第10次意見書

                      平成26年11月28日

第10次卸売市場整備基本方針についての卸売市場政策研究所の意見  

作成者:卸売市場政策研究所 代表・細川允史

卸売市場政策研究所においては、第10次卸売市場整備基本方針の内容について、平成26年7月25日の農水省での意見開陳の際の配布資料、及びその後の調査ヒアリング、研究所メール会員から寄せられた意見などを総合して、以下のようにまとめました。なお、この意見書は、11月28日に農林水産省に提出しました。

【総括的内容】
1 基本的スタンスー卸売市場の役割の再確認
 わが国の卸売市場制度は、わが国の農漁業や小売・川下側の橋渡しとして非常に優れた制度であったし、これからもわが国の農漁業振興と結びついた重要な生鮮品流通機構であることを再確認する。

2 公設卸売市場改革の手法の明示
公設卸売市場における卸売市場改革は、現行体制の変更になるので、影響を受ける部分が生じる。そうすると、「総論賛成各論反対」で、総花的な改革案はできても実行できずに「机上の空論」となる例がよくある。ある部分での「破壊的改革」は、影響を受ける部分に対する丁寧なフォローを伴いながら進めていくことが必要であるが、これを政策的にどう担保できるか、が大きな課題である。現に、①中央卸売市場の地方化、②指定管理者制度の導入、などについて、全員合意が前提とされているために、一人(一組織の代表)が強硬に反対して行き詰っている例が少なくない。検討組織に、卸売市場の部外者である生産・出荷代表や小売企業代表などが入っていると、利害が対立する場合もあり、合意自体困難となる。対立を避けた結論では、意味のない内容となりかねない。
また、現状変更に反対するだけで、その卸売市場の窮状打開については考えを述べないということも多い。こうして手をこまねいている間に、その卸売市場の市場力(卸売市場として機能を発揮する力をこう名付けた)、競争力が失われ、後退、消滅の方向にいく恐れが高い。開設自治体にもよるが、公設卸売市場の改革については、できるだけ全員一致を前提としながらも、それだけではない手法、国の支援なども検討しないと、現に多くの卸売市場で改革が進んでいない現状がある。せめて改革手法の選択肢でも国が示してくれるとやりすいという開設者の声がある。

3 開設形態を問わず卸売市場全体の振興
中央卸売市場の地方化、公設卸売市場の開設運営形態の多様化、有力民設卸売市場の存在感の増大、などで、中央卸売市場法制度以来の中央卸売市場中心という考え方の見直しが迫られており、これからは、中央卸売市場、地方卸売市場、公設卸売市場(開設自治体による直接の開設運営方式)、公設以外の卸売市場形態(民設民営、第三セクターなど)のいずれも、卸売市場として生鮮品流通に重要な役割を果たしていることに鑑み、政策的に同列の扱いとすることが、卸売市場全体としての活性維持のために必要である。



【現行卸売市場法下で導入可能と思われる事項】
4  国によるグランドデザインの提示
公設卸売市場における卸売市場の経済活動範囲と開設自治体の管轄範囲のかい離が進むことへの対応、また、自治体財政が悪化するなかでの、老朽化施設の建て替え、卸売市場施設の高度化、重装備化、多機能化等への対応等、重い課題が多くあり、自治体レベルでは方針を決めるのが困難で、国が卸売市場の整備や取引のあり方について、状況に応じたいくつかのパターンについてグランドデザインを示す必要がある。

5 公設卸売市場の開設運営体制の柔軟化
開設区域の設定を大幅に超えた広範囲の売買参加者の分布が広まっていて、開設自治体の行政としての管轄範囲と大幅なかい離を生じていることについて、制度としての整理が必要である。広域化に関しては、開設自治体で方針戦略を示すことが困難である。その解決方向としては、例えば、公設制から卸売市場の企業化への転換、少なくとも第三セクター方式などで、自治体管轄という性格を薄める、地域密着型卸売市場に特化する(市民対応機能の導入)、その他が考えられる。

6 中央拠点市場による集荷支援システムの充実
中央拠点市場の規定をより効果あるものにする工夫をする。集荷力が低下して存立が不安定になっている卸売市場で、その地域に必要な卸売市場については、拠点市場からの集荷支援システムの充実を望む。

