麻衣誕生日記念SS Happy Happening Birthday
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麻衣誕生日記念SS
Happy Happening Birthday
−1−

「静かだね、お兄ちゃん」
「そうだな」
「私たちの他には誰もいないみたい」
麻衣は温泉に浸かりながらそっと俺の肩に寄り添ってきた。
俺は麻衣の肩に手を回して抱き留める。
川のせせらぎの音と、風が木々を揺らす静かな音しか聞こえない秘湯。
その秘湯に俺達は来ていた。

8月3日、麻衣の誕生日。
いつからだったか、いや、それは忘れもしないあの時。
麻衣が俺の妹から恋人になった年から、麻衣の誕生日には二人きりで
出かけることになった。
学生である俺には先立つものがないため、ちょっとした遠出しか出来ないが
麻衣はこのお出かけを楽しみにしてくれた。
今年はほんのちょっとだけ遠くに、ハイキングにした。

静かな森林の中、風がそよぐ音しか聞こえないようなハイキングコース。
麻衣と二人で汗だくになりながらハイキングを楽しむ。
「お兄ちゃん、川の流れる音がするよ?」
麻衣がそう言うのと同時に俺は地図を取り出す。
「この近くに川が流れてるけど、コースからは外れるみたいだな」
「行けるかな?」
「道はあるからだいじょうぶみたい。」
「行こっ!お兄ちゃん」
そう言って俺の手をとって駆け出す。

ハイキングコースから脇道にそれてしばらく歩くと綺麗な川が目の前に現れた。
「わぁ・・・水が綺麗だよ、お兄ちゃん!」
「そのまま飲めそうだな」
俺はそっと川の水を両手ですくう。
「わわ、飲むの?」
「顔を洗うだけだよ」
そういってからおもいっきり顔に水をかける。
冷たい川の水が顔面を刺激する、生き返るようだ。
「私も!」
麻衣もまねをするように顔を洗った。
「つめたくて気持ちいい!」

「ねぇ、お兄ちゃん。あの立て札なんだろう?」
「立て札?」
麻衣が近辺を歩き回っていた、その先に何かあるらしい。
俺は麻衣の所までいってみると、さっきいた場所から死角になった場所、
少し川の上流に何か立て札らしき物が見えた。
「行ってみない?」
「そうだな」

その立て札には温泉の案内が書かれていた。
「温泉だって、入っていかない?」
「俺は構わないが・・・」
案内によると、もう少し上流に温泉がわき出てるそうだ。
地図で確認してみたが、載っていない。本当にあるのだろうか?
「まぁ、いってみるか」
「うんっ!」

河原沿いに上流に向かって歩いてく。
すぐに温泉らしき物が見えてきた。
「ここが温泉なんだ、すごいね!」
「あぁ・・・」
河原の横、というか河原だな。
川とはつながってはいないが、お湯がたまってる一角がある。
その自然に出来た岩の浴槽、というか岩を集めて作ったらしい浴槽。
その中から泡が出ている。源泉かけ流しっていう物だろう。
「ねぇ、暖かいよ?」
「どれどれ」
麻衣が手を入れてる所に俺も手を入れてみる。
確かに暖かいお湯だった。
「お兄ちゃん、折角だから入っていかない?」
「それは構わないが・・・ここ外だぞ?」
「だいじょうぶ、こんな事もあろうかと水着を持ってきました!」
そう言うと麻衣はリュックから水着を取り出した。
「準備いいな・・・」
「うん、本当は川があったときの為だったんだけどね」
麻衣は照れながらそう答えた。
「俺は水着持ってきてないぞ」
「お兄ちゃんは男の子だからタオルだけでだいじょうぶ、ね?」
麻衣に上目つかいで言われると俺は弱い。
「・・・そうだな。まぁ、なんとかなるだろう」

