自然と遊ぶ

 私がよく行くハンググライダーのエリアは、自然豊かな農村地帯にあります。周囲は田んぼが広がり、所々に集落もあって人の手は加えられているものの、たくさんの生き物がいます。イノシシやタヌキもいますが、身近な生き物といえば、やはり虫です。ここでは私がエリアで目にした虫を紹介してみようと思います。

 私は都市部ならびに都市近郊の新興住宅地で育ちましたが、それでも昔は周囲に自然がありました。例えば夏は早起きしてラジオ体操前にセミの幼虫採り。夜は近くにあるマンションの明かりに集まるクワガタ採り。昼間は近所のドブ川に行ってザリガニ釣りをしたり、河川敷にある泥沼で雷魚の手掴み捕りをしたり。
 もちろんトンボも捕りました。ヤゴを捕ったり、成虫を追いかけたり。でもシオカラトンボや赤トンボばかりで、子供時代にオニヤンマに出会うことはありませんでした。
オニヤンマ
 しかしハングのエリアでは、オニヤンマはありふれた存在でした。テイクオフ周辺では、夏になると周囲をオニヤンマが飛び回ります。黄色と黒の派手なボディに、緑色の綺麗な複眼。正面から見るとどことなくユーモラスな表情にも見える、巨大なトンボ。
 ハングに通うようになって初めてオニヤンマに出会った私は、ハング講習そっちのけで嬉しくなった記憶があります。

 早速、次の週から虫取り網を持参。それ以来、テイクオフでの風待ちの際は、網をかまえてオニヤンマ捕りに興じています。結構飛ぶのが早いので、相手の飛ぶ軌道を先読みして、そこに網を差し出すようにします。うまく網に入れた時の達成感がたまりません。


蛍
 土日泊り込みで飛びに来たときはランディング近くのクラブハウスに泊まるわけですが、6月に入ると蛍を見ることができるので、それが楽しみの一つになります。
 それほどたくさん飛んでるわけでもないし年によって差がありますが、それでも何匹かの蛍を身近に観察することができます。

 月明かりが無く、風も無くて蒸し暑く、ジメジメした夜が蛍狩りには最適。懐中電灯を持って近くの田んぼに出発です。蛍の淡い光を見ながら、静かに語らう夜。女の子と一緒に行けば最高のシチュエーションですね。虫刺され防止スプレー噴霧と、マムシ対策の長靴を忘れずに。


田亀
 私が通った小学校周辺は、けっこう自然が残っていました。水生昆虫で言えば、ゲンゴロウやミズカマキリ、ヤゴなんかは学校の池や校庭裏の湿地で見かける、身近な存在でした。しかし、そんな私でも一度も捕まえたことも見たこともない昆虫がいました。それが水生昆虫の王様、タガメです。

 体長は5〜6cm以上、強力な前脚を持ち、自分より大きい魚を捕まえ、突き刺した口吻から消化液を流し込み、体外消化した獲物を食う水中の王者です。しかし農薬の影響などにより絶滅が危惧され、見つけること自体が難しくなっています。私もその存在は知っていましたが、子供時代に出会うことはありませんでした。以来数十年、タガメは図鑑でしか見たことの無い、憧れの存在でした。
 しかし、今年ランディング場の水溜りを漁っていたら、そのタガメにアッサリ出会ってしまいました。初めてでもすぐ分かるその特異な外観と大きさにしばし感嘆。ハングで飛んでる場合ではありません。(笑)


オケラ
 コオロギの仲間で、大きな前脚で穴を掘り、主に地中で生活する昆虫。子供の頃、土を掘り起こしてよくオケラを捕まえました。動作が可愛くて、私が最も好きな昆虫のひとつです。
 指で摘んでそのモグラのような前脚を動かす様子を観察したり、オケラを手の中に入れて、指の間を押し広げながら進んでく感触を楽しんだり、水溜りに投げ入れて泳ぐ様子を観察したりして遊んだ記憶があります。

 しかしそれも昔の話で、ここ何十年もオケラを目にしたこともありませんでした。が、ハングのエリアでこの春、水溜りを泳ぐオケラに再会しました。早速捕まえて(土に潜るのは早いですが全体的には結構トロいので、簡単に手で捕獲できます)掌の中に入れ、指の間に潜り込もうとする感触を楽しみました。


ガムシ
 水溜りを洗面器でひと掬いすると、せわしなく泳ぎ回るガムシをゲット。外観や食性が多少異なりますが、ゲンゴロウに似た水生昆虫です。地上で見ると、黒光りするコガネムシといった風情です。



 ここに載せた虫以外にも、たとえばカブトムシとかコオイムシとか、いろいろな出会いがありました。もちろんハエとか蚊とかブヨとか脚の長い蜘蛛とか出会いたくない虫にもたくさん会うわけですが、サーマルの周りにはシンクがあるのは自然の摂理。仕方ありません。




ページ最終更新:2012/5

もどる