第4回歯科麻酔を考える臨床医フォーラム 第1部 担当幹事:西村先生の挨拶 司会:川田先生 ・ 演者、深井先生の紹介:歯科麻酔との連携のもとでインプラント治療を積極的に行な  っている 深井先生 ・ インプラント治療:約18年 ・ インプラント手術施行患者の約8割に静脈内鎮静法併用 ・ 静脈内鎮静法は専門医に委託 ・ スライドによる診療室の説明 ・ 受け付け、待合室に余裕の有るスペース   →怖い,痛いのイメージを一掃したい ・ 無痛、怖くない,リラックスを目指す ・ インプラント手術も快適に施行したい ・ 当院のコンセプト:基本的に義歯は入れない→インプラントで対応している ・ 怖い、痛いのインプラント手術では困る ・ モニター:ECG、BP、パルスオキシメーター ・ 専門医によるルート確保 血液検査も施行 ・ CT(デンタルCT)による顎堤の診査:Sinus liftの可能性、大きい範囲のGBR   が必要な場合など、正確な診断が必要 ・ ガウンテクニック、覆布:口の周囲のみ露出 ・ 症例の提示:手術範囲・剥離範囲も広い、Sinus liftや骨移植も必要、創   部は数カ所に及ぶこと有り、手術時間1〜2時間 ・ 術後は、待合室でゆったりとしてもらう:十分覚醒してから帰宅してもらう ・ 鎮静法とインプラント手術がセットになっている ・ 鎮静法を併用することで患者も術者も楽→術者が手術に集中できる ・ 麻酔医による全身管理→安全、患者さんにとっては快適、術者にとってもやり易い ・ チーム医療である 司会 川田先生 ・ 小谷先生の紹介 インプラント治療における管理を数多くご経験されておられる先生 小谷先生:大阪歯科 ・ 国内のインプラントロジストはほとんどが開業医→臨床医主体でインプラントは成されて来た ・ インプラントを導入したのは臨床医 ・ 一方、歯科麻酔医は一般には大学の手術室のみで臨床トレーニングを受けている。 ・ 一般臨床医と歯科麻酔医の立場の違い:距離が遠い→縮める必要がある   →今日のテーマでもある ・ インプラント手術には安全・快適性が求められている→歯科麻酔医の役割は大きい ・ インプラントの臨床→いろいろなシステムがあり、それぞれのシステムに応じた個々の対応に対す る   議論はあまり成されていない ・ 開業医のインプラント手術システム 1.クリーンルームで清潔不潔のゾーニングがほぼ理想的な手術環境 2.ガウンテクニック+デンタルチェア 3.一般のデンタルチェアで覆布のみ使用、厳密な清潔域のゾーン分けをしていない ・ 実際に鎮静を行なってみると、歯科麻酔いにとって顔の表情が見えない・   呼吸状態の観察できない状態の方が管理しにくい ・ 歯科治療の延長の方がやり易い、清潔域の厳密な環境は鎮静がやりにくい ・ 手術環境を整えるほど、術中の管理のリスクは高くなる→専門医による全身管理が必要 に   なってくる ・ 1995年以降の症例 ・症例:ブローネマルク 手術時間、平均73分、規格化された手術 →約90分間開口状態を維持し、口の動きを止める必要がある うがい、体位変換の制限:患者にとってはかなりのストレス 局麻薬:カートリッジ平均約7本使用、最大17.5本 ・ 手術操作による報告されている合併症(1990年以降) ・ 圧搾空気による空気塞栓:下顎骨内の静脈洞や板間静脈から   →現在は電動ドリルのため危険性無い ・ 術者・全身管理者には骨の外科手術の認識必要 ・ 歯科麻酔医:上気道管理の困難性→鎮静のレベルをどうするか? ・ 鎮静時の口腔内に水を溜めておく能力・上気道反射についての研究が為されていない ・ 深すぎる鎮静は気道反射が落ちて誤嚥の可能性あり ・ しかし、就眠状態でも全例誤嚥するわけではない ・静脈内鎮静法に患者さんが求めるものと術者が求めるもの、歯科麻酔医との認識が   異なる可能性 ・ 「Conscious Sedation」→術者も患者も寝ている間に手術可能との認識あり ・ インプラント手術の鎮静法は、どのレベルの鎮静が患者にも術者にも最適か?→鎮静の質の   再検討が必要 ・ 患者さんの評価でも静脈内鎮静法施行例の方が良好→Amenityの向上に寄与 ・ どのような薬物、方法がインプラント手術に適しているかの検討が必要 ・ 歯科麻酔医にとってのマーケットとしては?   →Sedationのアルバイトだけではいけない   →インプラント手術時の鎮静法を研究すべきである。歯科麻酔医が努力しなければならな い ・ インプラント手術時の管理法、鎮静法の特殊性、有病者の鎮静との違い、鎮静の質の問 題、 上気道反射について等を研究しなければならない ・ インプラントロジストの集会に歯科麻酔医も参加し提供できるものを発表するべき ・ インプラント手術時の鎮静法の問題点 1. 侵襲が大きい 2. 長時間かかる 3. 使用する局所麻酔薬、エピネフリンが多い 4. インプラント手術の鎮静法の特殊性 5. 