そういう訳で、秘湯と呼ばれるような温泉に二人っきりでつかっていた。

 
「ちょっとのぼせちゃったかなぁ」
そう言って立ち上がる麻衣。
水着に着替えて、まわりには俺以外の人がいないのだが何故かTシャツを
羽織っていた。
なんでTシャツ着てるのか? と訪ねたら
「もしも、お兄ちゃん以外の人がここにきたら、恥ずかしいから」
だそうだ。女心は俺には良く分からない。
俺はタオルを腰に巻いただけで入浴してるのだから、俺の方が
よっぽど恥ずかしいのだが。

「そうだな、そろそろ戻るか。だいぶ寄り道しちゃってるからな」
「うん、それじゃぁお先にあがるね。それと、こっちを見ちゃだめだからね?」
「・・・あぁ」
俺達は温泉からあがり、お互い背を向けた状態で着替え始める。
麻衣は大きなバスタオルを身体に羽織って着替え、俺はそのまま身体をふいて
服に着替えた。
着替え終わった俺は空を見上げる、心なしか雲が多くなってきたように見える。
「おまたせー」
「あぁ、それじゃぁコースまで戻るか」
「うん!」

−2−

「麻衣、こっちに」
「うん」
雨が降ってきたか、と思った直後にはどしゃぶりになっていた。
ハイキングコースに雨宿りできる建物はなく、大きな樹の陰に入る。
「雨宿り・・・にはならないか。」
これだけ大降りになると大きな樹の下でも雨はほとんど防げない。
ないよりはまし、という程度だ。
「山の天気は変わりやすいって言うけど、天気予報では何も言ってなかったよな?」
「・・・」
「麻衣?」
「あ、なに?」
「だいじょうぶか? 疲れたか?」
「ううん、なんでもない」
麻衣のやつ。もしかして・・・
その時前触れもなく、まぶしい光と大きな音と、
「きゃぁっ!」
麻衣の悲鳴が聞こえて、俺は麻衣に抱きつかれていた。
「お兄ちゃん、恐いよ」
「だいじょうぶだよ」
俺はそっと麻衣を抱きしめ、髪をなでながら麻衣が落ち着くまで待った。
その後も雷の音は聞こえたが、だんだん遠くなっていった。
気がつくと、雨は小降りになっていた。
「・・・お兄ちゃん?」
「どうした?」
「雨、あがりそうだね」
「あぁ」
「あの・・・そろそろ」
その時、俺はずっと麻衣を抱き留めていたことに今更ながら気がついた。
「あ・・・ごめん」
俺は慌てて両手をはなしたその時、俺の唇にやさしい感触がふれた。
「お兄ちゃん、ありがとう。とっても安心だったよ」
「・・・」
「もう、帰ろうか? お姉ちゃんも心配してると思うし」
「・・・」
「お兄ちゃん?」
「あ、あぁ・・・」
不意打ちは卑怯だと思うぞ? 麻衣。


「復旧は?」
「申し訳ありません、今日は無理かと・・・」
ぬかるんだ道をなんとか抜けてコース終点ある、駅に着いた俺達が最初に見たのは
運休のお知らせ、と書かれてた看板だった。
先ほどの雷雨で線路の一部に土砂がながれてしまったらしい。
酷い被害ではないらしいが、未だ天候が安定しておらず二次災害の恐れがある為
今日の復旧は無理とのことだ。
「お兄ちゃん・・・」
麻衣は不安そうに俺のことを見ている。
「だいじょうぶだよ、麻衣。なんとかなるって」
とは言ったものの、電車が動いてなければ帰れない。
土砂崩れが起きた現場は、道路と併走してる区間なので道も今は封鎖されてる。
どう考えても今日は帰ることは出来そうにない。
その時俺は麻衣の異常に気付いた。
うつむいてる麻衣が小刻みに震えてる。
「麻衣、寒いのか?」
「だいじょうぶだよ」
夏とはいえ、雨に濡れた衣服は体温を奪い続ける。
このままだと麻衣は体調を崩してしまう。

