第1回「開業認定医のためのフォーラム」(仮称)事後抄録                        −Newsletterに代えて−  昨年の札幌におけるシンポジウム「歯科麻酔学会認定医の現状と将来」は、こ とに全国に分布している開業認定医たちにとって、歯科麻酔科医としての自己を 改めて問い直す絶好の機会となりました。しかし、残念なことに、このシンポジ ウムでは、開業認定医が抱えるさまざまな問題についての議論が、十分尽くされ なかった感がありました。  中でも、現在開業している認定医の共通の悩みの一つとして、開業認定医同士 の連携、意見交換の場がない ということが幾人もの先生から指摘されました。 この問題は、シンポジウムの中で今里先生も強調なさっておられたことですが、 今里先生や私がこの発表に際して行った、全国の開業認定医に対するアンケート の結果を見ても、開業認定医が各々の地でいかに多くの問題を抱え、またそれを お互いに討議する場を求めているか、を痛感するところであります。  そこで、本年の歯科麻酔学会では、このような開業認定医の討論・意見交換の 場を、継続して設けられないか、という趣旨の下に、約10名の開業認定医が参加 して、標記フォーラムの記念すべき旗揚げが行われました。 この種の会は、本来ならば、全国の開業認定医に呼び掛けて行うべきものかとも 思われますが、準備期間があまりなかったことと、フォーラムの方向付けを明確 にする目的で、本年は小規模の開催となりました。  学会第1日目の総会終了後、広島全日空ホテルで盛大に...と言いたいのです が、全日空ホテル隣の飲み屋で、ジョッキ片手に華々しく開催された、この フォーラムに参加したのは、下記の10名です。  山本彰美 (和歌山県那賀郡開業)  古屋 浩 (千葉県八千代市開業)  小倉賢嗣 (徳島市開業)  松本晉一 (熊本県人吉市開業)  氷室秀高 (福岡市開業)  佐藤邦彦 (福岡県久留米市開業)  篠塚 襄 (千葉県佐原市開業)  梅村 智 (神戸市開業)  足立弘康 (兵庫県氷上郡開業)  望月 亮 (静岡県清水市開業)  この10人が、特別講演もそっちのけで、延々3時間にわたって議論討論した内容の一端は、下記の通りです。 各人の歯科麻酔科医としての活動内容は、当然のことながらさまざまで、月に全 麻8件、吸入鎮静法150件をこなす猛者(氷室)から、組織の中で指導的立場にな り、公的期間で特殊歯科診療が出来るようになるまでは、一切自院で鎮静法はや らない、と豪語するインテリ派(梅村)まで、バラエティに富んでいました。数 年間の地道な努力を実績として、行政や歯科医師会から地域での在宅診療事業を 一任されている、素晴らしい実例(古屋)を聞く一方で、吸入鎮静法の笑気濃度 を40%で請求したら、8月から返戻をくらった(佐藤)という事例に憤ったり、 吸入鎮静法の導入に躊躇する先生(小倉)を、笑気推進派(山本、佐藤、氷室) が洗脳して、ついには「本日は徳島に笑気の灯がともった」と言わしめたり、並 列診療の是非(篠塚)と、鎮静法と並列診療の並立、さらにはアシスタントの教 育(古屋)や歯科衛生士としての資格をどのように尊重するか(梅村)、歯科麻 酔科医としてのポスト獲得の努力(足立、望月)など、時間の経つのも忘れるほ どの盛り上がりで、私などは危うく自分の演題発表に遅れるところでした。  これら談論風発の末、皆が一致したのは 1)このような開業認定医の意見交換の場を、毎年の学会で定着させたい。 2)開業認定医の意見を通じて、歯科麻酔学会により社会的な視点を持っていただきたい。  ということでした。1)については、早速次期歯科麻酔学会会長である、染矢源 治 新潟大学教授に、学会内でのフォーラム、あるいはランチョンセミナーの開 催をお願いしたところ、好意的なお返事をいただきました。この点については、 今後参加者を中心とした開業認定医の意見を求めながら、染矢先生と実施に向け て検討していくことになるでしょう。 また、2)については、私たち開業認定医にも、歯科麻酔科医としてのactivityの 保持、地域における歯科麻酔科医としての医療活動など、努力すべき点は多数あ りますが、例えば特殊歯科診療、学会認定医、などについて、学会の明確な見解 の表明や積極的な広報活動が不足しており、その結果として第一線の歯科麻酔科 医が、その地域医療活動、行政や歯科医師会との関係に支障を来たしている事実 は否めません。私たち開業認定医が、ともすれば大学の手術室と外来を往復する だけの、閉鎖的で社会に目を向けない存在になりがちな、大学歯科麻酔科医の 方々の目を開く「窓」となれるように、また、このフォーラムが発展して、歯科 麻酔学とは何か、歯科麻酔科医は何のためにあり、何をしなければならないの か、を、歯科麻酔学会・歯科麻酔科医自身が、もう一度問い直すきっかけとなれ ばと念じて、今回のnewsletterと致します。