梅村智 先生(神戸市御影区開業)

麻酔科に入局した多くの医局員たちが、一度は呟く言葉が『それからの歯科麻酔』であります。大学を離れ、外の病院で麻酔の研修を終えて、また大学の医局にたむろしている医局員が、折に触れて呟く言葉なのです。

麻酔科に入局した多くの医局員たちは、何の目標を持って麻酔を研修しているのでしょうか?大学で、病院歯科で、歯科麻酔本来の仕事である全身麻酔、鎮静法、ペインクリニック、有病者管理を行っていることを考えているのでしょうか。しかし歯科麻酔科医の多くは自分の医院を設けて、開業歯科医として仕事をしています。その医院で、どのように『歯科麻酔』を実践していこうと考えているのでしょうか?セールスポイントとして?それとも純粋に患者管理に必要なため、でありましょうか?

私自身も、大学病院時代10年、開業して5年で歯科麻酔に対する取り組みが変わって来ました。

私の住んでいる地域の2次医療機関には、私と同じ歯科麻酔科医が数多くおり、全身麻酔や鎮静法の危険性、経済効率を考えるとき、私は自院ではこれらを実践していません、その代わり、これら2次医療機関への紹介を行っています。

歯科医療界も在宅歯科診療、障害者医療とクローズアップされ、重症患者の歯科治療を行う機会が多くなってきています。このような状況の中で、私たち歯科麻酔を研修した者への期待は大きく、私は歯科麻酔(学教室)と地域歯科医師会とのパイプ役としての役割を実践していこう、と考えております。

歯科医師会の求められている内容は、心身障害者の歯科治療にしてみても、在宅往診歯科治療にしてみても、すぐに実践できる内容が多くあります。これらの医療の現状は、マニュアルの作成段階であったり、見直しの時期であったり、私たちとしても、そんなに無理をせずに力を発揮できる場ではないかと思います。

本日のフォーラムでは、現在の私の行っている『歯科麻酔』への取り組みについて述べてみます。

 

氷室秀高先生(北九州市小倉北区開業)

 開業認定医にとって、歯科麻酔認定医である実利的な意味は、現在のところ全くないと思われます。

 しかし、歯科治療時に歯科麻酔学的管理を必要とする症例が増加してきていることは実感しています。

 そこで、今回は、歯科開業医が歯科麻酔学的な手法を用いることに対する問題点を、私のクリニックの現況より報告させていただきたいと思っています。