術前の全身的リスク評価が不充分となりやすい 司会 川田先生 ・ フロアから質問を… 北海道帯広市 北川先生 ・ インプラント手術時の鎮静法と有病者の鎮静法の違いは? ・ インプラント手術時に適当な薬剤、使用法について? 小谷先生 ・ (個人的意見だが)最近はプロポフォールも使用されてきている ・ ミダゾラムで2時間単位の手術の鎮静は困難 ・ 覆布の下で急に覚醒して暴れることが有る、使いにくい ・ →ミダゾラム投与後にジアゼパムも使用している 北海道医療大学 工藤先生 ・ 患者には危険性も含めてどのように説明しているか 深井先生 ・ 大きい手術のため麻酔医と共同で行なうと説明 ・ 複数の医師のもとで行なうことで患者も安心 ・ 術者が説明し、全身麻酔とは違い意識が有ることを説明 北海道医療大学 工藤先生 ・ 患者から眠くならない、寝ていないとのとの訴え有り ・ 患者さんは全身麻酔と同様に考えていることが有る 小谷先生 ・ 術者に手術時の全身管理であることを説明してもらう ・ 患者によっては全麻と同様に考えている ・ 採血時に手術管理の説明を行なっている ・ 寝ている間にやってくれという患者さんのリクエストも結構ある ・ 場合によっては「Conscious」でないことも有る 北海道医療大学 工藤先生 ・ 局所麻酔は術者が行なうのか?、歯科麻酔医が行なうのか? 小谷先生 ・ 局麻は基本的には術者が行なうべき ・ 多量の局麻薬→歯科麻酔医が適量の指示を行なう ・ エピネフリン:16万倍にして使用する等の工夫 東北大 佐藤先生 ・ インプラント手術時の鎮静法や採血検査のコストは? ・ Sinus lift等の手術費は? 深井先生 ・ インプラント手術のため全て私費 ・ 鎮静法:5万円 福岡歯科 富永先生 ・ 鎮静法施行後、帰宅させられなかった症例は? ・ 鎮静法では困難で,全身麻酔の方が良かった症例は? ・ 局麻のみでコントロール不能な症例は? 小谷先生 ・ 鎮静法では困難な症例ある:3時間以上要する症例 ・ 入院となった症例は無い ・ どの程度まで外来で施行できるのかのガイドラインは我々歯科麻酔医が作るべき ・ 局麻のみで疼痛管理が困難な症例は無かった 日本歯科 砂田先生 ・ 術者の側から歯科麻酔医に対する注文は? 深井先生 ・ 歯科麻酔医によって鎮静の深さが違う ・ 術者側からすると、おとなしく寝ていてもらう方がやりやすい ・ 患者さんが手術をほとんど憶えていないけれども、術中口を開けていられ るというのが理想 司会 ・ インプラント手術時の最適な鎮静法は? 小谷先生 ・ 大きなテーマである ・ 大量の水を使うため、上気道の生理的状況を保つ必要がある ・ 手術:意識レベル低い方がいい? ・ 最近は、浅めのsedationとしている→安全性 ・ 患者さんを寝かせてしまうのが一番いいのかどうか? ・ 麻酔の深度と咽頭・上気道の反射との関係は? ・ 防御反射は比較的麻酔深度が深いレベルまで保たれている ・ 上気道開大の反射は早期になくなる ・ タービン等の水を口の中に貯める能力と意識レベルの関係の研究がない→我々の 責任のもと進めていくべきである 司会:川田先生 ・ 多くの考えるべき問題がありディスカッションで結論を出すことは困難 ・ 最後に、住友先生にまとめていただく 日本歯科 住友先生 ・ 小谷先生が言われたように、インプラント手術の麻酔管理は特殊である ・ 快適な鎮静法:患者にとっても術者とっても良い鎮静状態 ・ 患者さんにとって良い鎮静状態:怖くなく、痛くなくインプラント手術が受けられる ・ 術前の患者さんへの説明が大切:あまり大げさな説明をすると手術を敬遠される ・ 説明の仕方もディスカッションする必要がある ・ 外来において、痛くなくするための鎮痛薬の使い方:ケタミン等の使い方の検討が必要 ・ メインは局所麻酔:局所麻酔も歯科麻酔の領域である:インプラント手術は骨の外科でも   あるが、骨の麻酔でもある ・ 水をたくさん使うことで、局所麻酔薬も洗い流されてしまう→正円孔、卵円孔の   麻酔等も考えなければならないかもしれない ・ 浸潤麻酔だけでは、骨の麻酔は成り立たない→局所麻酔も歯科麻酔の仕事 ・ Sinus lift時など、洞内へ長時間の局所麻酔を効かせる事の研究も必要 ・ 術者に対する良い鎮静法:エピネフリンによる出血のコントロール、降圧剤の使い方 ・ 術中に鎮静状態を一時浅くする:フルマゼニールの使い方 ・ インプラント手術は自費診療であるため、いろいろな薬剤を使用可能:術後の感染予防、   腫脹にもいろいろな対応が可能→術者&歯科麻酔医の仕事 ・ 手術・麻酔のインフォームドコンセントも大切であるが、術後の神経麻痺等に対するfollowも大 切 ・ 神経麻痺の再生に関する研究等も必要 ・ インプラント手術の麻酔管理を行なうためには、インプラント手術の術式を憶えることが大切 ・ インプラントの勉強をしない人にはインプラント手術の麻酔管理はできない ・ 現場、現状は現在も進んでいる状態ですから、事故の無いようにお願いしたい 以上