「帰れないなら帰らなければ良いだけだ」
「え?」
俺は麻衣の返事を待たずに、駅の案内所で近場の宿を探し始める。
「どっちにしろ帰れないなら泊まるしかないだろう?」
「でも、お姉ちゃんには泊まるなんて言ってないし」
「すぐに電話するから大丈夫、それよりも今は宿の確保が先。
 いつまでも濡れたままではいられないからな」
駅の近くにある温泉街、何件かは部屋の空きが無かった。
同じように帰れない人が宿泊してるらしいが、少し離れた温泉宿に
部屋を取ることができた。

宿までの移動中、姉さんには電話で事情を説明しておく。
土砂崩れのニュースは満弦ヶ崎でも報道されており、姉さんも心配していた。
電話が遅かった事に怒られたくらいだ。
電話の最後に姉さんは「麻衣ちゃんをお願いね」と頼まれた。
「当たり前だろう? 言われなくてもまかしておけって」
「うん、それじゃぁ達哉くんに任せた」

−3−

「麻衣、まずは温泉で暖まろう」
「うん」
宿についた俺達は部屋に備え付けのタオルと浴衣を持って大浴場に向かった。
残念ながら混浴ではないようだ。
脱衣所で服を脱いだとき、下着まで濡れてたことに今更ながら気付いた。
「これじゃぁ、乾くまで着れないな」
それよりも冷えた身体を暖めたかった俺はさほど気にせず温泉に入った。

ゆっくり温泉につかって部屋に戻ると、麻衣が先に戻っていた。
「早いな、麻衣」
「う・・うん」
「ちゃんと暖まったか?」
「それはだいじょうぶ・・・」
なんだか顔が少し赤みがかっている。
「顔が赤いけど、熱があるのか?」
俺は麻衣の熱をはかろうと近づこうとした。
「え、わわぁ」
麻衣は慌てたように壁際に後ずさった。
慌てたため少しはだけた浴衣から見える足が妙にまぶしく見えた。
俺は慌てて目線をそらして、話題を変えることにした。
「そ・・・そういえば夕飯はどうしようか」
急な宿泊の為俺達の夕飯は宿の方で用意できなかった。その分宿泊費が
安くなってるので問題はないのだが、やはりお腹がすいた。
「近くのコンビニで何か買ってくるしかない・・・よな」
「そう・・だね」
「それじゃぁ、俺がひとっ走り行って来る」
俺は浴衣のまま出かけようとしたとき、麻衣が
「何かはいていったほうがいいとおもうよ」
顔を真っ赤にして言った。
・・・そういえば、浴衣の下は何も着てなかったっけ。
俺は慌てて濡れたジーンズをはいて、その上から浴衣を着直す。
「お兄ちゃん・・・あのね・・・」
「なんか買ってきて欲しいものあるか?」
「下着」
麻衣が小声で何かをしゃべった。
「ごめん、良く聞こえないから」
俺は麻衣の方に近づいて聞こうとしたとき、麻衣はまた俺から距離を置く。
「麻衣?」
「お兄ちゃん・・・その・・・私の・・・下着」
「あ・・・」
そうだった、俺の下着まで濡れてたように麻衣の下着も濡れてたのだろう。
そうなると、今の麻衣は浴衣の下には何も着ていない・・・
俺は思わず麻衣の方を見てしまう。
その視線に麻衣はただ顔を赤くしてうつむくだけ・・・
って、いけないいけない。
「ご、ごめん。すぐ買ってくる!」
俺は慌てて部屋から飛び出した。