7 拠点市場制度の実効性ある拡大・充実
中央拠点市場は、中央卸売市場のなかからだけ選定されているが、有力地方卸売市場、民設卸売市場にも拡大するのが、より有効となると思料する。また、いまの中央拠点市場の基準では、現実には拠点市場とは言えないような市場もあるように思われ、逆に、規模などの点で中央拠点市場にならない卸売市場でも、その地域(県レベル)では十分に拠点市場の役割を果たしている卸売市場もあるので、地域拠点市場などの名称による選定をするか、中央拠点市場の選定基準の見直しを検討する必要がある。

8 都府県レベルを超えた市場間連携の容認・具体化
複数の県を包含する地方において、単独では十分な市場機能を発揮できなくなっている卸売市場の救済策として、その地方の中核的卸売市場を中心とした、都府県を超えた市場連携、組織的統合などの手法の検討をする。民営ならば持ち株会社方式ができるが、公設卸売市場のままでの広域の連携ということは、新しい思考が必要と考える。

9 中央卸売市場概念の再整理と地方化の容易化
中央卸売市場の地方化が相次ぐ中で、中央卸売市場の概念があいまいになっている。一定基準以下の中央卸売市場は、基本的に一律に地方卸売市場とする。現在、国が地方化などに線引きする基準に、規模だけでなく、経営の悪化や開設自治体の一般会計からの繰り入れ水準などが入っているが、基準は規模に関する項目だけに絞り、経営内容が優良な卸売市場であっても規模が基準以下であれば地方卸売市場とすることとする。これは、中央卸売市場の地方化が、強制でない場合には開設自治体の自主的な取り組みにゆだねられているが、全構成員の合意という条件が、大きな障害となっている場合があることを踏まえてのことである。中央、地方、どちらでもいい、というのは、制度としての緻密さを欠くと考える。

10 中央卸売市場の2枚看板の解消
現在の国の地方化の基準が部類ごとに決められているので、なかには青果が中央卸売市場や中央拠点市場、水産が地方化という卸売市場もある。これは、その開設自治体の行政を阻害することとなるので、2枚看板を避ける仕組みとする必要がある。例えば、地方化の回避、部類の統合、全体としての地方化、など。

11 民設卸売市場への支援の充実
民設卸売市場に対する支援策の検討。①施設整備に対する補助、②経営を圧迫している固定資産税の減免措置の検討(基礎自治体の管轄なので、国としてどうできるかも含めて)など。

12 卸売市場機能充実のモデルケース、選択肢の国による例示、アドバイス
いろいろな地域条件、経済環境などにより、卸売市場の経営方針には違いが出る。おかれた環境等により、進むべき方向についてのモデルケース、指針などの選択肢を国が示すことは、卸売市場の維持発展のために資することになると考える。

13 施設老朽化卸売市場に対する方針の策定
卸売市場の建設から40年前後を経過し、施設が老朽化している卸売市場も多い。建て替えにあたっては、 ①次の建て替えまでに数十年あり、この間に人口減少、高齢化社会の進展など、取扱規模と施設規模に影響する要素が多いことに鑑み、当該卸売市場の取扱規模の推移をある程度予測し、将来、過大設備とならないように配慮する。②これからの流通に必要な機能については拡大して取り込んでいく。その場合、公設卸売市場にあっては、すべて開設者が負担するのか、使用者負担の部分をどこまでにするのか、当事者の話し合いか、なんらかの基準を国が設定するか、自治体財政の状況なども考慮する、などの検討が必要である。③卸売業者がいないとわが国の卸売市場制度では卸売市場として存続できない。入場している卸売業者の経営が安定していることが前提なので、経営の分析について国が指導する。存続が不安定である場合の措置についても指導を検討する。

14 財政基盤が弱い公設卸売市場の開設自治体に対するアドバイス
公設卸売市場で、財政基盤に不安がある自治体の施設再整備の手法についてのアドバイスをする。

15 所属卸売市場への貢献度の概念導入
経営規模が過小、開設者への使用料未納の卸売業者や仲卸、直荷比率が高い仲卸(所属卸売市場の卸売業者の経営を支えていないという理由)、代金支払いが著しく滞っている買受け業者、集荷能力が十分でなくかつ集荷努力の意欲に欠ける卸売業者(仲卸が直荷に頼らざるを得ない状況を作り出している)、その他、所属卸売市場の機能発揮への寄与が不十分な業者(卸売市場貢献度の概念導入)の指導、業務停止、退場等の処分ができる措置の導入で、現行卸売市場法の範囲でできる項目の実施。

