない場所に俺は布団を用意しておいた。 「ねぇ、けーくん。これって……」 「本音から言います、沙織先輩。エッチしましょう」 「え、えぇぇぇぇぇ!?」  思いっきり悲鳴を上げられてしまった、俺とエッチするの嫌なのだろうか…そう思うと凹んでくる。 「あ、違うの、けーくんとえっちするのが嫌じゃないんだよ?」 「本当ですかっ!!」 「う、うん。でもここは風紀委員室だし」 「前にもしましたよね、それにここでお尻で」 「言わないで、けーくんのいぢわる」  沙織先輩が可愛くすねてしまった。 「ごめんなさい、先輩があまりに可愛くて」 「か、可愛いって言えば何でも許される訳じゃないんだからね!」  そう言いつつも許してくれる沙織先輩はやっぱり可愛かった。 「それで、けーくん。本音を先に聞いたけど建前は何なの?」 「はい、建前は夜ずっと沙織先輩と抱き合って眠りたい事です」 「だ、抱き合う!?」 「はい、それもお互い裸で」 「ななななな、なんで!?」 「これはさっき閃いたことなんですけどね」  俺は沙織先輩に説明した。  俺のジョーカーは長い間意識を失っている状態、つまり睡眠状態でもコピーしたメティスはリセットされる。  だから俺が起きた時、ジョーカーが起動したとき沙織先輩に触れていれば間違いなくアンブラをコピーできるはず。 「なるほどね」 「だから普通に抱き合ってただけじゃ接触出来ない場合があるので裸の方がいいかなぁ、って思いまして……  でもそうなるとたぶん我慢できない、というのが本音でして……」 「っ……」 「だけど、俺自身の確認のために沙織先輩を抱きたくないから、だから確認じゃなくて本気で抱きたいから、その……」 「うん、私もけーくんに本気で愛されるの好きだから……いいよ」  俺は沙織先輩の手をとって、奥の布団へとエスコートした。 「ここは……って考えるまでも無いな」  もう何度か来ている、桃色の闇の空間。 「というか今回はペルセポネは使ってないはずなんだけどな、どうして俺はここにいるんだ?」  昨夜のことを思い出す、沙織先輩と激しく愛し合って、そのまま裸のまま抱き合って眠ったはず。  では何故この空間に? もしかして寝ぼけてペルセポネを使ったとか? 「それはありえないよな」  俺は周りを見回す、何処を見ても桃色一色。あ、だんだん目が痛くなってきた。 「ふぅ、そろそろ出てこいよ、おっぱいエクスプローラー!」  ふざけたメティスの名前を呼ぶ、それはすなわちメティスネームを唱えることとなり  そのメティスを起動させることにもなる。 「なんだ……と!?」  桃色の空間に浮かんだのはこぶりなおっぱいが一つだけ、今までと展開が違っていた。  そんなことよりもそのおっぱいには見覚えがある。 「なんで沙織先輩のおっぱいが?」 「当たり前であろう、お前がそれしか見ていないからだ」  突然世界が語り出した。 「……」 「あのぉ、何か言うことは無いんですか? ほら、こういうときは驚いた台詞とか  また会ったなとか、待っていたとか?」 「相変わらず残念以下略」 「以下略ってなんだよ、ちゃんと言ってくれないとこっちの用意した台詞言えないじゃないか!!」 「あー、それじゃぁ本題に入る前に一応聞くけど、いいか?」 「あぁ、よろしく頼む」  相変わらずふざけたメティスだ、最初にとりついたのが航平だったからだろうな。 「お前はあのおっぱいエクスプローラー!なのか」 「はーははっはっはっ、ちょっと台詞が棒読みなのが気になるが気にしないでおこう!」  調子よく語り出した。 「我が名はおっぱいエクスプローラー! おっぱいよ! 私は、帰ってきた!!」 「……」 「あのぉ、反応とか合いの手とか無いんでしょうか?」 「あ、あぁ、あまりに予想通りに残念すぎて何も言えなかったよ」 「残念じゃないよ! 格好良かったじゃない!!」 「あーはいはい、わかったわかった、いろいろ聞きたいことあるし少しつきあってやろう」 「本当!?」 「あぁ」 「……お前、良いやつだよな、うんうん」 「……」  ほんと、残念な性格だよな、このメティス。 「ところでさ、確か次回出てくるときはおっぱい☆リコレクション!に進化してくるんじゃ無かったっけ?」 「……じ、じつはだな、今は力を失ってセカンドの領域にさえ届いていないのだ。だから進化出来なかったのだ」 「そうか、残念だったな。そしてお前は次にこう言う。残念じゃないよ! って」 「残念じゃないよ! はっ!!」  構われたことが嬉しいのだろう、反応がうきうきしてるのがわかる。本当に残念なメティスだ。 「……ん? 力を失った?」 「そうだ、謎の黒いメティスに喰われた私は消滅するはずだったのだ、だがほんのかけらだけ  本当にちょびっとのかけらだけ黒い闇に飲み込まれずにすんだのだ」  ペルセポネに飲み込まれなかったかけら? 「そして私は意識の無いまま、かけらの状態でその身体の中でずっと漂っていた、そのまま消滅を待つだけのために」  顔は見えないけど、相手が雰囲気に酔ってるのがわかる。 「だが、そんな私の宿主の思いが、私を目覚めさせたのだ!!」 