歯科麻酔的医療行為の医療経済(1)
開業歯科麻酔科医における笑気吸入鎮静法の活用状況について

1)【目的】笑気吸入鎮静法(以下IS)は昭和48年から健康保険に導入され、臨床上その有益性は高く評価されているが、普及率はきわめて低い。
そこで全国の歯科麻酔に関わっている開業医におけるISの使用状況を調査し、医療経済的観点から考察を加えてみた。対象者の選択については地域の偏りがないよう配慮した。

【方法】全国の開業歯科麻酔科医に対し、ISの使用状況等について電子メールを用いてアンケート形式で調査した。50通のうち31通(62%)の回答を得た。

2)この15項目についてアンケートを実施した。

3)【結果】〜笑気吸入鎮静法に用いる吸入器については持続型、間歇型、いずれか不明、全身麻酔器、両方所有の合計が88%と高い所有率を示した。
保険点数に関しては低いと答えた方が49%、適正が29%で高いという意見は0であった。

4)過去1年間にISを実施している医院は86%で残りの14%の医院で実施しない理由はグラフの通りである。

5)ISの患者への説明はグラフの通りで、また、ISに対する患者の評価は比較的良いが59%、ケースバイケースが16%で比較的悪いが3%であった。

6)IS実施の理由については半数がドクターの選択であり、患者の希望36%を上回っていた。モニターの使用状況は症例に応じてが50%で、必ず使用が19%であり、使用しないが23%あった。またグラフにはないがモニターの種類としては血圧、脈拍、心電図、動脈血酸素飽和度がほぼ同じ割合であた。

7)ISについての医療経済に関わる意見をまとめてみると青文字の内容が長所的、茶文字の内容が短所的なもである。また、最下段の加算点数に関するものはおそらく他府県では認められていない特殊な意見である。

8)次にISにおける保険請求上の問題点についてまとめた。?アンケート結果ではISの保険点数が高いと回答した者はいなかった。 ?保険請求点数についてはIS自体の点数プラス笑気の従量点数と酸素の補正計算による点数の合計であり、酸素の価格については、平成14年4月の保険点数の改定で酸素の請求価格の上限が設けられたことで実際の購入価格より低い価格で請求しなければならない場合もあり、いわゆる逆ざや現象もありうると思われる。?返戻、査定に関するアンケート結果では回答があったものが4例で返戻2,査定1,どちらか不明1であった。
9)【考察】ISが今ひとつ歯科界全体に広まらない理由は複雑な保険請求方法や導入時の煩雑さ、保険点数が低いという印象や一般開業医の誤った認識にあると考えられる。保険請求については業者作成等によるIS保険点数早見表、レセプト用コンピューターの導入によって点数計算はスタッフでも可能である。チェアータイムの延長についてはISが比較的安全な鎮静法であるということを考慮すればアドバンスモニターによる監視やアシスタントを教育して管理を補助してもらうことで合理化を図ることは可能である。 また単に保険点数だけを考えれば実態に合わないような印象があるが、アンケート結果からもISの患者の評判は比較的良く 、医師と患者の信頼関係の確立が得やすくまた他院との差別化という意味でも経済的効果は大きいと考えられ、開業歯科麻酔科医と一般開業医との格差を考えると、患者サービスという意味でもこれからのものであると考えられ、我々開業歯科麻酔科医はその先駆けあるいは指導的立場であるといえる。安全性という面だけを考えれば、静脈内鎮静法に比べればかなり有利でその意味でも一般開業医に普及する可?
 !&(B
 能性は高い。ただし正しい知識と施行方法を修得してもらわないと誤った方法での乱用により、かえって社会的信頼を損うことになり、その結果保険点数の不利があってはならない。それらのことに十分配慮をして一般開業医に普及すれば、患者ISを認知してもらうことで逆に社会的評価を高めさせ、それが点数の再評価に繋り本来のISの採算ベース獲得という流れになっていくのではなかろうか。そんな中で一つの方向性としてアンケートの意見にあった「加算点数について〜ある県では笑気吸入鎮静法下の処置には障害者加算 (+175,+50/100)が認められることがある。」というような拡大解釈が通っていけばISが普及する一つのステップとなりうる。この県では開業歯科麻酔科医が中核になってガイドラインを製作しその結果認められたものである。県により難しい問題はあるだろうが、今後もこの方向性について全国の開業歯科麻酔科医が研究、努力を重ねていきISの市民権獲得に有利に展開することを期待したい。

【結語】ポスターの通りです。 最後に今回のテーマからははずれるがISの問題点として大気汚染、オゾン層の破壊、笑気被爆という意見が多かったことを付け加える。