16 流通状況の変化に対応した卸売市場の装備の指針提示
流通環境、流通技術の変化発展に伴い、卸売市場に求められる設備の種類、構造も大きく変化してきている。これについてまとめて参考指針とし、よく検討しないで従来の延長線的な時代遅れの設計とならないような指導が求められる。

17 卸売市場活性化のために、営業・業種などの制限の緩和
卸売市場が地域に果たす役割を充実させるために、卸売市場における営業行為の制約を極力少なくすることを基本方針とする。例えば、小売市場、道の駅的施設などの併設、新しい流通の要請に対応した物流センター機能、配送センター機能の卸売市場内設置の容認など。

18 卸売業者の経営安定のための対策強化
卸売業者の経営安定は、卸売市場制度を安定させる根幹である。そのために、個々の卸売会社の経営努力は当然であるが、努力によっても越えられない現実があるときは、その原因を究明し、対策を検討するとともに、国、自治体による対応も検討することとする。

19 差別的取扱い禁止原則などの緩和
前項に関連して、明らかに卸売業者が損失を出すことが明らかな取引については、拒否をすることができるよう、差別的取扱禁止原則、受託拒否禁止原則などの緩和が必要である。

20 出荷者等に対する卸売市場制度順守の要請
出荷者が卸売市場制度を順守するための措置の検討。とくに青果市場において、出荷側による希望価格の設定が目立つ。生産コストを踏まえた希望価格の卸売会社への通知はまったく自由であるが、それに卸売価格が達しなかった場合に、なんらかの調整を出荷者が卸売会社に要請するのは、卸売市場法の規定から好ましくない。このような場合は、買付集荷とすることを指導する。買付集荷とすると出荷奨励金の対象とならないことから、違法行為である「委託買付」になる場合があるので、これを防止するためである。これは卸売会社の健全経営を確保するためにも必要である。買受側から同様の行為があれば、同じ考え方を適用する。
  このような場合には、本来なら卸売業者が処理すべきであるが、集荷に大きな影響が出るなどで「泣き寝入り」している事例があり、経営にも大きな影響があるので、国としても対応を望みたい。

21 商物分離取引の規制緩和
商物分離取引を電子商取引に限定した現行制度では、実行性に乏しくほとんど機能していない。卸売市場の現物搬入主義を基調としながらも、より実施しやすい方式を容認することが、卸売市場の競争力維持のために必要である。特に、ネットオークションに長けた市場外企業が花き流通で大きな存在感を示しつつある今日、花き卸売市場の競争力維持のための対応策を検討する必要がある。

22 出荷ネットワークの充実
出荷情報のネットワーク化による迅速な出荷情報の産地から卸売市場への送信と、それによる迅速確実な取引の推進。青果や花きのベジフルシステム、フローラシステムは、卸売市場の取引終了後の売り立て案内は非常に有効だが、その回線を逆に使った出荷情報の送信は一部にとどまり、有効性が十分ではない。

23 代金決済システムの近代化
代金決済システムの近代化のうち、現行卸売市場法の改正を伴わない項目。現在、青果卸売市場においては、代払い制度による出荷者への迅速かつ安定した支払いが卸売市場の信頼性の大きな部分を占めており、今後も維持することが望ましいが、買い手側の経営不安定による代払い制の不安定化も一部に見られる。電子システムの導入を含む迅速確実な決済システムの検討が望まれる。また、完納奨励金のあり方についても、合理的理由に基づく再検討をする必要がある。

24 代払い制度がない卸売市場におけるリスク回避措置
  代払い制度がないか、十分でない水産卸売市場、花き卸売市場において、長い慣行等で同制度の導入が困難である場合には、卸売会社は買い手側との直接決済となり、回収リスクを伴うので、卸売業者に取引相手に対する与信管理を行う権限を付与する。

25 食肉卸売市場の存続と振興策の充実
卸売市場経由率の低下傾向が見られるが、生鮮品の卸売価格の的確な設定のためにも卸売市場は欠かせない。とくに経由率が低い食肉卸売市場においても、その存続と振興に配慮する。

26 取引行為データの証拠化
 卸売市場における出荷者との出荷・集荷のやりとりが、電話等の口頭で文書による証拠がない場合が多いことで、無用のトラブルがある現状に鑑み、取引行為においては、可能な限り、ファックス、メールなどの文書、データによる証拠を残すことを指導する。