「宿主の思い、だと?」 「あぁ、宿主の一途な思いは一人の可憐なちっぱいに注がれていた!!」 「おい! 沙織先輩をちっぱいというな! ちゃんと年相応の標準サイズなんだぞ!」  周りが標準以上なだけで、と心の中で付け加えておく。 「いやぁ、私も最初はどうかとおもったのだがな、おっぱいは大きいだけじゃないんだって理解できたのだ」 「話をきけよ!」 「それにだな、今は貧乳の時代だそうではないか、新たな言語で品格ある乳、「品乳」まで出来たそうだし」  品格ある乳……そういう意味では沙織先輩にはぴったしだと思う、けど! 「おっぱいエクスプローラー! 一つ聞きたい、そして一つ教えたい」 「を!? 今の言い方格好良いな、覚えておこう。では聞きたいことを言いたまえ」  戯れ言には耳を貸さずに、俺は聞きたいことを問う。 「おっぱいエクスプローラー! お前はずっと俺の中にいたんだよな、ということは沙織先輩のおっぱいを見たのか?」 「あぁ、感度といい柔らかさといい、すばらしい品乳だ。それを自由に出来るメティスパサーに宿れて私は幸せ者だ」 「そうか……」 「あぁ、では教えて頂ける事を聞かせてもらおう、品乳のバストサイズなら知ってるから教わらなくてもだいじょうぶだぞ?」 「……おっぱいエクスプローラー! 沙織先輩のおっぱいを見て良いのは俺だけだ! だから……消えろ」  俺の中にいたおっぱいエクスプローラー!を起動させることで俺のジョーカーが起動出来る状態になった。  そして、俺の腕の中で眠ってる沙織先輩と触れあってる俺はアンブラをコピーしている、だから出来る。 「ペルセポネ!」  俺の背後から桃色の闇は漆黒の闇に塗り替えられていく。 「もう2度と沙織先輩に近づくな!」 「……今回はここまでのようだな」  いつもならわめき散らすはずのおっぱいエクスプローラー!は妙に落ち着いていた。  何か策でもあるのか? 「私は、私を必要とする物がいる限り必ず現れる!!」 「……」 「たとえ私では無くても、第2第3のおっぱいエクスプローラー!が必ず現れるだろう!!」 「……」 「あのぉ、何か言うことないんですか? そのたびに俺がお前を倒す、とか」 「残念以下略」 「だから残念じゃないよ! お願いだから省略しないで最後まで言おうよ!!」 「いいから消えろ!!」  桃色の闇のほとんどが漆黒に飲まれていく、今度はかけら一つ残さないようすべてを飲み込ませるつもりだ。 「では、CFの時にまた会おう!」  桃色がすべて漆黒に塗りつぶされた。 「CFって何だよ……」 「終わったの? けーくん」 「えぇ、終わったようです」  何も見えない漆黒の空間、でも俺の後ろから沙織先輩が抱き留めてくれるのがわかった。 「っ!?」  俺の背中に当たる先が少し堅くなってる二つの膨らみがある。 「さ、沙織先輩?」 「なぁに、けーくん」 「その、当たってるんですけど」 「当ててるんだもん♪」  ものすごく上機嫌な沙織先輩。 「別におかしく無いじゃない、だって私のおっぱいを見ていいのはけーくんだけなんでしょう?」  沙織先輩がここにいるって言うことは、そういうことだよな。 「ねぇ、けーくん。けーくんが見ていいのはおっぱいだけなの?」 「……沙織のすべては俺の物だ」 「うん! けーくん、大好き!」  こうして第3の事件は被害が起きていなかったこともあり、人知れず解決した事になった。 「人類はいずれ高度なメティスを持つようになり、人類の進化がさらに進めば肉体という概念を捨て、  メティス波のみの存在として進化する、という論文を知ってるか?」  一応今回の件も近濠先輩に報告だけはしておいた。本当はする必要ないのだが後でばれると面倒だったからだ。  その件で話があると、放課後アルゴノートの部室に俺は呼ばれていた。 「メティス・ビーイングですね、論文は読んだことはありませんが、それがどうしたんです……っ?」  近濠先輩は真面目なときは関係無い話をしないと思ってたので、その意図にすぐに気がついた。 「さすがは速瀬、話が早いな」  近濠先輩はにやりと笑う。 「では前回、前々回の話をしよう。あのメティスだが、もしかしたらメティスの正当な進化形かもしれないと研究報告がされた」 「正当な進化?」  確かにメティス波のみの存在となるメティス・ビーイングの理論の通りだと、メティス単体で存在してたアレは進化の究極系となる。 「今回の件、メティスパサーが発現させたメティスが身体を捨てる、それはそのメティスパサーにとってではないという話だよ」 「近濠先輩、それってメティス自体がメティスパサーを捨てる、という意味ですか?」 「そうかもしれないと言うことだ、実際前回の事件ではそうだっただろう?」  確かに前回の時は航平はほとんど関係無かった。 「まさか、メティスの正当な進化の最初がおっぱいエクスプローラー!だなんてな……後世にどう語るんだろうな?」  その様子を想像してるのか、ものすごく楽しそうな顔をしてる近濠先輩。  ……無かったことに出来ないのかな、と心の底から俺は思った。
[ 元いたページへ ]