フィーナ誕生日記念SS
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・夜明け前より瑠璃色なMoonlight Cradle sideshortstory
              フィーナ誕生日記念SS「包まれて、受け止めて」

 誕生日の前日の夜、私は達哉のアパートを訪ねていた。
「フィ、フィーナ?」
「こんばんは、達哉」
 私の顔を見た達哉は凄く驚いていた。
「どうしてここに?」
「そうね、毎年達哉に驚かされているから、今年は私が驚かそうと思ったの」
 私の誕生日、達哉はいろんな方法で必ず会いに来てくれて私を驚かせてくれた。
 去年はカレンにだまされたことも覚えている。
 だから今年は私が達哉を驚かそうと思い、計画を実行した。
「そっか、狭いところだけどどうぞ」
「ありがとう」
 達哉の今の住処は月にある地球人居住区の大使館員専用アパートだ。
 部屋はそんなに広くなく、地球の家の達哉の部屋と同じくらいの広さしかない。
「今お茶煎れるね」
 小さなキッチンでお湯を沸かす達哉を見ながら、私は達哉のベットの上に腰掛ける。

「熱いから気をつけて」
「ありがとう、達哉」
 一口飲んだお茶はなんだか懐かしい味がした。
「これは地球のお茶ね」
「あぁ、なんとか持ち込めたんだ」
 月は検閲が厳しい、地球からの物品の持ち込みには厳しい検査がある。
 閉鎖された月の空間内に、危険な菌は持ち込むわけにはいかないからだ。
「それでフィーナはいつまでここにいられるんだ?」
「達哉はいつまで居て欲しい?」
「ずっと」
 私の冗談に即答する達哉の真剣な顔に私の胸がドキッとする。
「でも、そうはいかないんだよな」
「・・・えぇ、さすがにね」
 残念そうな顔をする達哉、どきどきした胸が痛む。
「それじゃぁ1日早いけど誕生日プレゼント」
 達哉は小さな包みを渡してくれた。
「ありがとう、開けても良いかしら?」
「あぁ」
 包みをそっと開けてみるとその中には草で編んだ腕輪だった。
「ごめん、フィーナ。今年は準備が出来なかったんだ」
「いいの・・・」
「フィーナ?」
「どんなプレゼントよりも達哉の思いがこもってる物が一番よ」
 相手がずっと健康で居られますように、その願いを込めて編む腕輪。
 この腕輪は恋人に渡す物となっている。
「ありがとう、達哉」
「俺こそありがとう、フィーナ」
 達哉はそっと私を抱きしめてくれた。そしてそのままベットに倒れ込んだ・・・

 目の前に達哉の顔がある。目を閉じて眠っている。
 私はその顔をずっと眺めながら、達哉から聞いた話を思い出していた。

 達哉は今は地球連邦大使館の若きエースとして名前を知られるようになっている。
 そのせいで仕事は忙しく、逆に月の貴族からは狙われている。
 今でも貴族達は私に自分の息子を婿入りさせることをあきらめていなかった。
 そのための最大の障害が達哉なのだ。
 さすがに達哉自身に危害を与えることは出来ない、だから貴族達は外交で達哉を
 攻めている。非難ぎりぎりレベルでの無理難題を押しつける事もあった。
 だけど、達哉はそれを成し遂げてしまう。
 そのせいで達哉はエースと呼ばれるようになり、どんどん忙しくなっていった。

「今年はどうしようかと思ってたんだ」
 達哉は悩んでいたそうだ。
「毎年どうにかしてフィーナに会いに行ってたんだけど、今年はどうしようもなくてさ」
 達哉の味方をする王宮の人もいるが、今年は貴族達はそちらを押さえたようだ。
「なんとかプレゼントだけでも、って思ってた所にフィーナが来てくれたんだ」
「そうなのね、来て良かったわ」
「あぁ、さすがはフィーナだよな・・・」
「達哉、眠いの?」
「ごめん、もっと話したいよな」
「いいのよ、達哉。私は朝までいるからもうお休みなさい」
「朝まで居てくれるんだな・・・」
 達哉の瞼が下がる。
「お休み、達哉」

 朝早い時間、私は達哉より先に目が覚めた。
 眠っている達哉の顔を見る、瞼が少し動いた。
「ん・・・」
 達哉が目覚めようとしている、私はその時を達哉の顔を見ながらずっと待つ。
 そして達哉に語りかける。
「おはよう、達哉」
 
「・・・俺寝てたのか」
「えぇ、可愛い寝顔だったわ」
 私の言葉に達哉は照れたようで、顔を背ける。
「だめ」
 私は達哉の顔を両手を使ってこちらに向ける。
「まだおはようの挨拶は終わってないわ」
「・・・そうだね、おはよう、フィーナ」
「おはよう、達哉」
 私はそっと目を閉じた。

「ごめんな、せっかく来てくれたのに寝ちゃって」
「疲れてるんだからしょうがないわ、それに・・・」
 眠る前の情事を思い出す、あれだけ激しく動いて私を気持ちよくしてくれた。
 男の方は凄く疲れるそうだし・・・
「フィーナ、先にシャワー浴びてきて」
「えぇ、そうね。もうすぐ戻らないといけないものね」
 今日は私の誕生日当日、スフィア王国あげての、国民行事が組まれている。
 そのスケジュールは秒単位、本来は朝早くから準備が必要なのだけど、今朝は少しだけ
 ゆっくり出来るよう、ずいぶん前からカレン達に頼んで調整しておいたのだ。
 
「でも、まだ時間は少しだけあるわ」
「そうなの?」
「えぇ、一緒にシャワーを浴びるくらいは、ね」
「・・・いいのか?」
「あら、達哉は何を考えてるのかしら? シャワーを浴びるだけよ?」
 私はわざととぼけてみる。
「そう・・・だけどさ、俺は我慢できないよ。フィーナが目の前に居るんだからさ」
 達哉の思いが伝わってくる。
 その思いに駄目だとわかっていても身体は反応してしまう。
 何もつけていない胸の先は堅さを持ち始め、おなかの奥が疼いてくる。
「・・・もぅ、達哉ったら昨夜はあんなに激しかったのに。えっちなんだから」
「フィーナにだけだよ」
 そう言って近づいてくる達哉は私の手を取る。
 身体に巻いてあった毛布が滑り落ちる。
 私は達哉の前で生まれたままの姿をさらしてしまう。
 それだけでも恥ずかしいのに、明らかに私の身体は達哉を求めてしまっている。
「フィーナ、行こうか」
「・・・うん」
 達哉の誘われてシャワールームへと向かう。

 今年の誕生日は達哉に包まれ、思いを受け止めてから始まった。


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