ハンググライダーの世界へようこそ



 空を飛ぶというのは、特別な体験です。刺激的で、非日常的な世界です。
 ハンググライダーは普通のサラリーマン・OLが楽しむことができて、空を自由に飛びまわるという本来の夢を実現するための、絶好の趣味です。
 自分で操縦して空を飛ぶ手段としてはパラグライダーやウルトラライトプレーン、熱気球など他にもありますが、翼を自分の体の一部として直接操り、体ひとつで鳥のように飛ぶ感覚はハンググライダーならではのものです。その飛行感覚、スピード感、独特のスタイルは他のスカイスポーツにはない魅力的なもので、そして一生かかっても極められない奥深さがあります。

 エンジンなんか要りません。上昇気流を捕らえて空高く舞い上がり、何時間も飛び続け、10km以上も遠くへ飛んでゆくことも珍しいことではありません。雲を間近に眺めながら高度1000メートルの空を自由に飛び回れば、日常のストレスも、いっぺんに吹き飛んでしまうことでしょう。


 とはいえ、それはある程度上手くなってからの話。最初のうちは操縦練習のために少々運動したり、空高く飛んでいる先輩パイロット達を見上げて悔しい思いをするかもしれません。

 このHPでは、ハンググライダーをどうしたら始められるのか・続けられるのかといった話や、私を含めた現在練習中で頑張っている人の参考となるような内容にしていきたいと思っています。同時に、一人でも多くの人に空を飛ぶ楽しさとハンググライダーというスポーツの面白さを伝え、普及のための一助となりたいと思います。




○ハンググライダーとは?

 ハンググライダーの機体は、直径4〜5cm程度のアルミ合金製のパイプと合成繊維製の布(セール)で出来ています。形状は写真のように横長の三角形で、幅は10m程度。同じ機種でもパイロットの体重に合わせて2〜3サイズ用意されているのが普通です。パイロットはこの機体から紐一本で吊り下がった格好で、機体下部にあるコントロール用のバーを動かして操縦します。一人乗りが普通ですが、二人乗れる「タンデム機」もあります。  機体自体の重量は20〜30kg台で、当然ながらタンデム機よりも普通の一人乗りの機体のほうが軽くて小さいので、空中でも小回りが効きます。
 また普通の一人乗りの機体には、操縦の容易な練習用のものから、上級者が競技大会で使う高性能機までいろいろな機種があります。構造などもっと詳しいことは別のコーナーで紹介します。

 なお用語の定義ですが、「ハンググライダー」または略して「ハング」という言葉は普通は機体のことを指し、ハンググライダーで空を飛ぶことを含めた行為自体のことを「ハンググライディング」といいます。
 ただしこのページでは特に区別せず、空を飛ぶことを含めた行為自体を含めて「ハンググライダー」または「ハング」という言葉を使っています。

<飛行速度>
 通常の飛行速度は時速30〜40km/hといったところですが、上級者の乗る高性能機では、時速100km以上の速度が出るものもあります。
 飛行速度は自由に変えられますが、あまりに遅い速度では、翼がどんなに頑張っても機体の重さを支えるだけの揚力を発生できなくなります。この最低速度(失速速度)はだいたい時速30km。これがあまりに速いと離着陸時に支障がありますので、人間が走れる速度以下になるように設計されています。

<降りる速さ>
 時速数十kmで飛ぶ一方で、高度は1秒間あたり1m程度下がってゆきます。これを沈下速度といいます。
 例えば高度が300mあったとします。沈下速度1m/sなら、300m ÷ 1m/s = 300sということで、何も上昇気流がなくても300秒(5分)は飛んでいられる計算になります。エンジンがなくても、ハンググライダーの沈下速度は意外と小さいのです。

<滑空比>
 高度を1m失う間に、何m前進できるかを表した数字です。
 一般的なハンググライダーの場合、滑空比は8〜15程度です。例えば滑空比「10」の機体の場合、高度が300mあれば、300m × 10 = 3000m つまり、3km先まで飛んでいける計算になります。
 上級者用の機体ほどこの滑空比は良くなりますが、乗りやすさを重視した初級機の滑空比は「8」程度です。

<操縦と乗り心地>
 パイロットは、ベルト状の紐(スイングライン)一本でハンググライダーの機体からぶら下がり、体全体を使った体重移動で機体をコントロールします。
 具体的に言うと、目の前にある「ベースバー」を両手で握り、このバーの右に体を寄せれば機体は右へ傾き右旋回し、左へ寄せれば左へ旋回します。バーを前に押せば機首が上がり、減速。手前に引けば機首が下がって加速します。(飛行機で使われている操縦桿は、前に押すと機首が下がり、手前に引くと機首が上がります。ハングの操作はこれとは逆です)
 パイロットの真上には翼があるため上方の視界は良くありませんが、その代わり前や下の見晴らしはバッチリです。鳥のように下に広がる地面を見渡しながら飛べます。 それと、パイロットの体はむき出しですから、夏は涼しくて快適な一方、寒い季節は特に防寒に留意する必要があります。

<機体の値段>
 新品ハンググライダーの値段は、初級機で40〜50万円程度、中〜上級クラスで70〜80万円程度、競技用の高性能機になると100万円以上するのもあります。また機体だけでなく、身に着けるハーネス(10〜20万円)なども必要ですが、それは別途説明します。
 ただしパラグライダーとは違ってハンググライダーは初級機でも十分に楽しめる性能を持っており、なおかつ長持ちします。週末にのんびりフライトを楽しむというスタイルであれば初級機のままでもよく、無理に買い替える必要はありません。またスクール経由での中古機の流通により、安価に購入できる場合もあります。

<機体の寿命>
 ハンググライダーの骨組みは航空用アルミニウム合金製で、翼は丈夫な合成繊維でできています。飛行頻度や使い方にもよりますが、時々フライトを楽しむスタイルで適切な手入れをすれば、5年以上は性能を維持できるかと思います。いや、寿命という観点から言えば、20年以上にわたって使い続けることも可能だと思います。
 ただし、機体性能は少しづつですが劣化するし(主にセールと呼ばれる合成繊維製の翼部分が劣化します)、その間にさらに性能や安全性の向上した新しいモデルが発売されるでしょうから、10年も20年も昔の機体に乗って楽しめるかは、別の問題になります。
 ちなみに木や地面にクラッシュすると機体が壊れる場合もありますが、すべての部品は交換可能ですので、修理も容易です。

<運搬方法>
 ハンググライダーの機体は畳むと長さ4〜6m、直径40cm程度の円柱状になります。数十メートル以内の移動であれば肩に担いで運ぶこともできますが、長距離の移動は車に積載する必要があります。車の屋根のキャリアに乗せるだけですが、機体が傷むのを防ぐために、ボンネットに機体を支える補助ステーを増設する場合もあります。
 ただし、大部分の人はエリアに近いスクールの倉庫を借りて機体を置いていますから、ハングを載せられない車でも特に問題はありません。




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