ハンググライダーを楽しむための条件




 ハンググライダーは心身ともに健康であれば、誰でも楽しめるスポーツです。
 でもせっかくハングを始めても、途中で挫折してしまうのは残念なことです。そんなことにならないためにも、事前の心構えや、準備しておいたほうがいいと個人的に思うことを書いておきます。これらをクリアできるのであれば、十分にハンググライダーの素晴らしい世界へ踏み込んでいけると思います。


1.モチベーション(ヤル気)の持続
 上達するまで頑張り続けられる、ヤル気がまず必要です。例えば、ひとつの目標である「練習生B級」という資格の取得(だいたいこのタイミングで初めて山頂から一人で飛ぶ)まで、普通のサラリーマン・OLでは早くても数ヶ月は掛かるでしょう。その間、自由に空を飛びまわりたいという意欲を持続する必要があります。
 例えば「風の谷のナウシカ」のように自由に空を飛びまわりたい、その夢の実現のためには多少の困難は乗り越えてやる、という覚悟が必要です。単に「話題・思い出作り・記念」程度のきっかけだけでは、続けてゆくことは難しいです。はっきり言って、ハンググライダーの操縦は思ったほど簡単なものではありません。暇な時期に何回か通った程度では、絶対に一人で飛べるようにはなれません。
 でもこれ、何かひとつの趣味をモノにしようと思ったら避けて通れない道です。スキーだってテニスだって、上手くなるには継続して取り組む必要があります。ハングもそれと同じです。そしてこの趣味は、上手くなればなるほど高く、長く、遠くに飛べるようになります。上手くなるほど面白くなるのです。特に、上昇気流を捕らえて空高く上昇する経験を一度でもしてしまうと病み付きになり、ハングを止めたくても止められなくなる可能性大ですので?、そこまでは頑張る必要があります。


2.お金について
 ハンググライダーで飛ぶには多少お金がかかります。まずはスクールの講習代がかかります。それ以上に交通費も無視できません。
 たくさん通うほどお金がかかるのは当たり前ですから、いくらかかるとは一概には言えません。しかしそれを承知で敢えてザックリ言うと、最初のうちは少なくとも月に3〜5万円程度はこの趣味にかけることができる経済的余裕が必要です。そこそこ稼いでるサラリーマン・OLなら別に無理ではない額だとは思いますが、スキーや旅行などの他の趣味と同時に楽しむとなると、時間的にも無理があります。経済的・時間的な制約から、しばらくはハング1本に打ち込んだ方が良いでしょう。
 また月々掛かるお金に加え、ソロフライトする頃には自分の機材(機体+ハーネス+パラシュート)を購入しなければなりません。
 そこでお勧めなのが、50〜60万円程度の、ある程度まとまった資金を用意しておくことです。ボーナスをそれに充ててもいいし、それがアテにならないのであれば、そのお金が溜まるまでハンググライダーを始めるのを待ってもよい。そういう資金さえあれば、たくさん通った時はそこから充当できるし、機体購入もスムーズです。

 逆に言えば、その程度の資金があるだけで、ハンググライダーを十分に楽しめるレベルに到達することができます。かかるお金のレベル的には、ゴルフやスキー、バイク、スキューバダイビング等と比べ、同程度かそれ以下でしょう。それにスキーは冬しかできないし、スキューバも毎週のように通える環境にある人は限られると思います。しかしハングは毎週通っても、掛かるお金はたかが知れています。さらに、スクールを卒業して自分の機体を持ってしまえば、掛かるお金はグッと少なくなります。


3.時間について
 エリアに通うペースは、初めてソロフライトに出るくらいの技量がつくまでは頻繁に通ったほうがいいと思います。理想的には毎週か、隔週だけど土日連続で通いたいところです。(実際は天気や突然の用事等で、結果的にその半分程度しか行けないこともありますので。) これくらいのペースを保つことで、スムーズに上達していけるかと思います。
 そのためには、仕事面でも毎週ちゃんと休みがとれる状態が必要ですし、家族の理解も必要です。周囲の反対を押し切って無理に通っても、長続きしません。仕事はちゃんとこなし、家庭サービスも要領良くこなし通い続ける。これが最も難しい条件かもしれません。
 ちなみに、ハングを友達や会社の同僚と一緒に始める人もいるかと思います。この場合、一緒に申し合わせて行くのではなく、あくまで個人行動でエリアに行くようにしたほうが無難です。ただでさえ自分の都合と気象条件が良い日でないと練習できないのに、それに友人や同僚の都合が良い日という条件も重なるわけですから、エリアに行ける日が激減してしまいます。


4.健康な心身
 20kg以上ある機体を持って何回となく斜面を上る体力と、着陸に耐えられる足腰が必要です。といっても屈強な若者でないとできないというわけではなく、休憩をとりながらも一日アウトドアで体を動かすことができ、10メートル程度の距離をダッシュでき、椅子の高さ程度から飛び降りることができれば、体重40kg台の女の子から80kg位のメタボ中年まで、OKだと思います。(ただし欧米人のような体格ならともかく、メタボ系かつ90kg以上となると、体重に合った機体が少ないこと、怪我をしやすくなるなど、問題は多くなります。実際、そのような体型のハングパイロットを、私は見たことがありません。)
 たとえば普段ジョギングやテニス等のスポーツを楽しんだり、バイクやスキーなどのアウトドア系の趣味をやっている人であれば、十分ハングも楽しめると思います。

 それから、ハンググライダーは一人ではできないスポーツです。多くの仲間と一緒に講習に励み、ソロフライトできるようになっても、テイクオフに上った車をランディングまで下ろす人も必要です。長距離のクロスカントリーフライトに出るようになれば車で回収してくれる人も必要となるなど、仲間との繋がりは大切です。「ワシは金を払っとる客じゃ。早く飛ばせろ」とかいうタイプの人や自分勝手な行動をとる人は自然に排泄されるし、そもそもハング(に限らずスカイスポーツ全般)の世界に馴染めないと思います。
 それ以外にも、パニックになりやすい人、今まで運動の経験がなく極端に運動神経の鈍い人、とにかく危ない思いは一切したくない人は、やめておいた方がいいでしょう。

 難易度的には、一人でフライトできるようになるまでに要する労力は、スキーで中斜面を綺麗にターンできるようになるのと同じような感じかなと思います。若い人や運動神経やセンスが良い人ほど早く上達する傾向にあるようですが、若くもないし運動神経もあまり良くない人でも、努力すれば結果がついてくるのはスキーと同じです。続けてさえいれば、何とかなります!




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