27 トラック輸送事情悪化に対する対応策の検討
トラック事情の悪化などで、出荷トラック確保の困難化、出荷コストの上昇などが卸売市場の集荷に影響を及ぼしている現状の調査と課題の把握、改善を図る。花き鉢物においては、県単位の物流センターの設置など若干の取り組みが見られるが、その分析も含めて部類を拡大して取り組むことが望まれる。

28 卸売市場における食育等の取り組み支援
 卸売市場における食育、花育、商品知識の啓もう、消費拡大、などの取り組みに対する支援。

29 食の安全安心システムの高度化
 安全安心システムの高度化。現在、衛生当局が取り組んでいる市場における検査の結果をネットで公表するなどによる安全安心情報の発信。

30 卸売業者不在の場合の卸売市場存続のための措置
卸を退場させた後、後継が見つからず、その卸売市場に卸売会社がいなくなった場
合、卸売市場や部類そのものの閉鎖につながらない措置の提示。例えば①複数部類があ
る場合は、残った部類の卸売会社が引き受ける、②仲卸組合が卸売行為の代行をするこ
とを公式に認める、③仲卸だけが残り、他市場等からの荷引きによる品揃えで維持して
いる場合も卸売市場として認める、など。

31 卸売市場の用途指定の規制緩和
  特に補助金がついた施設が、状況が変わって他の用途に転用した方が、卸売市場の活性化に資する場合でも、それが用途指定に阻まれて思うようにいかない場合がある。時代に合った用途に転用して、有効活用できるよう、国の指示を望む。

32 卸売市場の敷地利活用の規制緩和
広大な卸売市場の敷地活用の規制緩和による、広い意味での卸売市場の活性化、再生を支援する。物流機能などの流通機能の高度化、観光対応などの集客力増強策、その他、開設者の創意による工夫を後押しする。

33 地域流通推進の支援
運送事情の悪化などで、運賃の上昇とトラックの確保に困難が生じている。地元出荷による輸送コストの削減など、地域流通が核になった流通の支援を推進する。

34 卸売市場を担う人材確保
卸売市場を担う人材の確保育成は、卸売市場機能の維持向上に欠かせない。そのための対策を検討する必要がある。また、早朝からの勤務、少ない休日、休日出勤、などが優秀な人材確保の障害となっていることの解決が必要である。

35 関連事業者の位置づけ見直し
関連事業者の施設で、空き店舗が目立つ卸売市場も多くなっている。来場者の減少に伴い、来客が減ったことが大きな理由であるが、卸売市場衰退の印象につながる。市民消費者や観光客などへの対応の窓口として位置づけ、市場への入場者の規制緩和、業種、取扱品目、営業対象の緩和などの措置を図るとともに、卸売市場内における既得権的な商圏調整の見直し、仲卸等との競争的発展も容認する、近代的なデザインへの模様替え、空き店舗解消による開設者収入の安定などの検討が望まれる。関連事業者という名称も、卸売市場の中核でないという印象を与えるので、より的確な名称の検討を望む。

36 卸売市場の休開市日のあり方の検討
卸売市場の休市日については、生鮮品の流通機構である卸売市場の機能を考えれば、できるだけ休市日は少ない方がいいが、卸売市場業務に従事する人たちの良好な労働条件の確保とが両立をする方策について、検討する必要がある。

37 物流合理化、コスト削減へのコンテナの企業間相互やり繰りシステムの卸売市場への活用
  コンテナを企業間で相互にやり繰りするしくみを、卸売市場にも導入する研究を進め、流通経費の圧縮によるコスト削減について検討する。



【卸売市場法改正を伴うと思われる事項】
第10次方針に対する意見書の中で、現行卸売市場法の改正を必要とすると思われる項目を以下に掲げる。卸売市場が生鮮品流通において先導的役割を維持するためには、卸売市場法の改正を含む抜本的な改革が必要と思われるので、第11次方針ないし、それ以降も展望した、長期的な視野での検討を要望する。

38 卸売市場制度の抜本的な改革の検討
 いまの卸売市場制度は、中央卸売市場法を基幹とした公設卸売市場中心主義の制度が維持、ないし色濃く残存していると考える。しかしながら、中央卸売市場から地方卸売市場への転換の増加、指定管理者制度の導入などによる開設運営体制の多様化、民設卸売市場の存在感増大、などにより、従来の卸売市場制度の考え方では、これからの生鮮品流通に先導的な役割を果たすことが困難ではないかと思料する。そのため、第10次方針公表と同時に、今後の数十年間を視野にした卸売市場制度の抜本的改正の検討に着手することが望まれる。