その後コンビニで女性用下着を買うという、非常に恥ずかしい経験をした。
別にやましい事はしてない!
・・・はずだが、店員さんの目線が痛かった気がした。

おにぎりやサンドイッチを食べて、麻衣とおしゃべりして。
そんな静かな夜が更けていった。
「そろそろ寝るか?」
「うん、そうだね。」
「歩き疲れたからな、ぐっすり眠れるな」
「そうだね・・・ふぁぁ」
麻衣はしゃべりながら大きなあくびをした。
「お休み、麻衣」
「お休み、お兄ちゃん」
電気を消して布団に入る、今日はいろいろあったけど悪くはなかった、かな。
そっと目を閉じて、心地よい眠りに身を任せ・・・
・・・眠れない。
いつもと違うこの状況に身体が眠りを拒絶してるようだ。
「枕が変わると寝れない、って訳じゃないんだが・・・」
「お兄ちゃん?」
「麻衣? 起こしちゃったか? 悪い」
「ううん、私も眠れないの」
「そうか」
「うん・・・」
「・・・」
「・・・」
暗闇の中、無言になる二人。
「・・・お兄ちゃん、ごめんなさい」
「麻衣?」
「私があの時、寄り道しなければきっとお家に帰れたと思うの。
 お姉ちゃんが美味しいご飯つくって待っててくれたのに・・・」
「・・・麻衣」
「お姉ちゃんにも悪いことしちゃった・・・」
「麻衣!」
俺は隣の布団で寝ている麻衣を強引に抱き寄せた。
「お兄ちゃん?」
「麻衣が悪いわけじゃない、寄り道なら俺だって行ったんだから同じだ」
「でも・・・んっ」
俺は麻衣が反論するよりも早く、麻衣の口をふさいだ。
「それに、あの温泉は良かったぞ? 麻衣の水着姿もみれたんだから」
「・・・お兄ちゃんのえっち」
「今更気付いたのか?」
「ううん、知ってた」
「なら問題ないだろう?」
「・・そうだね、私もお兄ちゃんとおなじくらいえっちだし」
「知ってる」
「もうっ、お兄ちゃんったら」
そう言って麻衣はそっと俺の唇に触れてくる
「姉さんには明日二人で謝ろうな」
「うん」
「これで安心して眠れるな」
「でも、ないんじゃない? お兄ちゃんの・・・当たってる」
「・・・それは、その・・・麻衣だからな」
「お兄ちゃんのえっち・・・でも、大好き」


−5−

「汗かいちゃったな」
「お兄ちゃん、激しいんだもん・・・」
「相手が麻衣だからな」
「それって私以外があるっていうこと?」
「そんな訳無い! 俺は麻衣以外とこんなことはしない」
「うん、わかってる」
麻衣は微笑みながらそう答えた。
その顔の所々に、俺の汚した物がついたまま・・・
「さすがにこのままじゃまずいか」
「そうだね、べとべとだし・・・」
「よし、温泉に入るか。折角温泉に泊まってるんだからな」

タオルで見た目だけは綺麗にしてから、俺達は大浴場の方へ向かう。
「お兄ちゃん、温泉にも営業時間ってあるんだね」
「風呂屋じゃあるまいし・・・」
この旅館に温泉の営業時間はすでに終わっていた。
「まさか湯船に温泉がはいってないわけはないよな」
俺は入り口の扉に手をかける。
「お兄ちゃん、営業終わってるんだよ?」
「だいじょうぶだって」
俺はそっと扉を開ける。鍵はかかってないらしく簡単に開いた。
中にはいると蛍光灯は全て消えていて、非常灯の明かりだけの暗い脱衣所。
その奥の扉の向こう側からはお湯の流れる音が聞こえる。
「だいじょうぶ、お湯は入ってるから入れるよ」
「でも・・・」
「汗かいたし、ベトベトのままじゃ寝れないからな。
 明かりつけなければ大丈夫だろう。」
「う・・・うん。」
観念したのか、麻衣は脱衣所に入ってくる。
「麻衣? こっちは男湯だぞ?」
「う・・・うん、でも女湯も真っ暗でしょ? 誰か来たら恐いし」
確かに暗い浴室に麻衣一人は心細いだろう。
「・・・」
「・・・」
「あ、あの・・・お兄ちゃん、あのね」
「一緒に入るか」
俺は麻衣の言葉を言い終える前に提案する。
麻衣に言わせるのではなく、俺の希望として。

