姉 妹 越 南 散 歩
しまい・べとなむ・さんぽ 

>>>カントーへの道


ホーチミンを後にし、カントーへ出発する日なのである。
まずは、バスでチョロンのターミナルへ向かうと、周囲のベトナム人が競うようにバス料金を教えてくれる。向かいの席のおばちゃんがオキモノの様な化粧をしていて、姉妹そろって目がくぎづけになってる間に、到着。

つくりものおばちゃん

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豪華バスだと思ったの。 情報によれば、このチョロンバスターミナルからさらにバスでミエンタイバスターミナルという所に行くと、カントー行きがあるらしい。地元バスは満員できついので、冷房つきの豪華バスがおすすめだとか。

というわけでミエンタイバスターミナル行きのバスを探していたら、このバスでもカントーに行けるよ!というおばちゃんにつかまった。車体を見るとハングルがびっしり。あ、韓国製だ。きっとこれが豪華バスだよ。なーんだミエンタイバスターミナルまで行かなくてもあるじゃーん。

しかしこのバス、走り始めても窓は全開のまま。あれ、冷房は?しかもどんどん人が乗り始め、ぎゅうぎゅう満席に。そう、これはまさに全く豪華バスでも何でもない、ただのバスだった。

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ま、いいか、座れたし。バスだってぜんぜんボロっちくないし。
と、化粧の激しい車掌のおばちゃんが横に来て何やらペラペラしゃべりはじめた。あたりまえだが何を言ってるのかぜーんぜんわからない。えびが覚えてきたベトナム語は数字と「これは何ですか」「それは高すぎます」「私は日本人です」この3つである。この状況で「これは何ですか」は絶対違うだろうという事だけはわかるので、何を言われても時々「私は日本人です」とだけ答えておく。おばちゃんも、そんな事は何度も言われんでもわかったわい!と言いたかっただろうが、それしか言えないのだからしょうがない。
帽子少女

途中からバスに乗ってきた学校帰りの女の子。
なんとも言えない帽子をかぶってた。

2時間ほどそのまま乗っていたら、突然おばちゃんから降りろとのお達しが。
えっ。ここで!?なに、このバスカントーまで行くんじゃないの?車掌のおばちゃん、さっきからこれを伝えようとしていたのか。早く言え。
しかし、ここはどこなんだろう。車掌おばちゃん、そのバス停にいたおっちゃんと突然ケンカ腰で言い合いしだすし・・・と思ったら何やらきちゃない紙切れに書きつけさせ、渡してくれた。ひょっとしてこれ、チケット・・・?どうやらここで乗り換えのバスを待てって事らしい。

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わけわからないまま、バスから取り残されるえび姉妹。周りの人に聞いてみるも、一人として言葉の通じる人もおらず。私らが状況を把握できていないと知るや、たちまちそこらのおじちゃんらがバイタクに変身したり、カントーへのバスはこれだよと言われて行ってみたらチケット代をまたとられそうになったり、まったく油断もすきもない。こーんな田舎のジモティしかいないとこなのに、ミネラルウォーターもしっかりお高い値段を言ってくる(しかし ホイダックァー=それは高すぎます のベトナム語で周囲の人々の爆笑を誘うと、すぐさま値段が下がるあたりが弱い・・・)。いろんな人がやって来て、いろんな事を言う。ベトナム人の燃える商魂をまさに体感。

「おねーちゃーん。ホントに着くとーーー?」海外旅行はこれで4度目というゆきちゃんは、こういう状況に慣れていない為けっこうびびっている。こやつは小さい頃から怖がりだったもんなあ。夜のトイレに1人で行けないゆきちゃんによくついて行ったもんだ。今こいつを一人置き去りにしてどっかに隠れたりするとかなり面白いだろう。しかし待てよ。そういえば子供の頃、ゆきちゃんが入ってるトイレの電気を面白がって消したら、べそかいたヤツがおしっこを垂れ流しながら飛び出して来て、いたずら犯人えびが母親に大目玉をくらうという悲惨な出来事があったぞ。ここはひとつ、やめておくのが賢明だろう。

しばらくその場でベトナム商魂と戦っていたら、ようやく本来乗るべきバスがやってきた。そこでもまた、運転手はバス代を請求してきちゃったりする。
あら私、ベトナムにいると思ってたけど、実はここインドだったのかしら?抗議すると笑ってごまかすあたりもインドっぽいぞ(中国だと逆ギレされそうだ)。そして問題のバスは・・・あっ、バンだ。これぞ豪華バスに違いない!わーい、冷房冷房。

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という期待はまたも見事に裏切られ、ただでさえ満員のバスに詰め込まれて、暑苦しさ爆発。はっきり言って、さっきのバスの方が何倍もましだった。私の隣のおっちゃんの膝の上には巨大なクマのぬいぐるみ。そのまた隣には子犬をかかえたおばちゃんが。そのどちらも持ち主は後ろの席に座っている知らない人のものらしい。迷惑このうえないぞ。巨大クマぬいぐるみはもう一匹、ゆきちゃんの隣の席にも鎮座している。汗だくの乗客と、悲しげに泣く子犬と、巨大クマのぬいぐるみ。こんなシュールな展開で、バスはひた走った。まさしく今この時が、私のベトナム旅のハイライトであることだろう。面白すぎるこの光景を見て、えびは思った・・・。

熱気むんむん
しかもクマ、まったく可愛くないし。

カントーへようやく着いたのは、そのバスを降り、バイタクを拾って、さらに船で河を渡った後だった。あー、なんか無駄に長い道のりだった。ちょびっと懲りたえびは、帰り道にはホテルで聞き込みを行い、しっかり本物の豪華バス(ベンツのバン、冷房、ミネラルウォーター、おしぼりつき)に乗った。そしてそこで気づいたのだが、どうやら行きのバス料金、普通バスの倍近く取られていた模様。ああ、時間体力も、おまけに金まで使ってカントーへ行った私たち姉妹って、まさしくバカな個人旅行者の見本?