ビデオゲームレビュー(3)
スペースハリアー(1986 セガ)
- まだ3Dの技術が全体的に未成熟で、
3Dのゲームなんて見た目はびっくりだけど、
ゲーム的にはちっとも面白くないや画像の動きも遅いしと思われ、
全体的に3Dゲームに不信感が漂っていた1986年に、
突如セガから発表され
話題沸騰となった超高速3Dシューティングゲームがスペースハリアーだ。
- スペースハリアーの特徴はいくつかある。
一つは、アナログスティックを採用したこと、
もう一つは画面全体が左右にスクロールこと、
最後に自機の吐く弾が誘導弾であることだ。
最初のうちはこれらの特徴を把握できず普通の3Dゲームと思ってしまうのだが、
よくゲームをやっていくとこれらの特徴が非常に重要であることがわかるはず。
順に説明しよう。
- アナログスティックは、
通常の場合には自機を動かす速度を細かく調整するために用いられる。
だが、スペースハリアーの場合には違う。
スペースハリアーでは自機の画面上の位置と
アナログスティックの傾きが直接対応している。こうすることにより、
「自機をあの場所に移動させたい」
と思ったときにダイレクトに自機を動かすことができるようになる。
画面上の自機の動きを見ることなしに直接移動先を指定できるこの感覚は
マウスカーソルをマウスで操作するのとリブポイントで操作することくらい違う。
- そして画面全体のスクロールだが、
これは自機の左右位置X座標の中央からの変位に比例して画面が左右にスクロールするということだ。
一般に3Dで画面奥方向(これをZ軸としよう)に進むタイプのゲームでは
自機の位置での画面の広さは画面の奥のほうでは遠近法によって縮小され
20x20ドット位になる。
その 20x20ドットが時間が進むにつれ広がってくるのが
魅力といえば魅力なのだが、実際にゲームを作ってみると
「奥にあるときに画面中央の 20x20 ドット以外の部分に存在するオブジェクトは
ゲームに関係のないたんなる飾りである」
という実にマヌケな状態になってしまう。
スペースハリアー以前の奥スクロール
3Dゲームではステージを溝とか狭い通路のような
設定にしてこの問題を解決したりしていたので、
ダイナミックな映像とは程遠かった。
しかしスペースハリアーでは画面をスクロールさせることでこれを解決している。
自機が左にいるときには左側の20x20(我ながらヘンないいまわしだ)
に、右にいるときには右側の20x20に向かって進むから、
左右に出現した障害物などもゲームに関わってくる。
スペースハリアーはこのデザインによって、
いままで通路だったゲームフィールドを広野に変え、
ダイナミックな表現を可能にしている。
- 最後に誘導弾。
主人公はあまりにもたくさん弾を発射することができるし、
照準も画面に表示されていないので気づかないヒトも多いのだが、
実は発射しているのは誘導弾である。
敵の真前近くに
自機を移動させるとロック音(実はこの音も小さくてわかりづらい)
がして、その直後に弾を撃つと敵に確実に当たる。
これにより遠くの敵にも弾がよく当たるとともに、
遠くの敵の動きを広げることができるようになる。
(弾が前にしか飛ばなかったら、なかなか前にしか敵を配置できないからね)
-
この3つのフィーチャーをチェックすればわかる通り、
スペースハリアーは単にいままでトロくてヘボかったのが高速で動かせるような
ハードウェアを使っただけでなく、
以上に述べたように画面全体を使って爽快感を増すためのさまざまな工夫が凝らされているゲームなのである。
敵が出現する音/敵弾が発射される音がしっかり鳴るのも
画面が見づらくなりがちな3Dシューティングでは重要だ。
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スペースハリアーの最もすごいところは、
敵弾をよけるためにくるくる回って連射しているだけで
楽しいというコトだ。
つまりゲーム性を高めるためだとかなんとかいって、
敵の種類とか、手強いボスとか、いろんな攻略が必要な面構成とかといったものが
まったく必要のないゲームにデザインされているところであり、
これは非常に注目に値すると個人的に思う。
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スペースハリアーは
今現在マトモな筐体がまだゲーセンにあるとは思えないので
本物を遊ぶことはほとんど不可能に近いだろう。
そしてPCエンジンとかX68000とかファミコンとか32Xとかの
スペースハリアーでは地面の動きやフレームレートが本物と違って全然ダメだし、
唯一セガサターン版が許せるレベルであるが、
セガサターンのアナログスティックはかなりヘボく操作性に難があり
本物ほど爽快感を得られないのは残念だと思う。