洗い場で汗を流して湯船に二人でつかる。
大浴場の大きな窓の外には綺麗な星空が広がっている。
俺は麻衣と並んで一緒に見上げていた。
「綺麗だね」
「そうだな」
それっきり無言の時間。聞こえるのはお湯の流れる音と、窓の外で風が
そよぐ音。虫の音。
感じるのは俺の肩に寄り添う愛しい恋人の鼓動。
「お兄ちゃんとお風呂一緒にはいるの久しぶり、だよね」
「そうだな・・・いつ頃から別になったんだっけ?」
「お兄ちゃんが高学年の頃じゃないかな。お姉ちゃんと一緒に入るのも
 やめたんだよね」
俺が高学年の頃、姉さんは学院に通ってたっけ。
あの頃の俺には姉さんの大人になっていく身体に、恥ずかしさを感じて
いたんだよな。
「お兄ちゃん、ダメ」
「え?」
「今何を考えてるか私にはわかるの、だから考えないで。今は・・・
 私と一緒に星空を見ようよ」
「・・・そうだな、今を楽しまないとな」
俺は過去を振り返るのを止めて、また星空を見上げる。
「お兄ちゃん・・・大好き」
「俺もだよ、麻衣」
二人申し合わせたように、唇が近づく。
触れ合うだけの優しいキス。
「私、この星空一生忘れない」
「そうか?」
「うん、恋人同士になって初めてのお泊まりだもの」
「そうだな・・・俺も麻衣と見た星空、忘れないよ」
「うん!」

「そろそろ部屋に戻って寝ようか」
「うん、身体も暖まったしぐっすり寝れそう」
「よし、いくか」
「あ、まって。私が先に出るからちょっとだけ待っててね」
「あ、あぁ・・・」
 
別に構わないと思うのだが、着替えを見られるのは裸を見られるより
恥ずかしいそうだ。正直良く分からないが、麻衣の機嫌を損なう事は
しないことにしてるので、おとなしく一人で湯船につかって星空を見上げた。

部屋に戻ってから麻衣がほぅっと安心したように息をはきだす。
「良かったぁ、誰にも見つからなくて」
「一応、鍵はかけておいたからな」
「え?」
「鍵はあったんだよ、あの浴場。念のため内側から鍵をしておいた」
「・・・お兄ちゃん、何かするつもりだったの?」
「一応時間外だし、みつかるとまずいだろ? それに・・・」
「それに?」
「・・・邪魔されたくなかったからな」
「・・・」
「・・・」
無言の時間。きっと麻衣は顔を真っ赤にしてるんだろう。
俺の顔も真っ赤だと思う。
「寝ようか?」
「うん」
電気を消して布団に入る。
「私も・・・」

「私も・・・お兄ちゃんとの時間邪魔されたくなかったから。」
「麻衣」
「ありがとう、お兄ちゃん。おやすみなさい」

−6−

翌日、復旧した列車にのって満弦ヶ崎まで無事帰り着いた。
家についたとき、姉さんは出迎えて俺達を抱き留めてくれた。
大丈夫とは伝えたけど、やっぱり心配だったようだ。
俺達二人で姉さんに謝って、それから昨日の夜に用意された姉さんの
料理を温め直してみんなで美味しくいただいた。
1日遅れの、麻衣の誕生日パーティーだった。

「お兄ちゃん、今回の宿泊費大変だったでしょ?」
「だいじょうぶ、こういうときのための貯金だからな」
「それでも悪いよ・・・そうだ、私も左門でバイトするね」
「え?」
「菜月ちゃんいなくて大変でしょ? 私もバイトすれば貯金できるし
 それにね・・・」
「それに?」
「お兄ちゃんと一緒にいられる時間が増えるから!」
麻衣はまぶしい笑顔でそう答えた。

Special Thanks  挿絵:柳の風まかせ ブタベストさま  初掲載時紹介:M-A-T別館 ふみぃさま  読んでくださった皆様、捕捉してくださった皆様  ありがとうございましたm(_ _)m
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