39 既得権益のリセット
 卸売市場法改正にあたっては、卸売市場改革の妨害となっている既存の権益はいったんすべてリセットし、卸売市場の活気ある維持発展に照らして再構築する。

40 中央卸売市場と地方卸売市場の名称の変更
 中央卸売市場の自主的地方化がひとつの方針となっているなかで、地方化が格下げのイメージがあることが障害となっており、中央卸売市場、地方卸売市場という区別の見直し、差別感のない名称への変更をする。また、そもそも中央と地方を分ける必要があるかどうかの根本にさかのぼった検討を望む。

41 現行法では困難な卸売市場業者の退場・入れ替え制度の導入
 経営規模が過小、使用料未納の卸売業者や仲卸、直荷比率が高い仲卸(所属卸売市場の卸売業者の経営を支えていないという理由)、代金支払いが著しく滞っている買受け業者、集荷能力が十分でなくかつ集荷努力の意欲に欠ける卸売会社、その他、所属卸売市場の機能発揮への寄与が不十分な業者(卸売市場貢献度の概念導入)の指導、業務停止、退場等の処分ができる措置の導入で、現行卸売市場法の範囲でできない項目の実施。

42 仲卸認可条件の変更
卸売市場の機能発揮には、販売力の中心である仲卸の活性化が欠かせない。そのためには、現在、卸売業者だけに設定されている認可基準を仲卸にも設定し、仲卸の営業許可を期限制として、認可更新制とする。また、新規参入を容易にすることによる活性化も図る。仲卸の取引相手は卸売業者であるので、公設卸売市場における仲卸の営業認可に当たっては、当該卸売市場の卸売業者による事前承認、取引契約の締結等を条件とする。複数の卸売業者がある場合には、卸売業者ごとの許可とする。また、公設卸売市場においては卸売業者についても、認可を期限制で更新とする。これは、緊張感の維持のためにも必要である。
  ただし、現行制度で認可している企業について、後から認可を期限制とすることは制度的疑念があるとの指摘もあるので、今の制度のリセットとセットで行うことが必要となる可能性がある。

43 出荷奨励金制度の再検討
現行の出荷奨励金制度については、出荷者や出荷団体の事情と卸売業者の経営安定との両立に配慮しながら再検討する。

44 出荷奨励金の生産者への直接交付
わが国農漁業の高齢化、後継者不足、生産減少などの衰退化に対応するために、生産者に直接支給される出荷奨励金の制度を検討する。

45 代金決済システムの根本的再検討
代金決済システムの近代化のうち、現行卸売市場法の改正を伴なう項目。現在、青果卸売市場においては、代払い制度による出荷者への迅速かつ安定した支払いが卸売市場の信頼性の大きな部分を占めており、今後も維持することが望ましいが、買い手側の経営不安定による代払い制の不安定化も一部に見られる。卸売会社と仲卸の取引契約の締結を義務化するとともに、電子取引システム等の導入も含めて、より迅速確実な決済システムの検討が望まれる。その場合、完納奨励金のあり方についても同時に再検討する必要がある。
  代払い制度がないか、十分でない水産卸売市場、花き卸売市場において、長い慣行で同制度の導入が困難である場合には、卸売会社は仲卸等との直接決済となり、回収リスクを伴うので、与信管理を確実に行うために、開設者が仲卸の認可に当たっては、卸売会社との取引契約を条件とするなどの措置を課すことを検討する。

46 完納奨励金制度の再検討
 完納奨励金については、本来なら完納は当たり前ということであるが、精算組織を利用することにより、卸売会社の経費削減、集金の確実性とリスク回避などの利便がある場合は、それに見合うバックは当然である。この基本に立ち返って、既得権的にならないよう、現行制度を再点検する時期に来ていると思料する。

47 委託手数料の徴収先の再検討
わが国においては卸売業者が収入源とする、委託集荷品における委託販売手数料を出荷者のみから徴収しているが、買い手側からも取ることにより、出荷者の負担を減らすべきだという意見があるので、その是非の検討。

48 電子システムの発達への卸売市場の対応の検討
電子システムの発達で、遠隔セリ・相対取引システムにより、全国どこからでも遠隔地の卸売市場から仕入れることが可能になり、また出荷者も、ネット上場することが可能になっている。電子システムによる取引をどこまで容認するか、またより効率的な手法をどこまで認めるか、など、このような状況に対応した卸売市場制度の規定を検討する必要がある。